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大学・研究所にある論文を検索できる 「<論説>弁護士の職務上の秘匿特権と通信秘密をめぐる比較法的考察」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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<論説>弁護士の職務上の秘匿特権と通信秘密をめぐる比較法的考察

田村, 陽子 筑波大学

2020.01.31

概要

弁護士は、職務上、依頼者の代理人として様々な法律活動を行う。依頼者に代わって、依頼者本人が行為するよりも、法律上間違いのない、より良い結果を出せるよう業務を遂行するのが法の専門家たる弁護士の責務であるところ、依頼者本人以上に本人の状態や本人をとりまく状況や事件の内容につき、客観的かつ正確に理解していることは重要なことである。そのためには、依頼者本人から、本人にとって都合の良いことのみならず悪いことも含めて、弁護士が業務の遂行もしくは対処あるいは判断に必要なことは、基本的にはすべて聞いて知っておく必要があろう。

弁護士の第一の責務としての依頼者のあるべき権利義務の実現のため、依頼者から信頼を得、率直かつ十分に話を聞けるよう、弁護士に依頼者の秘密保持の義務の一環として、職務上の秘匿特権が認められている(弁護士法23条)。弁護士は依頼者に関する情報を他には漏らさないという守秘義務を依頼者に対して一般的に負い、それを裁判上の手続においては、職務上の秘匿特権として行使する制度になっている(民事訴訟法197条1項2号、同220条4号ハ・ニ、刑事訴訟法149条)。弁護士が依頼者の信頼を得ること、これを裁判手続上で具体的な制度にしたものが、日本では、弁護士の職務上の秘匿特権である。

他方で、弁護士には、依頼者の基本的人権の保護のみならず、社会正義の実現(弁護士法1条1項)のため、社会秩序の維持および法律制度の改善に努力しなければならないという公益的義務(同条2項)もあるところ、依頼者に関して、法的に問題がある内容を知ったときに、どのような態度をとるべきか。裁判での真実発見および当事者側としての訴訟上の信義誠実遂行義務(民事訴訟法2条)およびそこから派生して生ずるとされる一般的な真実義務との兼ね合いは、法律上および倫理上、判断が難しいところであろう。

今日の法律業務や訴訟が国境を越える時代においては、他国での状況をも検討し、将来の潜在的な訴訟に備えておくことは重要である。とはいえ、通常の裁判制度の差異以上に、弁護士制度の意義・役割・内容といったものは、歴史的沿革や文化的背景によるところも大きいため、各国の制度理解は慎重にする必要があろう。

大陸法と英米法という異なる法体系における弁護士制度の差異については、裁判制度との相乗効果を含め、まだまだその制度のあり方については、比較検討が遅れている分野であるように思われる。弁護士の秘密保持の権利に関する分野もまたしかりである。大陸法系でいう「弁護士の守秘義務(duty of confidence)」もしくは「職務上の秘匿特権(証言拒絶権およびそれに基づく文書提出義務の除外書面)」は、英米法で言う「弁護士依頼者間(通信)秘匿特権(attorney‒client privilege)」もしくは「ワーク・プロダクト(work product)」とは、同じ概念なのか、あるいは異なる概念なのか、はたまた重なり合うところはあるが意義や範囲は異なるのか、については、実は厳密に検討されずに、同種のものとして民事訴訟法上は議論されてきた経緯がある。

今般、日本の独占禁止法の分野の議論では、日本の民事訴訟上の弁護士の職務上の秘匿特権とは異なるものとして、アメリカ法型の弁護士依頼者間の通信の秘匿特権1)というものが扱われ、日本法にはなかった概念2)としてこれが課徴金納付命令手続において認められるかが議論されたようである3)。

本稿は、弁護士の秘密保持の権利という形での比較法的考察は詳細になされてこなかった、弁護士の秘密保持の権利もしくは秘匿特権につき、英米法の代表としてアメリカ法を、大陸法の国としてドイツ法および日本法を対象に裁判制度との関係という大きなところから概括的に比較検討することで、基本的違いを理解し、日本の制度での状況について考察を試みるものである。

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