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大学・研究所にある論文を検索できる 「乾癬におけるGPNMBの発現、役割の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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乾癬におけるGPNMBの発現、役割の検討

赤塚, 太朗 東京大学 DOI:10.15083/0002002462

2021.10.15

概要

乾癬は表皮のターンオーバーが異常亢進することによって表皮角化細胞の過度な増殖を起こすことに特徴づけられる、頭部,肘部,膝部,腰部を中心とした厚い白色の鱗屑を伴う紅色局面を呈する慢性炎症性皮膚疾患である。乾癬は、症状の違いによって皮膚症状を主体とした尋常性乾癬、関節炎を伴う関節症性乾癬、紅皮症を呈する乾癬性紅皮症、発熱などの全身症状を伴う膿疱性乾癬といった病型に分けられており、必要とする治療の強度は病型や症状によって異なっている。

前述のように、当初乾癬は表皮細胞の異常に起因する疾患と考えられていた。しかしながら、T 細胞性免疫を抑制するシクロスポリンが乾癬に対して効果があったという報告か ら、乾癬がT 細胞性免疫疾患であることが明らかになった。T 細胞性免疫疾患において病態に関与するヘルパー T 細胞は大きく Th1、Th2、Th17 の 3 種類に分類されているが、乾癬病変部においてTh1 サイトカインである IFN-γや Th17 サイトカインである IL- 17 や IL-22 の発現が多く、Th2 サイトカインである IL-4 が少ないことが報告されるようになり、現在では、乾癬は Th1、Th17 細胞が樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞からサイトカイン刺激を受け、逆にサイトカインを分泌することで好中球の遊走やさらなる炎症性サイトカインの産生、表皮肥厚といった、様々な病態を作り出していると考えられる。

乾癬の病因は未だに解明されていないところもあるが、遺伝的素因と環境因子のどちらも関与する多因子疾患と考えられており、肥満やメタボリック症候群の合併が多いことがよく知られている。実際に、重症例では心血管疾患や虚血性脳血管障害のリスクも高いと推定されており、疫学調査では乾癬患者の寿命は非乾癬患者と比べて低かったという報告もされている。このように乾癬は全身性の疾患であり、しかも一生涯にわたって続き、根治的治療がないため、患者の QOL に大きく影響する疾患である。

治療は従来から使われてきたステロイドやビタミン D3 の外用薬、紫外線治療、レチノイド内服、シクロスポリン内服に加えて、近年では抗 TNF-α抗体、抗 IL-12/23p40 抗体、抗 IL-17 抗体、抗IL-17 受容体抗体などの生物学的製剤や経口PDE4 阻害剤が開発され、皮膚症状の程度や関節症状などの合併症の有無により使い分けられる。特に生物学的製剤は乾癬に対して非常に有効であるが、薬剤費が非常に高価であることや感染症などの副作用が問題になることもあり、現在も病態解明、新規治療が必要とされている。乾癬の病態を理解し、新たな治療戦略を見つけるためには、動物モデルが重要である。Toll-like receptor 7 と 8 のリガンドであるイミキモドを局所外用することで、ヒトの乾癬の皮疹によく似た皮膚炎を誘導することができることが知られており、乾癬様皮膚炎モデルとし て、広く使用されている。

今回我々が注目したGlycoprotein nonmetastatic melanoma protein b (GPNMB)は 1回膜貫通型糖タンパクであり、別名 osteoactivin としても知られている。GPNMB は骨芽細胞、樹状細胞、メラニン細胞、表皮角化細胞など様々な細胞に発現し、組織修復、細胞増殖、細胞分化に関与することが知られているほか、抗炎症作用があるとされている。 乾癬患者血清中及び皮膚組織において、GPNMB の発現が健常皮膚と比べて減少してい た。一方でアトピー性皮膚炎患者では健常皮膚と差は見られなかった。免疫染色で GPNMB はメラノサイトと表皮角化細胞に発現していたが、乾癬患者の病変部皮膚の表皮角化細胞では健常者に比べて発現が低下していた。また、生物学的製剤の治療後において乾癬患者の血清中のGPNMB の発現量は治療前と比較して、上昇していた。In vitro においてヒト表皮角化細胞株を乾癬で優位に上昇しているTh17、Th1 サイトカインである IL17-A、IFN-γで刺激すると GPNMB の発現が低下した。一方で、アトピー性皮膚炎で優位に上昇しているTh2 サイトカイン、Th22 サイトカインである IL-4 や IL-22 で刺激しても、GPNMB の発現量に変化は見られなかった。以上の結果から、乾癬の Th1、Th17優位の皮膚環境により、表皮角化細胞からの GPNMB の産生が低下していると考えられ た。

前述のようにGPNMB には、抗炎症作用があるため、GPNMB の低下が乾癬の増悪に関与している可能性を考え、乾癬のマウスモデルであるイミキモド誘発乾癬様皮膚炎における GPNMB の役割を検討した。イミキモド誘発乾癬様皮膚炎において、GPNMB タンパクを皮下注射する群とコントロールであるPBS のみを注射する群を比較したところ、 GPNMB 群では、症状が減弱すると共に TNF-α、IL-6、IL-12/IL-23p40 などの主にマクロファージから産生される炎症性サイトカインの発現が低下し、組織学的に真皮に浸潤する好中球、リンパ球の数が低下したものの、マクロファージの数には有意な変化はなかった。続いて、GPNMB がマクロファージのサイトカイン産生能に与える直接的な影響を検討したところ、GPNMB はマクロファージからの炎症性サイトカインの発現を抑制することが分かった。以上の結果から、乾癬では、GPNMB の発現が低下することで、マクロファージからの炎症性サイトカインの産生にブレーキがかからず、症状が増悪している可能性が示唆された。

本研究の結果より、GPNMB は乾癬における過剰な免疫応答を抑制するのに重要であり、新たな治療の選択肢となる可能性が考えられた。

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