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書き出し

Study of Phase Retrieval Method for Estimating Antenna Radiation Pattern in Terahertz Band

石田, 智大 筑波大学

2023.09.13

概要

理工情報生命学術院数理物質科学研究群

博士論文の要約

学位プログラム名

物理学学位プログラム

学籍番号

202030035

学生氏名

石田

学位名
指導教員

智大

博士(理学)
久野

成夫

Study of Phase Retrieval Method for Estimating Antenna Radiation Pattern
in Terahertz Band
(テラヘルツ帯におけるアンテナ放射パターン推定に向けた Phase Retrieval 法の研究)
本論文では、火星地表面からの水蒸気及び酸素の 480 GHz 帯におけるテラヘルツ観測を目的として
開発されたテラヘルツアンテナのアンテナ放射パターン(遠方界パターン)を Phase Retrieval 法を用い
て推定するにあたり、シミュレーションと実測の観点からテラヘルツ帯における Phase Retrieval 法の
有用性についての研究成果を報告する。本研究のテラヘルツアンテナはロケットによる打ち上げを想
定しているため、サイズおよび重量はそれぞれ一辺 400 mm の立方体に収まる大きさかつ 10 kg 以下
という制限がある。そのためほとんどの構造は軽くて丈夫な炭素繊維複合材(CFRP)を用いて製造され
た。一般的な衛星開発では段階的にモデル製作が行われる。本テラヘルツアンテナでは BBM(試作モ
デル)・STM(熱構造解析モデル)・PFM(プロトタイプモデル)の順に開発が行われた。アンテナの重要
な評価項目として、アンテナの感度分布を表すアンテナ放射パターン(遠方界パターン)の測定がある。
遠方界パターンはアンテナ開口から遠方界距離( = 2

⁄ 、D:アンテナ開口径、λ:波⻑)の数倍の

距離で測定する必要がある。しかし、テラヘルツ帯においては遠方界距離がとても⻑くなり、大気減
衰も激しいため直接測定することが困難となる。そこでアンテナの近傍界における強度と位相の測定
からフーリエ変換により遠方界パターンを推定する手法が用いられるが、ここでもテラヘルツ帯にお
いて位相測定はわずかなケーブルの歪みや温度変化により精度の良い測定が困難となる。そこで用い
られるようになったのがアンテナ開口から異なる距離での 2 面の近傍界強度を用いて位相を回復する
Phase Retrieval 法である。しかし、テラヘルツ帯のアンテナにおいて Phase Retrieval 法の研究は十分
になされていない。そこで本研究では PFM のアンテナ光学系の設計および Phase Retrieval 法を用い
たアンテナ放射パターン(遠方界パターン)についてシミュレーションと実測の観点からテラヘルツ帯に
おける Phase Retrieval 法の有用性の検討を行った。
本テラヘルツアンテナのアンテナ光学系は、サイズや重量の条件からホーンと副鏡の間に平面鏡と
収束鏡を一枚ずつ含んだオフセットカセグレンアンテナとした。観測周波数帯域内でアンテナ放射パ
ターンが変化しないように、周波数に依存しない光学系の設計を行った。設計の際は任意の位置での
ビーム半径及び曲率半径の計算が容易であるガウスビームを用い、収束鏡をレンズに置き換え、ホー

ン開口および副鏡におけるビーム半径が周波数に寄らず一定となるように光学系のパラメータを決定
した。決定したパラメータをもとに物理光学を用いたアンテナ電磁界解析ソフトである GRASP を用
いてモデルの製作を行い遠方界パターンの計算を行った。その結果観測周波数帯域内で周波数特性の
良いアンテナ光学系の設計が行えていることを確認した。また、本アンテナのホーンには指向性や偏
波対称性の良いコルゲートホーンを用いており、コルゲートホーンの設計及び性能評価も行った。設
計ではコルゲートホーンの溝の数を調整し、リターンロスおよび交差偏波レベルの良い設計を行っ
た。設計をもとに製造したコルゲートホーンのリターンロス測定および遠方界パターンの測定を電波
暗室内で行った。その結果、リターンロスは観測周波数帯域内で-20 dB 以下で遠方界パターンもシミ
ュレーション値とほぼ一致し、設計通りのホーンが製造できていることを確認した。
設計した PFM アンテナモデルを用いて、テラヘルツ帯における Phase Retrieval 法のシミュレーシ
ョンを行った。近傍界強度の 2 面間の距離、iteration 回数、初期位相、ノイズを含んだ強度のそれぞ
れをパラメータとしたシミュレーションを行った。2 面間の距離については、距離が大きくなるほど回
復位相の結果は GRASP で計算した位相のシミュレーション値に近い分布を示したが、回復位相を用
いて推定した遠方界パターンのビームサイズと第 1 サイドローブレベルについては大きな変化は見ら
れなかった。次に iteration 回数については回数を重ねるごとに回復位相はシミュレーション値に近い
分布を示し、推定した遠方界パターンのビームサイズと第 1 サイドローブレベルは 1000 回を超えると
おおよそ一定の値に収束する傾向を示した。初期位相のシミュレーションでは、フラットな位相と期
待される位相を初期位相に用いてそれぞれにノイズを加えて位相回復および遠方かパターンの推定を
行った。両者で結果に大きな変化はなかったが、標準偏差:σ=0.5 [rad]の正規乱数を与えた場合、遠
方界の各パラメータがシミュレーション値に最も近い値を示した。しかし、これは初期位相にノイズ
を与えたことによって回復位相にもノイズが加わったためと考えられ、ノイズの有無は重要ではない
と判断した。次に、実測の強度には必ずノイズが含まれるため、GRASP で計算した強度に S/N とし
てノイズを与えて位相回復および遠方界の推定を行った。その結果、S/N が 30 dB より悪くなると推
定した遠方界のパターンのばらつきが大きくなり、実測では少なくとも 30 dB 以上の S/N を確保する
必要があることを確認した。また、ここまでのシミュレーションはアンテナ光軸に垂直な面内の近傍
界強度を用いて Phase Retrieval 法のシミュレーションを行っていたが、アンテナの構造や測定系の制
限から必ずしもそのような測定が行えるとは限らない。本アンテナの近傍界測定においても設置の都
合上、アンテナ光軸から 5.56 deg 傾いた軸に垂直な面内の強度を測定しなければならなかった。よっ
てそのような状況でも Phase Retrieval 法により位相回復が行えるかどうかをシミュレーションにより
確認した。その結果、光軸に垂直な近傍界強度を用いた Phase Retrieval 法で初期位相に用いていたフ
ラットな位相およびノイズを与えたフラットな位相を、傾いた系での Phase Retrieval 法で初期位相に
用いた場合は、位相を回復することができなかった。期待される位相分布を初期位相に用いた場合
は、位相回復を行うことができた。よって、光軸から傾いた系で Phase Retrieval 法を行う際は、期待
される初期位相分布がわかっている必要があることを明らかにした。
シミュレーションの結果を受けて、実際に製作した PFM アンテナを用いて近傍界測定を行った。本
測定では様々な温度環境でのデータをとるために、複数回測定を行い、温度環境の悪い状態での測定
も行った。測定した近傍界の強度および位相から推定した遠方界パターンは、測定時のスキャン方向
に垂直な Cut 面のパターンに歪みが大きく見られた。これは温度変化による影響と考えられ、実測の
位相の温度補正をスキャン中心の定点測定のデータから行った。その結果、温度補正をすることで遠

方界パターンはシミュレーション値に近づいた。次に、実測の強度分布のみを用いて Phase Retrieval
法により位相回復を行い、遠方界パターンを推定し、実測の位相を用いた場合と比較を行った。温度
補正した実測位相の結果と比べると、Phase Retrieval 法の結果の方がパターンの歪みが大きかった。
これは強度にも温度変化などによりドリフトパターンが含まれることで、位相回復の計算過程で悪影
響を及ぼしていると考えられた。そこで、位相と同様に強度も定点測定のデータからドリフトパター
ンの補正を行った。その結果、遠方界パターンは温度補正した実測位相の結果とおおよそ同じ結果と
なり、テラヘルツ帯での有用性を確認することができた。最後にこの実測の結果を受けて、GRASP の
強度分布にドリフトパターンを与えて回復位相および遠方界パターンにどのような影響がみられるか
を確認した。z1 面及び z2 面の強度に同じドリフトパターンを加えた場合は結果に影響はなく、z1 面
にのみ加えた場合は回復位相および遠方界パターンは大きく歪むことがわかった。さらに、z1 面にの
み周期的なドリフトパターンを与えるとパターンの変化の幅は小さくても、より回復位相や遠方界パ
ターンに対する影響が大きいことがわかった。つまり、強度の測定において温度変化の幅を小さくす
ることはもちろんのこと、測定時間内での周期的な変化も小さくする必要があることを明らかにし
た。 ...

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