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象牙質形成におけるFam20Cの役割

浪花, 耕平 大阪大学

2022.03.24

概要

【緒言】生体硬組織に存在するI型コラーゲンは石灰化沈着の足場として重要な役割を有しているが、軟組織の1型コラーゲンは石灰化しない。このことから、硬組織の石灰化には、硬組織特異的に存在する非コラーゲン性蛋白質であるdentin matrix protein1(DMP1)、osteopontin(OPN)、dentin sialophosphoprotein(DSPP)等のSIBLINGSに属する酸性リン蛋白質の役割が着目されてきた。これらの酸性リン蛋白質は、翻訳後修飾過程で高度にリン酸化されて、生体内で負に荷電してCa2⁺結合能を獲得し、ハイドロキシアパタイト形成の核となって石灰化に寄与すると考えられている。近年、Family with sequence similarity 20, member C(Fam20C)がSIBLINGSのS-x-E/pSモチーフ配列内のS残基をリン酸化することが報告された。Fam20Cは全身の中でも特に骨や歯に高発現し、全身性Fam20C欠失マウスモデルでは、骨や歯の形成不全、低リン血症が認められる。Fam20C欠失による硬組織形成不全には、この低リン血症が大きく影響していると考えられるが、軽症または無発症の低リン血症を示すFam20C欠失マウスモデルでもFam20C欠失部の硬組織形成不全が起こることから、硬組織形成局所におけるFam20Cの直接的役割が想定される。我々は、血中リン濃度が正常値を示す骨芽細胞/象牙芽細胞特異的Fam20C過剰発現マウス(Fam20C-Tg)を用いた骨組織の研究により、Fam20Cは骨形成と破骨細胞性骨吸収を促進することを以前に報告した。骨とは異なって象牙質は、生体内で最も高度にリン酸化されたDPP(dentin phosphoprotein; DSPPのC端断片)を豊富に含むが、DPPにはS_x_E/pSモチーフ配列が認められない。またプ77vitr旗験から、Fam20Cは象牙芽細胞分化を促進すると考えられているが、in vivoでの象牙質形成局所におけるFam20Cの役割は明らかではない。本研究では、生体内で象牙質形成の局所におけるFam20Cの役割を検討するため、Fam20C_Tgの歯の解析を行った。

【材料と方法】
1. Fam200Tg:2.3kb pro-a1(1)collagen promoterの下流にマウスFam20CcDNAをつないだ骨芽細胞/象牙芽細胞がFam20Cを過剰発現する雄性マウス(出生時より24週齢まで)の上顎第一臼歯を主に解析に用いた。

2. 組織学的解析:4%パラホルムアルデヒド固定液にて灌流後に歯を顎骨ごと採取し、脱灰・包埋・薄切後にHE染色や鍍銀染色、免疫組織化学的染色を行い、組織学的解析に用いた。象牙質形成における石灰化速度は、アリザリン-テトラサイクリン投与後に歯を顎骨ごと採取し、非脱灰切片により計測した。

3. 蛋白質解析:4週齢の上顎第一臼歯を採取し、液体窒素により凍結粉砕後、抽出した蛋白質を用いて、リン酸化蛋白質解析を行った。抽出蛋白質はトリプシン処理によりペプチド溶液にした後、Ti02樹脂にリン酸化ペプチドを吸着させ濃縮した後、LC-MS/MSに供して網羅的リン酸化解析を行った。また、抽出蛋白質を用いて、ウェスタンブロットによりDPPの定量解析を行った。

4. Gene ontology解析:The Database for Annotation, Visualization and Integrated Discovery(DAVID) v6.8を用いて、Gene ontology解析を行った。

5. μCT解析:各週齢の歯を顎骨ごと採取し、70%エタノール固定後、μCΤ撮影装置(R_mCT2またはSKYSCAN 1272)を用いて、画像解析を行った。

6. 遺伝子発現解析:4週齢の上顎第一臼歯を採取し、液体窒素により凍結粉砕後、抽出したRNAを用いてreal-time PCR法により各種遺伝子の発現解析を行った。

7. 抜歯実験:萌出後の上顎第一臼歯を無咬合状態にするため、3週齢で対合する下顎第一、第二臼歯を抜歯し、抜歯後5週で上顎第一臼歯を上顎骨ごと採取し、組織学的解析を行った。

8. 腎被膜下移植実験:生後6日齢の上顎第一臼歯の歯胚(歯根形成の直前)を採取し、SCIDマウスの腎被膜下へ移植した。移植30日後、歯根形成期の歯胚を腎臓ごと採取し、組織学的解析を行った。

9. 統計処理:スチューデントのt検定を行い、有意水準はP<0.05とした。

【結果と考察】
1. 上顎第一臼歯におけるFam20C発現
 Fam20C-Tgの上顎第一臼歯では、野生型マウス(WT)と比較して、Fam20C mRNA発現が約30倍上昇していた。また上顎第一臼歯におけるFAM20Cの免疫組織化学的染色では、WTと比較して、1週齢と4週齢のFam20C-Tgの象牙芽細胞に強い陽性反応を認めた。

2. 歯の構成蛋白質のリン酸化状態の検討
 ヒ顎第一臼歯から抽出した蛋白質を用いて、リン酸化蛋白質の網羅的解析を行った。Fam20C-Tgでは、WTと比較して、DMP1やdentin sialoprotein(DSP;DSPPのN端断片)、0PN等のリン酸化ペプチドが多数検出され、分泌蛋白質のリン酸化の亢;進が示されたが、DPPペプチドは検出できなかった。Gene ontology解析では、ossification、biomineral tissue development、osteoblast differentiation、calcium ion bindingに関与する蛋白質のリン酸化が亢進していることが示された。また、リン酸化セリンの免疫組織化学的染色では、WTと比較して、Fam20C-Tgの歯冠象牙質に強い陽性反応が認められたため、象牙質に最も豊富に含まれるDPPのリン酸化も亢進していることが示唆された。一方、Fam20C-Tgの歯根象牙質では、リン酸化セリンの免疫反応の減弱が認められた。

3. Fam20C-Tgにおける歯冠・歯根象牙質の変化
 μCT解析において、4週齢および12週齢のFam20C-Tgの上顎第一臼歯は、WTと比較して、歯の全体量は減少していたが、エナメル質量に差はなかった。Fam20C-Tgの歯冠象牙質では、象牙質量は4週齢で減少していたが、12週齢では有意な差は認めず、象牙質密度は4週齢では差は見られず、12週齢で有意に増加していた。一方、Fam20C-Tgの歯根象牙質では、象牙質量と象牙質密度は、4週齢および12週齢ともに有意に減少していた。組織学的解析において、4週齢のFam20C-Tgの上顎第一臼歯では、WTと比較して、歯冠象牙質や象牙前質に形態変化はみられなかったが、歯根象牙質では、象牙質幅が狭く面積は有意に減少しており、象牙前質の幅や面積、象牙前質面積/象牙質面積は有意に増加していた。また、Fam20C-Tgの歯根象牙質の石灰化速度は有意に減少していた。

4. Fam20C-Tgにおける象牙芽細胞の変化について
 象牙質特異的なDSPとDPPの免疫組織化学的染色では、WTと比較して、Fam20C-Tgではそれらの免疫反応が減弱していた。Fam20C-Tgでは、特に歯根象牙質の免疫反応は微弱であった。また、上顎第一臼歯の抽出蛋白質のウヱスタンブロットによる定量解析でもDPP産生量の減少が認められ、象牙芽細胞の機能異常が示唆された。象牙芽細胞の組織学的解析では、Fam20C-Tgの歯冠象牙芽細胞に著変は見られないが、歯根象牙芽細胞は、WTと比較して、象牙芽細胞の丈が有意に減少していた。また、Fam20C-Tgの上顎第一臼歯(4週齢)の歯根象牙質根尖部には、象牙細管構造がなく、細胞封入を有する骨様硬組織を認めた。この骨様硬組織には、鍍銀染色では骨細管様構造が観察され、免疫組織化学的染色から象牙質と骨の基質の特徴を有することが分かった。骨様硬組織に接して、骨芽細胞マーカーであるRUNX2陽性細胞が分布し、その歯髄側の細胞にはBMP2強陽性反応が認められた。上顎第一臼歯から抽出したmRNA遺伝子発現解析では、Runx2、Alp、Οpn、Dmpl、Bmp2が発現が上昇し、象牙芽細胞マーカーのDsppは減少傾向を示した。以上より、Fam20C-Tgでは、象牙芽細胞機能異常と、歯根象牙芽細胞の分化異常が示された。

5. 歯根象牙質形成の検討
 Fam20C-Tgの上顎第一臼歯の歯根根尖部の骨様硬組織は4週齢の咬合開始後に認められたことから、その形成には咬合力が影響していると考え、対合歯を抜歯して無咬合状態にした歯根根尖部を解析した。その結果、無咬合状態にしても、WTとは異なり、Fam20C-Tgでは骨様硬組織が形成される事から、咬合力は影響しないと結論した。次に、生体内の様々な環境要因の影響を排除した上で、歯根象牙質形成におけるFam20Cの役割を検討するため、歯根形成前のマウス歯胚を腎被膜下に移植した。移植30日後のWT由来の歯胚とは異なり、Fam20C-Tg由来の歯胚では、象牙細管の消失した細胞封入のある骨様硬組織が形成された。この骨様硬組織は、骨細管様構造を示して、象牙質と骨基質の両特徴を有し、骨様硬組織に接してRUNX2陽性細胞を認め、Fam20C-Tgの生体の歯根根尖部と同様の所見が観察された。

【結語】Fam20Cは、象牙質の石灰化を促進し、象牙芽細胞の機能と分化を調節することが示された。

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