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Diagnostic Performance of Endocytoscopy for Esophageal Eosinophilia

飛田, 恵美子 名古屋大学

2023.10.05

概要

主論文の要旨

Diagnostic Performance of Endocytoscopy
for Esophageal Eosinophilia
食道好酸球増多に対する超拡大内視鏡の診断能

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

消化器内科学分野

(指導:川嶋 啓揮
飛田 恵美子

教授)

【緒言】
好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis; EoE)は食道上皮への好酸球浸潤とそれによ
る食道機能障害に関連した症状が特徴とされる慢性の免疫介在性食道疾患である。本
邦における有病率は欧米と比較して低いが、内視鏡検査ベースの研究では 2011 年で
の 0.02%から 2018 年には 0.34%へ増加傾向にあり、EoE は今後も注目される疾患と考
えられる。2015 年厚生労働省研究班作成の診断指針では、症状と食道粘膜生検にて上
皮内に 1 高倍率視野(high power field; HPF)当たり 15 個以上の好酸球浸潤を認めるこ
とが必須項目とされている。食道好酸球増多(eosinophilic eosinophilia; EE)の診断には、
EoE の特徴的な内視鏡所見の中でも縦走溝や白色滲出物から生検することがよいとい
われているが、食道生検 1 個当たりの感度は 55-63%と高くはない。そのため、欧州ガ
イドラインでは感度を最大限まで上げるために少なくとも 6 ヶ所の生検が推奨されて
いる。
EoE の超拡大内視鏡(endocytoscopy; EC)所見は、2016 年に熊谷らによって報告され
た。その特徴として、核/細胞質(nuclear/cytoplasmic; N/C)比が低い扁平上皮細胞の密
度がわずかに増加している、扁平上皮細胞よりも小さい炎症細胞の顕著な浸潤がある、
炎症細胞の中には時々2 葉核がみられることが報告されている。その後 2020 年に島村
らからも、EoE 患者の EC 観察では周囲が染まらない紫色の 2 葉核をもつ複数の細胞
を認め、好酸球浸潤の存在を示唆すると報告された。これら 2 つの報告から、EC 観察
での 2 葉核の所見で食道好酸球増多を評価できる可能性があると推測されるが、これ
までに複数例での検討はない。今回、EoE 患者における EC の EE に対する診断能を評
価することを目的とした。
【対象及び方法】
2019 年 12 月から 2021 年 4 月の間に当院にて上部消化管内視鏡検査を受けた患者の
うち、EoE に特徴的な内視鏡所見を有し食道生検で好酸球増多(≧15 個/HPF)を認め
た既往のある症例を対象とした。内視鏡検査は 1 名の内視鏡専門医が GIF-H290EC
(オリンパス株式会社)を用いて行った。食道胃接合部(esophagogastric junction; EGJ)、
EGJ より 5cm 口側、10cm 口側の高さにて各 2 方向ずつ、1 症例あたり合計 6 ヶ所を関
心領域として通常白色光観察と EC 観察を行った。通常観察では EoE の特徴的所見
( 輪 状 溝 、 縦 走 溝 、 白 色 滲 出 物 、 浮 腫 、 狭 窄 ) を Modified EoE endoscopic reference
score(EREFS)スコアを用いて評価した。EC 観察では、1%メチレンブルーを散布して
30-60 秒後に観察と撮像を行った。そして最後に観察部位から 1 個ずつ生検を行い、
HE 染色後に病理医にて 1 検体ごとの 1HPF あたりの最大好酸球数を評価し、15 個/HPF
以上だった場合を病理学的 EE 陽性とした。EC 画像の評価は、既報に基づいて作成し
た EC-EE 所見 3 項目を用いて行った。項目Ⅰは N/C 比が低い扁平上皮細胞の密度が増
加している所見、項目Ⅱは扁平上皮細胞よりも小型の細胞を複数個認める所見、項目Ⅲ
は 2 葉核を認める所見とした(Table 1, Figure 1)。各観察部位より 1 枚ずつ選択し収集
した EC 画像は乱数表に基づいて並び替え、画像集を作成した。EC1 画像ごとに EC-

-1-

EE 所見各項目の有無を読影した。EC-EE 陽性の条件は、(1)全ての項目を認める場合
と(2)項目Ⅲを認める場合のそれぞれで検討した。読影は、臨床情報や通常内視鏡画像
を伏せた上で行った。まず 2 名の内視鏡専門医(検査施行医 1 名、共同研究者 1 名)が
行い、画質不良の画像を除外したのち、読影結果より診断精度を検討した。また病理
学的所見との関連についても検討した。次に EC 経験のない 4 名の内視鏡専門医にて
読影し、診断精度と観察者間一致率を Fleiss’s κ 係数を用いて検討した。
【結果】
今回の期間中、EoE に特徴的な内視鏡所見と病理学的所見を有した患者は 40 例あ
り、好酸球性胃腸症 1 例、胃癌合併 1 例を除外した 38 例に対して EC 観察を行った。
うち 5 例は検体不良のため除外とした。33 例 198 画像を得たのち、画質不良のため 4
画像を除外し、最終的に 33 例 194 画像を検討対象とした。患者背景について、年齢中
央値は 46 歳、男性やアレルギー疾患をもつ症例が多かった。症状は 76%に認め、その
半数以上が胸やけや食事のつかえ感を訴えていた。12 名に治療歴があり、8 名の治療
中患者が含まれていた。内視鏡所見について、浮腫を 94%に認め、縦走溝、輪状溝、
白色滲出物の順に多く認められた。Modified EREFS スコア中央値は 4 点だった(Table
2)。2 名の内視鏡医による読影では、EC-EE 陽性条件(1)の場合では 194 画像のうち
113 画像が EC-EE 陽性と評価され、そのうち 78 画像が病理学的 EE 陽性であった。条
件(2)でほぼ同様の結果であった(Table 3)。
診断精度について、EC-EE 陽性条件(1)の場合、正診率 76.3%、感度 87.6%、特異度
66.7%、陽性的中率 69.0%、陰性的中率 86.4%であった。EC-EE 陽性条件(2)の場合も
ほぼ同様であった(Table 4)。EC-EE 陽性条件(1)の場合での EC-EE 陽性群の 1HPF 当
たりの最大好酸球数は陰性群と比較して有意に高値であった(21 vs. 1, p < 0.001)。
混合効果モデルを用いて解析した 4 人の内視鏡医の統合診断オッズ比は、EC-EE 陽
性条件(1)の場合(OR: 3.98 [2.94-5.40], p < 0.001)、条件(2)の場合(OR: 3.86 [2.86-5.21],
p < 0.001)のいずれの条件でも有意であった(Figure 2)。
4 名の読影結果では、EC-EE 陽性条件(1)の場合、正診率 63.9-69.6%、感度 50.6-70.8%
であった。条件(2)の場合もほぼ同じ結果であった。Reader B の感度は、EC-EE 陽性条
件(1)では 50.6%だったが、EC-EE 陽性条件(2)の場合では 65.2%に上昇した(2)(Table
5)。
観察者間一致率は、EC-EE 陽性条件(1)の場合は κ 係数 0.584(0.527-0.642)、条件(2)
の場合は 0.653(0.596-0.711)であった。なお、項目 I についての一致率は 0.323(0.2650.380)と不良だった(Table 6)。
【考察】
今回 EoE を疑う患者において EE を評価するために EC で観察可能な 3 つの所見
(EC-EE 所見)を設定し、その診断能を評価した。EC-EE 陽性条件を(1)全ての項目を
認める場合と(2)項目Ⅲを認める場合のそれぞれで検討したが、正診率 76%、感度 88%、

-2-

陽性適中率は 69%であった。また、条件(1)と(2)でそれぞれ κ 係数 0.584 と 0.652 と
良好な観察者間一致率が得られた。EE 検出のための単回生検の感度が 55-63%と報告
されていることを考慮すると、EC は EE の検出率を高めるために適切な生検部位を見
つけるのに役立つと思われる。
EC-EE の診断能は条件(1)と(2)ではほぼ同等であったことより、EC-EE 陽性の条件
としては項目Ⅲの 2 葉核があればよいとする方が簡便であるかもしれない。EC では
上皮深層および上皮下層の直接観察が困難であるが、項目 I および II が深部の炎症活
動性の間接的評価に有用かどうかはさらなる検討が必要である。
本研究にはいくつかの限界がある。第一に、本研究は症例数が限られた単一施設で
の研究であった。EoE の稀少性を考慮すると、EC-EE を検証するために十分な EC 画
像を蓄積したと考えている。第二に、EC の観察部位と生検部位が完全に一致しない場
合がある。炎症など非腫瘍性病変を標的にすることは困難と考えられたため、EGJ か
らの距離を設定してできるだけ 1 対 1 に対応するように配慮して生検を行った。第三
に、EC 手技や画像選択を 1 名の内視鏡医が行ったため選択バイアスが存在する可能
性がある。画質評価は 2 名の内視鏡医が行ったが、今後の研究では複数の内視鏡医に
よる EC の実施も視野に入れた前向きな研究が必要である。
【結論】
EC の EE 診断能は良好であり、EoE を疑う患者における標的生検に有用である可能
性がある。

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