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大学・研究所にある論文を検索できる 「酸素勾配を有する尿細管細胞培養系の確立と低酸素誘導因子(HIF-1α)の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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酸素勾配を有する尿細管細胞培養系の確立と低酸素誘導因子(HIF-1α)の検討

本田, 智子 東京大学 DOI:10.15083/0002006275

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 本田 智子
慢性腎臓病の進展には、尿細管間質の低酸素が重要な役割を担っていることが知られて
おり、同部位の酸素と低酸素応答の研究が必要である。低酸素応答の代表的なレギュレー
タとして HIF(hypoxia-inducible factor)が挙げられる。腎臓病では低酸素に対する HIF の
活性化が抑制されるため、低酸素の改善が不十分で腎臓病がさらに進行することが知られ
ている。腎臓病では、微小血管構造の脱落により低灌流状態にある。また、正常腎尿細管
細胞に酸素勾配が存在することが報告されており、腎臓病においても尿細管細胞の酸素勾
配の存在が示唆される。しかし、培養細胞レベルの低酸素・HIF に関する研究の多くが、
均一灌流、均一酸素分圧培養を前提としている。本研究は、カバーガラスを用いて低灌
流、酸素勾配の存在する尿細管細胞培養系を作成し、低灌流、酸素勾配存在による分子生
物学的な影響を、尿細管上皮細胞に多く発現している HIF-1αを中心に検討したものであ
り、下記の結果を得た。
1. ヒト近位尿細管細胞(HK-2 細胞)を丸型カバーガラス下とディッシュ底面の間に圧着
し、カバーガラスモデルを作成した。りん光強度・寿命計測技術を用いて、カバーガ
ラス下の HK-2 細胞の酸素分圧を評価したところ、カバーガラスモデル作成 30 分時点
でカバーガラス辺縁に内側に向かって酸素分圧が低下する酸素勾配の形成が確認され
た。
2. カバーガラスモデル作成 3 時間後の HIF-1αの分布をピモニダゾールとの共染色によ
り評価したところ、カバーガラス内側にピモニダゾール陽性域を認め、その陽転化部
付近で HIF-1αはドーナツ状の強い陽性(以下、HIF リングと称する)を示した。
3. Actin や GAPDH は、カバーガラス内全体でシグナルは保たれており、ドーナツ状の
シグナル増強は HIF-1αに特徴的な所見であった。
4. カバーガラスモデルにおいて、周囲の酸素濃度を低下させると、ピモニダゾール陽性
域、HIF リング径が拡大したことより、HIF リング形成は酸素分圧に依存し、HIF-1
αが最大蓄積する酸素分圧の範囲が存在すると考えた。りん光寿命測定技術を用い
て、HIF リングに相当する酸素分圧を計測したところ、約 4-20 mmHg であった。一
方、均一灌流・均一酸素分圧培養細胞系において、HIF-1αは、21%酸素、1%酸素、
<0.1%酸素培養の順に蓄積することを確認したことから、無酸素に近い領域である
HIF リング内側で HIF-1αの蓄積が抑制されるには、酸素分圧以外の因子の関連が示
唆された。
5. カバーガラスモデルでは、酸素勾配のみならず、カバーガラス辺縁に内側に向かって

pH が低下する pH 勾配も存在することを示した。さらに、HIF リングは培養 pH を変
化させると移動する(pH 8.5 培養で内側へ、pH 6.0 培養で外側へ移動した)こと、
pH 5.0 培養で HIF-1αのシグナルが減弱することから、HIF リング形成には pH が影
響することを見出した。
以上、本論文は、低灌流、酸素勾配の存在する尿細管培養系における HIF-1αの蓄積につ
いて検討し、酸素分圧だけでなく pH の影響もよく受けることを示した。慢性腎臓病の進
展の原因となる HIF 活性化抑制の一因として、pH の低下が影響している可能性が示唆さ
れた。生体では、腎臓病のみならず虚血病変や腫瘍など、さまざまな低灌流、酸素勾配が
存在するため、カバーガラスモデルは培養細胞レベルで実際の生体を模すモデルとして有
用であり、本研究は今後のさまざまな疾患の病態解明に重要な貢献をすると考えられる。
よって本論文は博士(医学)の学位請求論文として合格と認められる。

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