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大学・研究所にある論文を検索できる 「濾過流を負荷する培養システムの開発とそのポドサイト培養への応用」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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濾過流を負荷する培養システムの開発とそのポドサイト培養への応用

土肥, 浩太郎 東京大学 DOI:10.15083/0002003295

2022.03.09

概要

Invivoのポドサイトは、スクラム構造を有する足突起間にスリット膜を形成し、サイズバリアという血液濾過機構において重要な役割を果たす。サイズバリアは、アルブミン以上の高分子蛋白を血管内に留め、それよりも低分子の化合物を原尿中へ排泄する事を指す。アミノヌクレオシド系薬剤によるポドサイト障害では、これらの機能が失われ、尿中への高分子蛋白の漏出、それに続く腎機能低下を引き起こす事が知られており、創薬研究においても、候補化合物のポドサイトに対する毒性の有無を、ヒトへの投与を行う前段階でスクリーニングするシステム(以下、invitro糸球体モデルとする)を開発する試みがなされている。

Invitro糸球体モデルは、ポドサイトのスリット膜機能を評価するという目的から図1のような仕様が考えられる。すなわち、ポドサイトを多孔膜上で培養し、候補化合物を作用させた後に、蛍光標識アルブミンを含む培養液を灌流し、頂端側培養液の蛍光輝度を測定するというものである。この方法では、候補化合物がポドサイトに対し安全であればスリット膜は維持され、頂端側培養液中の蛍光輝度は低く、逆に有害であればスリット膜が破綻し、頂端側培養液の蛍光輝度は高く測定される。

Invitro糸球体モデルの開発には、濾過流を再現する培養デバイス、及びそのシステムの開発と、培養ポドサイトを、スリット膜機能を有する状態へ誘導する培養技術という二つの課題を有する。後者の課題には、単離されたポドサイトがinvivoにおける入り組む突起構造やスリット膜関連蛋白の発現等、特徴的な形質の大部分を失うという背景がある。

本研究では、濾過流を再現する培養システムの開発を行い、その機能評価を行うとともに、温度感受性マウスポドサイト(HSMP: heat sensitive mouse podocyte)を用いてポドサイトの分化における濾過流の意義につき検証した。また、HSMPを用いて入り組む樹状突起構造を再現する培養条件を開発し、本培養システムにおいて、分化した細胞骨格を有するポドサイトに対し濾過流を負荷する事が可能か否かを検証した。

濾過流を再現する培養デバイスとそのシステムの開発
濾過流を再現する培養系の先行研究には、液面高低差を利用したカルチャーインサートを用いる系、及び多孔膜を挟んだ基底・頂端側流路構造を有するマイクロ流体デバイスを用いる系が報告されているが、前者は濾過流の制御が困難、後者は細胞播種が困難・流路内培養液中の気泡混入・培養終了後のサンプルへのアクセスが困難という問題点がある。本研究では、先行研究の培養系を融合し、カルチャーインサートのウェル部(基底側コンパートメントとする)上面に天井構造を設け、基底側コンパートメントを開閉可能な閉鎖空間として同コンパートメントに対する加圧が可能な培養デバイスを開発した(図2)。本培養デバイス多孔膜部における濾過流は、基底側コンパートメント液相部への培養液送液と同コンパートメント気相部への送気ラインを介した空気加圧という従量式及び従圧式送液システムにより再現され、更に従圧式送液システムでは、周期的に高低圧の送気を基底側コンパートメントに対し行う事で糸球体毛細血管内を模倣する脈動圧を再現し、それによる濾過流再現を可能にした。また、基底側コンパートメントの気相部は、空気圧圧力センサと交通させる事で同コンパートメント内圧の測定を可能とした。

培養デバイスにおける濾過流再現とそのシステムの機能評価
本培養デバイスの機能評価として、送液システムにおける濾過流制御の利便性を基底側コンパートメント内圧(Pbc:Basal compartment pressure)測定によって評価した。定量従量式送液システムと定圧従圧式送液システムの比較においては、後者が再現性良くPbcを一定に維持出来る事が示され、濾過流制御において利便性が高い事が示された。また、脈動圧従圧式送液システムは、その周期や圧の振れ幅を制御する事が可能であり、周期毎でPbc波形の再現性が保持されている事が示された。

Pbc測定が、明視野観察が困難な多孔膜上の細胞の状態を知る手段となりうる可能性について、ラット糸球体内皮細胞を用いて検証した。培養24、48及び72時間後の従量式送液システム下で測定された同時刻のPbcは、多孔膜上の細胞密度と、細胞間接着関連蛋白であるZO1やPan-cadherinの発現と正の相関を示した。この結果より、本培養デバイスにおけるPbc測定が、多孔膜上の細胞密度や細胞間接着関連蛋白発現の程度を知る手段となりうる事が示唆された。

培養ポドサイトに対する濾過流負荷の影響
濾過流がポドサイトの分化に与える影響に関しては、比較対象をカルチャーインサートの静置群とし、ポドサイトの細胞骨格と分化したポドサイトにおいて発現する遺伝子の発現量を評価した。濾過流は過去の報告におけるラット糸球体単位面積あたりの濾過流速度より0.7μL/min(定量従量式送液システム)とし、細胞骨格の評価はビメンチン染色を行い、遺伝子発現量の評価はスリット膜関連蛋白遺伝子であるNPHS1、NPHS2、CD2AP、NPHS1の転写促進因子であるWT1、極性蛋白遺伝子であるPODXL、接着斑分子の遺伝子であるITGA3、ITGB1に関し、定量PCR法により行った。ビメンチンの局在は両群とも細胞質内散在性局在であり、遺伝子発現においても全て両群間に有意差を認めなかった。この結果より、濾過流はポドサイトの細胞骨格とスリット膜関連蛋白、極性蛋白及び接着斑分子の発現における分化に関与しない可能性が示唆された。

入り組む樹状突起構造を有する不死化ポドサイトとそれに対する濾過流負荷
HSMPにおいてコンフルエントの細胞密度下で入り組む樹状突起構造の細胞骨格を誘導する培養条件を開発した。

また、前述した培養条件による入り組む樹状突起構造を伴うHSMPを本培養デバイスにおいて再現し、入り組む樹状突起構造を有するポドサイトに対し、濾過流負荷が可能か否かを検証した。濾過流による基底側からの圧負荷は、細胞存在及び非存在下におけるPbcの比較により定量化し、濾過流負荷の是非は、負荷後の細胞接着率と突起構造維持の程度を静置群・濾過流負荷群間で比較した。細胞接着率は核染色、突起構造評価はビメンチン染色により行った。濾過流による圧負荷の定量化においては、細胞存在条件下が非存在条件下よりも高いPbcを呈し、細胞に対する濾過流の圧負荷を定量化する新規の技術が可能である事を示した。静置群・濾過流負荷群間においては細胞接着率及びビメンチン染色像において有意差は見られず、invitro糸球体モデルの運用に際し、入り組む樹状突起構造を有したポドサイトに対し濾過流負荷が可能である事が示唆された。

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