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大学・研究所にある論文を検索できる 「透析導入期患者の予後予測因子としての血清free IL-18の検討 : 茨城県内の透析導入患者コホート研究から」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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透析導入期患者の予後予測因子としての血清free IL-18の検討 : 茨城県内の透析導入患者コホート研究から

田原, 敬 筑波大学

2021.08.03

概要

背景:
 感染症は本邦の透析患者の死亡原因の約 2 割を占め、年々増加傾向にある。透析患者は⼀般人口よりも感染症に罹患するリスクが高く、また感染症による死亡率も高い。そのため透析患者の感染症に対する対策が、透析患者の予後改善に重要である。本研究では、透析患者の感染症リスクの予後予測因子として、感染症との関連性が報告されているサイトカインである interleukin-18(IL-18)に着⽬した。IL-18 は本邦の岡村らにより発見された18.4kDa のサイトカインである。Th1 型免疫応答を介した interferon-γ(INF-γ)の産生を促進し、感染防御において保護的な役割を果たすことが知られている。また、IL-18 の生理学的活性の評価には遊離型の free IL-18 を測定することが重要であるが、過去に透析患者の予後予測因子として血清 free IL-18 を検討した報告はない。そのため、茨城県内の透析導入患者コホート研究として透析導入期の血清 free IL-18 と導入期臨床所見、生命予後、感染症発症を含む併存症発症との関連について検討した。

方法:
 本研究は、「茨城県内の透析導入患者コホート研究」を基盤としたニ次研究である。茨城県内の透析導入患者コホート研究は、茨城県で新規に透析を導入された患者を対象とした多施設共同前向きコホート研究である。本研究の対象は、茨城県内の透析導入患者コホート研究の血液サンプルバンクから無作為に抽出した 295 例である。血清 total IL-18 濃度(以下血清 total IL-18 値)、血清 IL-18 binding protein 濃度(以下血清 IL-18 BP 値)の各測定値から、既報と同様に質量作用の法則に従って血清 free IL-18 濃度(以下血清 free IL- 18 値)を算出した。血清 free IL-18 高値群と低値群の、導入時の臨床学的データを比較した。また、累積死亡また入院イベント累積発症について生存時間解析を行い、血清 free IL- 18 低値群と高値群の Kaplan-Meier 曲線を比較した。また、死亡また入院イベント累積発症を従属変数とし、独立変数を血清 free IL-18 低値と過去に各評価項⽬と関連の報告がある因子を調整因子として選択し、COX 比例ハザード分析を行った。また、血清 total IL-18 値、血清 IL-18 BP 値と入院イベントの累積発症との関連についても Kaplan-Meier 曲線での生存時間解析、COX 比例ハザード分析を行った。

結果:
 血清 total IL-18 値の中央値は 455.6±344.6pg/ml、平均値は 550.2pg/ml、血清 IL- 18 BP 値の中央値は 16077.6±823.9pg/ml、平均値は 18198.3pg/ml、血清 free IL-18 値の中央値は 143.3 ±98.3pg/ml、平均値は 160.7pg/ml であった。血清 free IL-18 低値群と高値群の入院イベント累積発症の Kaplan-Meier 曲線を比較し、全入院イベントの累積発症率は有意に free IL-18 低値群(130.2pg/ml 未満)が高率であった。(log-rank 検定:p<0.01)。
 血清 free IL-18 低値群と高値群の感染症イベント累積発症の Kaplan-Meier 曲線を比較し、感染症イベントの累積発症率は有意に free IL-18 低値群(109.9pg/ml 未満)が高率であった。(log-rank 検定 p<0.01)。また、他の入院イベントの累積発症を血清 free IL-18 低値群と高値群で比較し、脳血管障害、虚血性心疾患の累積発症率が血清 free IL-18 低値群で高率であった。全入院イベント発症を従属変数、血清 free IL-18 低値( 血清 free IL- 18<109.9pg/ml)、CRP、eGFR、年齢、ヘモグロビン、血清アルブミン、血清補正カルシウム、血清リン、intact PHT を独立変数として Cox 比例ハザードモデルを用いた多変量解析を行い、血清 free IL-18 低値(血清 free IL-18<109.9pg/ml)は全入院イベント発症と有意に 関連していた。(ハザード比:1.62、95%信頼区間:1.04-2.52、p=0.03)また血清アルブミ ンも全入院イベント発症と関連していた。(ハザード比:1.66、95%信頼区間:0.455-0.964、 p=0.03)感染症イベント発症を従属変数、血清 free IL-18 低値(血清 free IL-18<109.9pg/ml)、 CRP、eGFR、年齢、ヘモグロビン、血清アルブミン、血清補正カルシウム、血清リン、intact PHT を独立変数として Cox 比例ハザードモデルを用いた多変量解析を行い、血清 free IL- 18 低値(血清 free IL-18<109.9pg/ml)が独立して、感染症イベント発症と有意に関連してい た。(ハザード比:19.8、95%信頼区間:1.3-30.2、p=0.03)死因として、感染症が 10 例、悪性腫瘍が 6 例、脳血管障害が 5 例、心筋梗塞が 4 例、腎不全が 3 例、心不全が 2 例であ った。血清 free IL-18 低値群と高値群の死因と関連した累積死亡について比較し、心筋梗塞 関連の累積死亡率が血清 IL-18 低値群(137.8pg/ml 未満)で高率であった(log-rank 検定 p<0.01)。血清 total IL-18 値、血清 IL-18BP の低値群と高値群で感染症イベント累積発症のKaplan-Meier 曲線の比較を行ったが、有意な差は認めなかった。また、血清 total IL-18 低値、血清 IL-18BP 低値をそれぞれ年齢、血清アルブミン、血清補正カルシウム、血清リ ン、intact PTH を調整因子として選択して Cox 比例ハザード回帰分析を行ったが、感染症 イベント発症との関連は認めなかった。

考察:
 我々は茨城県内の透析導入患者コホート研究から、血清 free IL-18 値を測定し、生命予後、入院イベントとの関連を調べた。透析導入患者の血清 free IL-18 と生命予後、合併症との関連を評価し、さらに血清 total IL-18 と血清 IL -18BP についても併せて評価した、初めての報告となる。本研究における透析導入時の血清 free IL-18 値は、過去に報告されている慢性腎不全保存期や血液透析期の血清 free IL-18 値と比較してより高値であった。腎機能障害による影響、尿毒症下の持続的な免疫刺激による影響が、透析導入時の血清 free IL- 18 高値に関連していると推察される。透析導入時の血清 free IL-18 低値が、透析導入後の感染症発症と関連していた。IL-18 は感染防御の際の免疫応答において重要な働きをするサイトカインであり、感染症に対して保護的な役割を果たす。血清 free IL-18 低値群の患者は、透析導入時の高度の尿毒症の影響にある状況で血清 free IL-18 値の低下をきたしており、活動性感染症の状況でも血清 IL-18 の分泌低下をきたしている可能性が推察されるが、尿毒症下の IL-18 の動態についての基礎研究は充分にはなされておらず、尿毒症下の免疫応答に果たす IL-18 の役割について、基礎研究の進行による病態の解明が進展することを期待する。血清 total IL-18 値、血清 IL-18BP 値は感染症発症との関連は認めず、血清 free IL-18 値の評価が重要であることが⽰唆された。

結語:
 本研究から、透析導入期の血清 free IL-18 低値が透析導入患者の感染症発症と関連することが分かった。腎不全による高度の尿毒症下での IL-18 の動態が不明確であるなどさらなる基礎研究が必要であり、また血清 freeIL-18 と感染症との関連についてのさらなるエビデンスの集積が必要だが、それらの検証の結果によっては血清 free IL-18 は感染症発症の予後予測因子となる可能性がある因子として期待できると考える。

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