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大学・研究所にある論文を検索できる 「妊娠管理における医学的リスクおよび社会的リスクの評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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妊娠管理における医学的リスクおよび社会的リスクの評価

川口, 晴菜 大阪大学

2021.01.31

概要

〔目 的(Purpose)〕
周産期医療において、児にとってのリスクの高い妊娠は多数存在する。早産の多い多胎妊娠や妊娠高血圧症候群は医学的なリスクとして代表的な疾患である。また、産褥精神病からの母の自殺やこども虐待が生じることも大きな問題である。日本における品胎妊娠の現状および膜性毎の児の予後を明らかにすることで、品胎妊娠における医学的なリスクを評価し、品胎妊娠の管理方針を検討する。また、児童虐待防止の観点から、妊娠中に医療機関で把握できる社会的および医学的なリスクの中から、支援を要する妊婦を抽出する方法を開発する。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
主論文①
以下2群の母子健康手帳情報について後方視的に収集し比較検討することで、児童虐待と関連する周産期因子を抽出する。入所群は、平成25年4月から平成28年3月の3年間に大阪府下の子ども家庭センターに虐待保護にて一時保護となった0歳~5歳例のうち施設入所になった症例で、母子健康手帳の複写がある症例とした。対照群は、モデル地区にて3歳半児健診の際に、同研究に同意し、質問紙調査に協力が得られた症例であり、モデル地区の要保護児童対策協議会に要保護、要支援児童として登録されているものを除外した。統計学的解析は、Wilcoxon rank-sum test、Pearson’s chi-squareおよび調査時点の年齢によって補正し多重ロジスティック回帰分析を行った。入所群70例、対照群345例であった。児童虐待と関連する周産期因子は、母体20歳未満(aOR:257(17–3833))、母20–24歳 (aOR:23(4–118))、父が母より10歳以上年上(aOR:14(2–95))、未婚(aOR:16(3–94))、母体精神疾患(aOR:49(9–258))、初診週数>20週(aOR:132(13– 1385)、受診回数<10回(aOR:21(3–157))、低出生体重(aOR:5(1–24))、先天疾患(aOR:8(1–56))であった。

主論文②
MFICU連絡協議会参加施設において、1990年1月~2009年12月に分娩となった品胎妊娠について後方視的調査を行った。症例数は954組であり、データ欠損、22週未満の胎児死亡、流産、重大な胎児疾患を除く701組が対象となった。3絨毛膜3羊膜(TT)品胎が507組、2絨毛膜3羊膜(DT)品胎が144組、1絨毛膜3羊膜(MT)品胎が50組であった。妊娠22週以降の胎児死亡もしくは新生児死亡は2.6%であり、TT品胎2.1%、DT品胎3.2%、MT品胎5.3%とMT品胎ではTT品胎と比較し有意に 死亡が多かった(aOR2.6(1.2-5.8)、P=0.019)。生産した2075人の品胎児の出生体重(中央値)および1500g未満の割合 は、TT品胎では1668g(423-3320g)、35%、DT品胎で1662.5g(337-2840g)、38%、MT品胎では1570g(398-2558g)、47% と、MT品胎で有意に小さかった。全体の62%が予防的頚管縫縮術を施行されていた。予防的頚管縫縮術施行群の分娩週数(中央値)および妊娠28週未満の早産率は、妊娠33週5日(23-38週)、6.5%であり、未施行群では33週5日(23‐38週)、 9.1%と両群で有意差を認めず、品胎妊娠における予防的頸管縫縮術の効果は否定された。

〔総 括(Conclusion)〕
容易に把握しうる母子健康手帳の情報から、将来の児童虐待につながる因子が判明した。これらの因子は、両親が妊娠前から抱えている社会的な背景と、妊娠に関連する因子および児の因子に分類されるが、若年や未婚、年の差婚、精神疾患等の背景因子に加えて、希少受診や児の育てにくさにつながる可能性のある先天疾患等の要因が関連した。これらの因子を活用して妊娠中から支援対象を抽出し行政機関と連携することで、その後の児の虐待が実際減少するかについては更なる検証が必要である。

また、MT品胎でTT品胎より胎児死亡もしくは新生児死亡が有意に多いことが判明した。この研究結果はThe American College of Obstetricians and Gynecologistsの Practice Bulletinにも引用され品胎妊娠の管理の一助となっている。また、品胎妊娠に対する予防的な頸管縫縮術の早産予防効果は否定的であったことから、当センターにおいて予防的頸管縫縮術を中止した。長らく施行されてきた管理方法の有効性を検証したうえで方針の変更につながる研究であった。2つの研究は、周産期医療における医学的および社会的ハイリスク症例について、リスク要因を検討し妊娠中の管理方針を決定するために重要な検証であると考えられる。

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