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大学・研究所にある論文を検索できる 「Search for Neutrinoless Double-Beta Decay in KamLAND-Zen Applying Improved Long-lived Spallation Background Reduction」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Search for Neutrinoless Double-Beta Decay in KamLAND-Zen Applying Improved Long-lived Spallation Background Reduction

三宅, 春彦 東北大学

2023.11.22

概要

令和 5 年 博士論文要旨

Search for Neutrinoless Double-Beta Decay in KamLAND-Zen
Applying Improved Long-lived Spallation Background Reduction
(改善された長寿命核破砕背景事象除去を適用したカムランド禅におけるニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の探索)

東北大学大学院 理学研究科 物理学専攻 三宅春彦

1 導入
宇宙創成直後、物質と反物質は対称性を持って生成したと考えられている。物質と反物質が非対称な現在の宇宙を作
り出す機構は素粒子・宇宙物理学における最も魅力的な の一つである。解明の の一つがニュートリノのマヨラナ性
(ニュートリノ=反ニュートリノ)で、有力と考えられているシナリオの多くがマヨラナニュートリノを仮定する。例え
ばシーソー機構は他のレプトン、クォークと比べて極めて軽いニュートリノ質量の起源を自然に説明する。同時に重た
い右巻きニュートリノ(NR )の存在を予言し、これは暗黒物質の候補でもある。さらに NR の崩壊を端緒として物質優
勢を作り出す機構(レプトジェネシス模型)も有力視されている。このようにニュートリノのマヨラナ性を検証するこ
とは宇宙の進化史を理解するための不可欠なピースと言える。その唯一現実的な実験手法がニュートリノを放出しない
二重ベータ崩壊 (0νββ 崩壊) の探索である。0νββ 崩壊は極めて稀な事象で、検出器の純化による背景事象低減と多量
の二重ベータ崩壊核を用意することが必須である。

2 KamLAND-Zen 実験
KamLAND-Zen 実験は 136 Xe の 0νββ 崩壊探索実験である。反ニュートリノの観測で実績のある KamLAND 検出
器をアップグレードして観測を行うことで、既存の極低放射能環境を最大限に活用している。図 1 に示す通り、約 1 キ
ロトンの液体シンチレーター検出器の中心部分に Xe を溶解させた液体シンチレーターを保持して観測を行っている。

図 1 KamLAND-Zen 800 検出器の概要

段階的に Xe 量を増加させると同時に検出器の低放射能化を実施し 2016 年には「KamLAND-Zen 400」の結果とし

て、0νββ 崩壊半減期に T1/2
> 1.07 × 1026 yr (90% C.L.)という制限をつけた。これは当時、世界で最も厳しい
制限であった。2019 年 1 月には Xe を倍増した観測「KamLAND-Zen 800」を開始しており、2023 年には最新結果

T1/2
> 2.3 × 1026 yr (90% C.L.)を公表し、前述の世界最高感度を我々自身の手で更新した。本研究では蓄積データ
量を倍増し、最大の背景事象である長寿命核破砕生成物の除去手法の改善を実施し、実験感度改善に取り組んだ。

2.1 背景事象
KamLAND-Zen の支配的な背景事象は 3 つあり、
(1)検出器に使用される薄膜に混入した環境放射線源(214 Bi)、
(2)
ニュートリノを放出する二重ベータ(2νββ )崩壊、(3)宇宙線が Xe 原子核を破砕して生成する核種の崩壊が挙げられ
る。本研究では特に (2)、
(3)に焦点を当てて開発を行った。

2.1.1 ニュートリノを放出する二重ベータ崩壊(2νββ )
2νββ 崩壊が 0νββ 崩壊の観測エネルギー領域(ROI)に染み出すことで背景事象となる。KamLAND では老朽化に
より PMT のゲイン低下が目立っており、一時全体の 20% の PMT が解析に使えない状況となっていた。本研究では
PMT の応答をモデル化することで低ゲイン化した PMT の再活用を可能にし、エネルギー分解能を向上させた。さら
に低下したゲインを回復し、信号とノイズの弁別を改善するためにアンプの導入も行なった。これらの成果で 2νββ 背
景事象をおよそ 16% 削減された。
キセノンの原子核破砕生成物
宇宙線ミューオンにより液体シンチレーターの構成原子核が破砕されると、不安定核を生成することがある。炭素が
破砕されて生成する核種(10 C、 12 B など)は寿命が短いこともあり、遅延同時計測などによる複数の除去手法を確立
できている。他方 Xe が破砕されて生成する核種の一部は数時間から数日程度の寿命を持ち、従来手法での除去が出来
ず KamLAND-Zen 800 の最大の背景事象となっている。Xe の核破砕では放出される中性子数が炭素の場合に比べて
多い点が特徴で、中性子数、中性子との空間相関、ミューオンからの時間差についての尤度関数を定義し、尤度比検定
により識別を行っている。本研究ではより精度良く中性子の位置を再構成するための検出器較正を行い、また低ゲイン
PMT の再活用によって中性子の取得効率を 72.6 ± 0.5% から 74.5 ± 0.4% に改善した。これらの改善により長寿命核
の識別効率は 40.9 ± 6.0% から 50.8+6.4
−5.9 % に改善している。

2.1.2

3 データ解析
本研究ではまず 2019 年 1 月から観測を開始した KamLAND-Zen 800 の 997.1 日分の取得データを用いてデータ解
析を行なった。検出器の老朽化はデータ取得を不安定化させたが、精度良く高頻度で検出器較正を行うことで着実に
データを蓄積した点も本研究の成果である。曝露時間(exposure)は 1867 kg yr となり、先行研究の 1.9 倍に達した。
0νββ 崩壊レートは背景事象を含むモデルをデータにフィットすることで求めた。ベストフィットの結果は 0 事象であ
り、背景事象モデルに対する事象の超過は見られなかった。0νββ 崩壊レートの 90% 信頼度上限を見積もるためにカイ
二乗値のスキャンを実施し、先行研究からのデータの蓄積分に加え、本研究で実施したキセノンの原子核破砕生成物の
除去効率の改善と合わせて、無矛盾の結果を得ることができた。次に過去の観測期間 KamLAND-Zen 400 との結合解
析を行なった。検出器の純化や背景事象除去手法の改善の成果により KamLAND-Zen 800 の実験感度が支配的だがわ
ずかに良い結果を得た。主要な背景事象である長寿命核のレートも同時に測定をしており、FLUKA による予測と良い
精度で一致している。

4 マヨラナ有効質量への制限
半減期に対する制限からマヨラナ有効質量(⟨mββ ⟩)に対する上限を得ることができる。ただし核行列要素のモデルに
よる不定性が含まれる。逆階層領域に ⟨mββ ⟩ を予測するいくつかのモデルがあり、(Phys. Rev. D 86, 013002 (2012),
Phys. Lett. B 811, 135956 (2020), Eur. Phys. J. C 80, 76 (2020))本研究の結果によりこれらのモデルの検証に手が
届きつつある。また Ge や Te を使用した競合実験の結果との比較においても Xe を用いた KamLAND-Zen の優位性が
明確に示すことができた。

5 結論と展望
本研究では KamLAND-Zen800 の約 1000 日分のデータを用いて 136 Xe の 0νββ 崩壊探索を行い、支配的背景事象で
ある 2νββ 崩壊、宇宙線起源の長寿命核の除去の改善に取り組んだ。信号の超過は観測されず、KamLAND-Zen 400 と
800 の結合解析で半減期に対する制限を得た。主要な背景事象である長寿命核破砕生成物のレートも同時に測定され、
FLUKA による予測と無矛盾の結果を得た。現在、機械学習を長寿命核の除去に活用する手法の開発が進んでいる。ま
たミューオンが起こすシャワーの情報の活用、中性子の事象再構成を改善するなどにより長寿命核の識別効率改善の可
能性がある。これらの開発を進めることで KamLAND-Zen の感度向上が期待できる。 ...

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