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大学・研究所にある論文を検索できる 「運動と月経随伴症状の関係 : アスリートと非アスリートを対象とした検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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運動と月経随伴症状の関係 : アスリートと非アスリートを対象とした検討

門馬, 怜子 筑波大学

2022.11.24

概要

【研究の背景】
 近年女性アスリートの活躍できる場が増えている.2021年におこなわれた東京オリンピックでは女子選手の出場率が47.6%と過去最高であったことが報告された.このような活躍の一方で女性アスリート特有の問題も生じている.女性アスリートの抱える問題として,8割は月経に関する問題であることが報告されている.月経に伴う症状として,PMSや月経困難症といった月経随伴症状が挙げられる.月経随伴症状は,一般女性における生活の質の低下やストレスの増大など日常生活に支障をきたしていることが報告されている.また運動習慣がない者は運動習慣がある者と比較して月経随伴症状が悪化するとの報告もある.しかしこれらの研究は,競技スポーツへ参加していない女性を対象とした研究であり,日々高強度トレーニングをおこなっているアスリートを対象とした研究はなされていない.アスリートにおいて,月経随伴症状は心身のコンディションおよびパフォーマンスに影響を及ぼすことが示されている.これまでにアスリートと非アスリートを対象に,競技スポーツへの参加の違いが月経随伴症状に及ぼす影響については明らかとなっていない.また,非アスリートにおいて,ヨガやピラティス,有酸素運動などの運動介入をおこなうことで,月経随伴症状が改善するといったことも報告されているが,対象者の主観に基づく評価であり,客観的な検討はなされていない.さらにアスリートにおいて月経随伴症状はコンディションの低下に影響を及ぼすことが明らかとなっているが,月経随伴症状と運動パフォーマンスとの関連については主観的な評価での検討のみの検討であり,詳細については明らかとなっていない.
 これらの背景から,運動と月経随伴症状の関係性について詳細に検討する必要があると考えた.そこで本研究では,運動と月経困難症の関係について明らかにするために,①競技スポーツへの参加の有無が月経随伴症状に及ぼす影響について明らかにすること,②一過性運動が月経随伴症状に及ぼす影響について明らかにすること,③月経随伴症状と運動パフォーマンスの関係について明らかにすることを目的とした.

【概要および結果】
 本研究では,運動と月経随伴症状の関係について明らかにするために,下記の研究課題を設定し検討をおこなった.

課題1:運動とPMSの関係性の検討
●課題1-1 競技スポーツへの参加の有無がPMSに及ぼす影響の検討
 競技スポーツへの参加の有無がPMSに及ぼす影響について明らかにするために,アスリートと非アスリートを対象に大規模アンケート調査をおこなった.最終解析対象はアスリート399名,非アスリート202名であった.その結果,PMS症状の有症率はアスリートよりも非アスリートの方が高いことが示された.またPMSの要因は,非アスリートでは特定できなかったが,アスリートにおいては睡眠時間,食事,初経年齢が影響していることが示された.

●課題1-2 PMSと運動パフォーマンスの関係
 PMSと運動パフォーマンスの関係について明らかにするために,正常月経周期を有するアスリート16名を対象にPMSが出現する黄体期と消失する卵胞期に,ジャンプパフォーマンステスト(CMJ,RJ)を実施し検討をおこなった.その結果,PMSの有症状数はパフォーマンスとの関連は認められなかったが,PMSの特定の症状(乳房圧痛,不安)を有する者は,症状がない者と比較して,ジャンプテストスコアが低体温期から高体温期にかけて大きく減少していた.したがって,PMSの特定の症状は,運動パフォーマンスの変動と関連する可能性が示された.

課題2:運動と月経困難症の関係性の検討
●課題2-1 競技スポーツへの参加の有無が月経困難症に及ぼす影響の検討
 競技スポーツへの参加の有無が月経困難症に及ぼす影響について明らかにするために,課題1-1のアスリートと非アスリートを対象に大規模アンケート調査をおこなった.最終解析対象はアスリート605名,非アスリート295名であった.その結果,月経困難症の有病率および重度の割合はアスリートよりも非アスリートの方が高いことが示された.また月経困難症の要因は,アスリートにおいては,初経年齢,月経期間,トレーニング時間が影響していること,非アスリートにおいては,月経周期,月経期間が影響していることが明らかとなった.したがって月経困難症の重症化の要因は,アスリートと非アスリートで異なり,対象者の特性に合わせた対応が必要であることが示された.

●課題2-2 競技スポーツへの参加の有無が月経困難症とPGF2αに及ぼす影響の検討
 競技スポーツへの参加の有無が月経困難症に及ぼす影響について明らかにするために,正常月経周期を有し,月経痛の訴えのあるアスリート24名と非アスリート14名を対象に,月経困難症が生じる月経期と症状が消失する卵胞期にPGF2αの測定とVASの評価をおこない検討をおこなった.その結果,アスリートと非アスリートにおける月経期と卵胞期のVASに交互作用は認められず,周期による主効果が認められた.一方でPGF2αは,群間による主効果が認められ,アスリートの方が高い値を示した.したがってPGF2αの変動は主観とは異なる可能性が示された.

●課題2-3 一過性の運動が月経困難症とPGF2αに及ぼす影響の検討
 一過性の運動が月経困難症に及ぼす影響について明らかにするために,正常月経周期を有し,月経痛の訴えのある非アスリート13名を対象に一過性運動をおこなった.本研究では,各月経期に1回,中程度(50%HRmax)と高強度(80%HRmax)の自転車運動をクロスオーバーでおこなわせ,運動前と直後にPGF2αを測定し検討をおこなった.なお本研究では慢性的な運動による影響を除外するために,運動習慣のない女性を対象とした.その結果,運動強度によるPGF2αの変化には交互作用,主効果は認められなかった.本課題では,一過性運動がPGF2αに及ぼす影響は明らかとならなかったため,今後測定ポイントや運動時間や強度,種類を変えた詳細な検討が必要である.

●課題2-4 月経困難症と運動パフォーマンスの関係
 月経困難症が運動パフォーマンスに及ぼす影響について明らかにするために,月経痛の訴えを有するアスリート24名を対象に月経期および卵胞期にSEBT,ジャンプパフォーマンステスト(CMJ,RJ)をおこなった.その結果,ジャンプテストの項目には有意差は認められなかったが,SEBTの左右のPMと左支持脚のPLには有意差が認められた.したがって月経困難症は動的なバランス能力のパフォーマンスの変動と関連することが示された.

【まとめ】
 本研究で得られた知見を下記に示す.
①競技スポーツへの参加の有無が月経随伴症状に及ぼす影響について検討した結果,アスリートよりも非アスリートの方がPMS,月経困難症の有病率や重度の割合が高いことが示された.また要因について検討した結果,アスリートはトレーニングによる影響を受けることが明らかとなり,アスリートと非アスリートで要因が異なることが示された.
②運動と月経随伴症状(月経困難症)との関係についてPGF2αを用いて検討した結果,競技スポーツへの参加(慢性的な影響)はPGF2αに影響を及ぼすが,一過性の運動による影響は示さなかった.
③月経随伴症状と運動パフォーマンスの関係について検討した結果,PMSはジャンプパフォーマンスと関連すること,月経困難症は動的バランス能力と関連することが示された.したがって月経随伴症状はパフォーマンスの変動に影響する可能性が示された.

 本研究で得られた知見は,月経による健康管理を考えていく上で運動習慣のない女性からからトップアスリートまで幅広い女性に向けた重要な情報となり得ると考える.

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