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月経随伴症状の発現と重症度に関連する要因の検討

三ツ橋, 利彩 筑波大学

2023.09.04

概要

〔博士論文概要〕

月経随伴症状の発現と重症度に関連する要因の検討

令和 4 年度

三 ツ 橋 利 彩
筑波大学大学院人間総合科学学術院
スポーツ医学学位プログラム

【背景】
月経困難症と月経前症候群を総称した月経随伴症状は,月経を有する多くの女性におい
て発現し,日常生活にも影響を及ぼすことが報告されている(甲斐村ら, 2014; 渡邊ら, 2011)
ことから,月経随伴症状を改善することで,女性の生活の質が向上することが期待される.
これまで月経随伴症状の発現に関連する要因の検討は多く行われているが(Hu et al., 2020;
Faramarzi et al., 2014; Tomás–Rodríguez et al., 2017 他)
,これらの研究は,それぞれが独立した
報告となっており,有効な予防策の構築には至っていない.月経随伴症状の発現には,いく
つかの要因が絡み合っており,それら複数の要因の影響度について整理する必要がある.ま
た,月経随伴症状との関連性が認められた要因の報告は,海外の女性を対象とした研究によ
るものが多く,月経随伴症状の発現には人種差があることが報告されていることから
(Nicolau et al., 2018)
,先行研究の結果を日本人女性においても適応できるのかは不明であ
る.さらに,月経随伴症状は,女性の日常生活だけでなく,女性アスリートにも影響を与え
る可能性も示唆されているが(Findlay er al., 2020)
,女性アスリートを対象に,月経随伴症
状の発現や重症度に関連する要因について検討した先行研究は極めて少ない.月経随伴症
状の発現には運動習慣の有無が関連していることが報告されていることから(Momma et al.,
2021)
,運動習慣のない女性を対象とした先行研究の結果を女性アスリートのコンディショ
ニング項目として採用できるかは不明である.
そこで本研究では,月経随伴症状の発現や重症度に関連する要因を明らかにすることを
目的とし,研究課題 1 ではシステマティックレビューとメタアナリシス,研究課題 2 では
アンケート調査を実施した.
研究課題 1:月経随伴症状の発現と重症度に関連する要因についてのシステマティックレビ
ューとメタアナリシス

【目的】月経随伴症状の発現および重症度に関連する要因を明らかにすること.
【方法】PubMed および医中誌を用いて,2021 年 1 月までに発表された月経随伴症状の発現
および重症度に関連する要因についての論文を検索した.各論文の質は,Jonna Briggs
Institute critical appraisal checklists tool(JBI)を使用し,JBI スコア≧50%の論文をメタアナリ
シスに含めた.
【結果】論文検索の結果,1,479 件が該当した.1,479 件の表題とアブストラクトを精査し,
1,109 件を除外,370 件の本文を精読し,238 件を除外,最終的に 131 件を採択した.採択論
文 131 件について研究の質を評価した結果,JBI スコア≧50%の論文は 77 件であった.これ
ら 77 件から,月経随伴症状の発現および重症度に関連する要因として,身体特性,月経特
性,生活習慣のデータを抽出し,メタアナリシスを行った.その結果,月経困難症の発現は,
年齢≧20 歳,BMI<18.5,月経期間が長い,月経周期が不規則,月経困難症の家族歴がある,
ストレスレベルが高い,睡眠時間<7 時間,就寝時間が 23 時 01 分以降と関連することが示
唆された.月経困難症の重症度は,BMI<18.5,喫煙習慣と関連することが示唆された.月

経前症候群の発現は,喫煙習慣と関連することが示唆された.
研究課題 2:月経随伴症状の発現と重症度に関連する要因についてのアンケート調査

【目的】1)日本人女性および女性アスリートにおける月経随伴症状の発現や重症度の関連
する要因を明らかにすること,2)運動習慣のない女性と女性アスリートにおける月経随伴
症状の発現や重症度の関連する要因に違いがあるのかを明らかにすること.
【方法】1)運動習慣のない一般女性(以下,運動習慣のない女性)
,2)大学女子サッカー
選手(以下,女子サッカー選手)を対象に,身体特性,月経特性,月経随伴症状,月経随伴
症状の発現に関連する要因についての調査を行った.運動習慣のない女性は,191 名から回
答を回収し,年齢が 30 歳以上の 1 名,妊娠や出産の経験のある 1 名,現在疾患を有してい
る 8 名,データに欠損がある 3 名を除く,178 名を解析対象とした.女子サッカー選手は,
236 名から回答を回収し,妊娠や出産の経験のある 1 名,現在疾患を有している 14 名,デ
ータに欠損がある 1 名を除く,220 名を解析対象とした.
【結果】

月経随伴症状の有症状率
月経前に少なくとも 1 つ以上軽度~重度(重症度 1~3)の症状を有していると回答したの
は,運動習慣のない女性において 97.2%(n = 173)
,女子サッカー選手において,92.7%(n
= 204)であった.月経中に少なくとも 1 つ以上軽度~重度(重症度 1~3)の症状を有して
いると回答したのは,運動習慣のない女性において 100%(n = 178)
,女子サッカー選手に
おいて 97.7%(n = 215)であった.月経前に少なくとも 1 つ以上重度(重症度 3)の症状を
有していると回答したのは,運動習慣のない女性において 44.9%(n = 80)
,女子サッカー選
手において 35.5%(n = 78)であった.月経中に少なくとも 1 つ以上重度(重症度 3)の症
状を有していると回答したのは,運動習慣のない女性において 47.2%(n = 84)
,女子サッカ
ー選手において 41.4%(n = 91)であった.月経前に有している症状の数は,運動習慣のな
い女性において 8.4 ± 4.3 症状,女性サッカー選手において 6.4 ± 4.1 症状であり,女子サッ
カー選手と比較し,運動習慣のない女性で有意に多かった(p<0.001).月経中に有してい
る症状の数は,運動習慣のない女性において 9.3 ± 4.0 症状,女性サッカー選手において 7.7
± 3.8 症状であり,女子サッカー選手と比較し,運動習慣のない女性で有意に多かった(p<
0.001)

月経前に有している重度の症状の数は,
運動習慣のない女性において 1.9 ± 2.9 症状,
女性サッカー選手において 1.3 ± 2.4 症状であり,女子サッカー選手と比較し,運動習慣の
ない女性で有意に多かった(p = 0.047)
.月経中に有している重度の症状の数は,運動習慣
のない女性において 2.0 ± 3.0 症状,女性サッカー選手において 1.4 ± 2.5 症状であり,運動
習慣のない女性と女子サッカー選手において有意な差は認められなかった(p = 0.052)


月経随伴症状の内訳
運動習慣のない女性のうち,月経前に少なくとも 1 つ以上の症状を有している 173 名に
おいて,最も回答数が多かった症状は食欲の変化(80.3%)であり,月経中に少なくとも 1

つ以上の症状を有している 178 名において,最も回答数が多かった症状は腹痛(92.7%)で
あった.月経前に少なくとも 1 つ以上重度の症状を有している 80 名において,最も回答数
が多かった症状は食欲の変化(22.5%)であり,月経中に少なくとも 1 つ以上重度の症状を
有している 84 名において,最も回答数が多かった症状は腹痛(24.2%)であった.
女子サッカー選手のうち,月経前に少なくとも 1 つ以上の症状を有している 204 名にお
いて,最も回答数が多かった症状は食欲の変化(75.5%)であり,月経中に少なくとも 1 つ
以上の症状を有している 215 名において,最も回答数が多かった症状は腹痛(82.3%)であ
った.月経前に少なくとも 1 つ以上重度の症状を有している 78 名において,最も回答数が
多かった症状は食欲の変化(25.5%)であり,月経中に少なくとも 1 つ以上重度の症状を有
している 91 名において,最も回答数が多かった症状は腹痛(16.4%)であった.

月経随伴症状の発現および重症度に関連する要因
運動習慣のない女性において,月経前および月経中に軽度~重度の症状,重度の症状を有
することと有意な関連が認められた項目はなかった.月経中に重度の症状を有することと
有意な関連が認められた項目は,初経年齢,ストレスであった.
女子サッカー選手において,月経前に軽度~重度の症状を有することと有意な関連が認
められた項目は,年齢,ストレスにであった.月経中に軽度~重度の症状を有することと有
意な関連が認められた項目は,年齢,初経年齢であった.月経前および月経中に重度の症状
を有することと有意な関連が認められた項目はなかった.
症状ごとの分析では,運動習慣のない女性において,月経前に重症度の高い症状を有する
ことは,年齢,月経周期,月経日数,睡眠時間,アルコールの摂取,身体活動量と有意に関
連することが示唆された.また,月経中に重症度の高い症状を有することは,年齢,BMI,
初経年齢,月経日数,月経周期,月経随伴症状の家族歴,ストレス,アルコールの摂取,身
体活動量と有意に関連することが示唆された. 女子サッカー選手において,月経前に重症
度の高い症状を有することは,年齢,BMI,月経周期,月経日数,月経随伴症状の家族歴,
ストレスと有意に関連することが示唆された.また,月経中に重症度の高い症状を有するこ
とは,年齢,BMI,月経周期,月経日数,月経随伴症状の家族歴と有意に関連することが示
唆された.
【結論】
月経随伴症状の発現や重症度は,身体特性,月経特性,生活習慣の一部の項目と関連が認
められた.運動習慣のない女性と女性アスリートにおける関連要因を比較した結果,身体特
性,月経特性は,関連要因が類似し,生活習慣は,関連要因が異なる可能性が示唆された.
このことから,日頃の運動習慣の有無により月経随伴症状に対する適切な対策を講じる必
要があることが確認された.月経随伴症状は,月経を有する多くの女性において発現し,日
常生活だけでなく,女性アスリートのパフォーマンスへの影響も示唆されているが,有効な
予防策の構築には至っていない.したがって,月経随伴症状の発現に関連する要因について
の知見は,月経随伴症状を有する女性に対する健康支援や女性アスリートにおける女性特

有のコンディショニング項目の確立に向けて重要な指針となり得ると考えられる.今後は,
月経随伴症状に対する有効な予防策を構築するために,月経随伴症状の発現や重症度と関
連が認められた要因を改善し,日常生活やパフォーマンスへの影響が変化するのかを検討
することで,より女性の健康を支援するために有益な知見が得られると考えられる.
(3940/4000 字)

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