日本の高齢者における入浴、転倒、誤嚥による事故死の最新動向:長野県との比較
概要
Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023
日本の高齢者における入浴、転倒、誤嚥による事故死の最新動向:長野県との比較
石澤美代子、平田治美(松本大学人間健康学部健康栄養学科)
日本の高齢者における入浴、転倒、誤嚥による事故死の最新動向:
04-6
青木雄次(松本大学大学院健康科学研究科)
長野県との比較
キーワード: 不慮の事故死、高齢者、浴槽内溺死、平面転倒死、食物誤嚥死
石澤美代子、平田治美(松本大学人間健康学部健康栄養学科)
青木雄次(松本大学大学院健康科学研究科)
要旨:厚生労働省から発表されている不慮の事故死の
2001 年から 2021 年の 5 年毎の変化について
キーワード:
不慮の事故死、高齢者、浴槽内溺死、平面転倒死、食物誤嚥死
考察した。30~44
歳、45~64 歳、65~79 歳と 80 歳以上の年齢階層別死者数についてみると、浴槽
内溺死、平面転倒死、食物誤嚥死は
65 歳以上の高齢者が大半を占め、平面転倒死では
80 歳以上の
要旨:厚生労働省から発表されている不慮の事故死の
2001 年から 2021 年の 5 年毎の変化について考
割合が大きくなっていた。10
2 死因
察した。30 ~ 44 歳、45 ~ 64万人当たりの頻度でみると、食物誤嚥死は減少しており、他の
歳、65 ~ 79 歳と 80 歳以上の年齢階層別死者数についてみると、浴槽
では、80
歳以上の平面転倒死が 202165年で増加していた。2021
年の公表データによると、全国に比
内溺死、平面転倒死、食物誤嚥死は
歳以上の高齢者が大半を占め、平面転倒死では
80 歳以上の割
合が大きくなっていた。10 万人当たりの頻度でみると、食物誤嚥死は減少しており、他の 2 死因では、
べ長野県では、溺死及び溺水による事故死の割合が大きい傾向にあり、注目すべき点と思われた。
80 歳以上の平面転倒死が 2021 年で増加していた。2021 年の公表データによると、全国に比べ長野県
項目を全国と比較して表 1 に示した。全国では
A.目的
では、溺死及び溺水による事故死の割合が大きい傾向にあり、注目すべき点と思われた。
転倒転落死、長野県では溺死の割合が大きい傾
消費者庁は、高齢者の不慮の事故死を死因別
に比較し、転倒・転落、誤嚥等の不慮の窒息、
A.目的
不慮の溺死及び溺水の死者数が、交通事故や自
消費者庁は、高齢者の不慮の事故死を死因別に
向がみられ、65 歳以上で差がより大きかった。
転倒転落死、長野県では溺死の割合が大きい傾
D.考察
向がみられ、65 歳以上で差がより大きかった。
然災害による死者数より多く、増加傾向にある
比較し、転倒・転落、誤嚥等の不慮の窒息、不
高齢者の主な不慮の事故死の実人数は、2001
D.考察
慮の溺死及び溺水の死者数が、交通事故や自然
として、2019
年「みんなで防ごう高齢者の事
災害による死者数より多く、増加傾向にあると
故!」という注意喚起の情報発信を行っている
高齢者の主な不慮の事故死の実人数は、2001
年
年から
2021 年において、交通事故死以外増加
から 2021 年において、交通事故死以外増加傾向で
傾向であったが、人口高齢化の影響も示された。
1)して、2019
あったが、人口高齢化の影響も示された。不慮の
不慮の溺死及び溺水の主な死因となっている
溺死及び溺水の主な死因となっている浴槽内溺死に
浴槽内溺死に関し、入浴中の熱中症から意識混
関し、入浴中の熱中症から意識混濁による浴槽内
濁による浴槽内溺水が主な原因であるとの報
溺水が主な原因であるとの報告があり 2)、全国に比
告があり 2)、全国に比べ長野県で溺死者が多い
べ長野県で溺死者が多い傾向にあったことは注目す
傾向にあったことは注目すべき点と思われた。
べき点と思われた。
年「みんなで防ごう高齢者の事故!」
。そこで、それら事故死の最近の動向の調査と
という注意喚起の情報発信を行っている 1)。そこ
長野県との比較を行った。
で、それら事故死の最近の動向の調査と長野県
B.方法
との比較を行った。
政 府 統 計 の 総 合 窓 口 ( e-Stat: https://www.eB.方法
stat.go.jp/)より、2001
年から 2021
年における
政 府 統 計 の 総 合 窓 口(e-Stat:
https://www.
5e-stat.go.jp/)
年毎の不慮の事故死のデータを得た。死因の
よ り、2001 年 か ら 2021 年 に お け
E.利益相反
E.利益相反 利益相反なし。
る 5 年毎の不慮の事故死のデータを得た。死因
主なものについて、ここでは交通事故死、平面
の主なものについて、ここでは交通事故死、平
転倒死、浴槽内溺死、食物誤嚥死と表現した。
利益相反なし。
F.文献
F.文献
1)消費者庁.
みんなで防ごう高齢者の事故!
面転倒死、浴槽内溺死、食物誤嚥死と表現した。
C.結果
C.結果
図 1 に示すように、交通事故死の各年齢階層
図 1 に示すように、交通事故死の各年齢階層
の人数と 10 万人当たりの頻度は、ともに減少
の人数と 10 万人当たりの頻度は、ともに減少し
していた。一方、浴槽内溺死、平面転倒死、食
ていた。一方、浴槽内溺死、平面転倒死、食物
物誤嚥死は、65
歳以上が大半を占め、平面転倒
誤嚥死は、65 歳以上が大半を占め、平面転倒死
1)
消費者庁
. みんなで防ごう高齢者の事故!News
News
Release
2019 年 12 月 18 日.
Release 2019 年 12 月 18 日.
2) Suzuki M, Shimbo T, Ikaga T, Hori S. Incidence
2)
Suzuki M, Shimbo T, Ikaga T, Hori S. :
and characteristics of bath-related accidents.
Incidence and characteristics of bath-related
Intern Med 58: 53-62, 2019.
accidents. Intern Med 58: 53-62, 2019.
死では
歳以上の割合が大きくなっていた。
では 80 80
歳以上の割合が大きくなっていた。それ
ら 3 死因の実人数は、全経過で増加傾向であった。
それら
3 死因の実人数は、全経過で増加傾向で
10
万人当たりの頻度でみると、食物誤嚥死は減
あった。10 万人当たりの頻度でみると、食物誤
少しており、他の 2 死因では、80
歳以上の平面
嚥死は減少しており、他の
2 死因では、80
歳以
転倒死が 2021 年で増加していた。
上の平面転倒死が 2021 年で増加していた。
長野県については、不慮の事故死の小項目の
長野県については、不慮の事故死の小項目の
データが公表されていないため、事故死の上位
データが公表されていないため、事故死の上位
項目を全国と比較して表 1 に示した。全国では
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信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. 1, August 2023
Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023
図 1.全国の不慮の事故死 4 大死因の総死者数と 30~44 歳、45~64 歳、65~79 歳と 80 歳以上の
年齢階層別死亡数。2001 年~2021 年まで 5 年毎にその死亡数と 10 万人当たりの頻度として示す。
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