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大学・研究所にある論文を検索できる 「電気インピーダンス測定による低温調理食肉の熱変性過程の捕捉に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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電気インピーダンス測定による低温調理食肉の熱変性過程の捕捉に関する研究

久本 高央 広島大学

2022.03.03

概要

近年,低温調理による食肉の調理が家庭でも広く行われるようになり,裾野が広がってきている.低温調理とは比較的低温である60℃から70℃程度で主に食肉を長時間加熱することにより,食肉の柔らかさや旨味を損なわずに調理する手法である.一般的には,食肉をパウチなどの袋に入れ湯煎で長時間加熱するだけの手法であり,技術を必要とせず,放置することで調理できるため非常に簡便であることも普及の一助となっている.焼く,茹でるなどの従来の調理法では比較的高温(90℃以上)で調理すると,過熱状態になった部分はタンパク質が過度に変性し水分が抜け硬くなってしまう.もちろん,低温調理のデメリットもあり,高温で加熱した際の香ばしさはなく,水分が残ることにより臭みが抜けにくいことや,殺菌不足による食中毒のリスク,低温で十分に殺菌するため調理時間が長いといった点があげられる.しかし,これらのデメリットを含んだ上でも新しい調理法として一般家庭にまで普及しつつある.

低温調理も含め食肉の加熱調理では,加熱すると熱反応が起こり,含まれる成分によって食肉中において様々な変化が起こる.その中でも大きな部分を占める反応がタンパク質の熱変性である.この熱変性は加熱調理の中心となるものであるが,複雑な反応で構成されており全容を明らかにすることは難しい.このタンパク質の熱変性の状態を捉える手法としては,加熱する温度とその熱を与えた時間によるものが一般的であり,その中でも示差走査熱量測定(DSC)を使用し与えた熱量とそれに対する比熱の変化を捉えるといった手法がよく用いられている.

本研究では,低温調理過程のタンパク質の熱変性の捕捉に電気インピーダンス(以下インピーダンス)の利用を検討した.食品に対するインピーダンスの計測は非破壊の計測手法として,電気物性計測に分類され,分光分析等とともに食品の内部の状態を把握する評価技術として広く利用されており,例えば,畜肉,魚介類の鮮度及び脂肪量の計測,農産物の品質評価などに電気インピーダンス法が用いられ,それらの研究成果も多数報告されている.

具体的には,豚肉をパウチに入れ一定温度(65℃,75℃,85℃,95℃)で長時間加熱し,パウチ内の豚肉のインピーダンスの経時変化を測定した.併せて,インピーダンス測定と同条件で調製した試料に対して,DSC測定及び材料試験機を用いた硬さの測定を行い,インピーダンスの変化とタンパク質の熱変性及び硬さの関係を整理した.これらの結果から,低温調理中の豚肉の熱変性に伴う状態変化についてインピーダンス測定による捕捉の可能性を検討した.その結果,食肉の加熱前後でインピーダンスに変化があることを見出し,これを用いて低温調理中の食肉の状態を評価することができる可能性が示唆された.