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大学・研究所にある論文を検索できる 「ORMDL3/GSDMB遺伝子多型が成人喘息に与える影響の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ORMDL3/GSDMB遺伝子多型が成人喘息に与える影響の検討

北澤, 晴奈 筑波大学

2021.08.03

概要

目 的:
喘息において遺伝的要因は主要な背景因子であるが、遺伝要因と環境要因とが複雑に関与し発症に至る。また、小児喘息患者の一部は寛解せず成人に持ち越す。染色体 17q21 領域は日本人を含めた複数集団において小児喘息との関連が示されている。同領域内の ORMDL3/GSDMB 遺伝子変異は小胞体ストレス応答やスフィンゴ脂質代謝の変化、細胞死を介して喘息発症に関与する可能性が報告されているが、明確な機序は明らかではな い。また、一貫して小児喘息との関連が示されているが、成人喘息を対象とした報告は限られる。本論文では喘息における GWAS を用いた初めての報告で 17q21 領域において最も関連が強く、かつ ORMDL3/GSDMB 遺伝子の発現に関与する rs7216389 に注目し、成人喘息に与える影響、血清総IgE およびアレルギー感作との関係を検討した。さらに、 ORMDL3/GSDMB 遺伝子同様に GWAS で小児喘息との関連が報告され、ライノウイルス C 型(RV-C)の易感染性・増殖と関与する CDHR3 遺伝子多型との相互作用について検討した。

対象と方法:
喘息患者と健常者からなる 3 つの独立した日本人成人集団(筑波コホート 1:健常者 967 名、喘息患者 242 名、筑波コホート 2:健常者 513 名、喘息患者 605 名、北海道コホート:健常者 929 名、喘息患者 613 名)を対象とした。第 2 章では、まず健常者と喘息患者をそれぞれ吸入抗原に対するアレルギー感作の有無で 2 群にわけて、4 群間の血清総 IgE値(対数変換)の違いを一元配置分散分析を用いて解析した。次に、rs7216389 と喘息との関連を発症年齢ごと、血清総 IgE 値ごとに分けて、ロジスティック回帰分析を用いて検討した。また、rs7216389 とアレルギー感作、血清総IgE(対数変換)との関連をそれぞれロジスティック回帰分析、一般線形モデルを用いて解析した。第 3 章では、主に発症年齢と肺機能により分類される成人喘息クラスターを用いて、rs7216389 とクラスターとの関連を多項ロジスティック回帰分析にて解析した。さらに RV-C 感受性が異なると考えられる CDHR3 遺伝子多型(rs6967330)のジェノタイプによって集団を分類し(GG 群または AG+ AA 群)、rs7216389 が喘息発症に与える影響をロジスティック回帰分析で検討した。ダニ、花粉、ペット皮屑、カビなどの吸入抗原 14 個に対する抗原特異的 IgE 抗体が少なくとも一つ以上の抗原に対して陽性の場合、アレルギー感作陽性またはアトピーと定義した。

結 果:
第 2 章では、喘息患者では健常者と比べてアレルギー感作の有無に関わらず、血清総 IgE 値が有意に上昇していた(P < 1.0×10-10)。次に、ORMDL3/GSDMB 遺伝子の発現亢進と関連する rs7216389 の T アレルが、3 つの集団のメタ解析において若年発症および血清総IgE 高値の特徴を有する成人喘息と関連した。さらに、健常者のみでの解析、および健常者と喘息患者を合わせた解析いずれにおいても、rs7216389 は喘息やアレルギー感作の有無とは独立して血清総 IgE 値上昇と関連していた(P < 0.0005)。一方、アレルギー感作との関連はなかった(P > 0.1)。

第 3 章では、健常者 2331 名、喘息患者 1266 名を用いた解析において、rs7216389 のTアレルが若年発症、アトピー、高血清総 IgE、軽度の気流閉塞を特徴とする成人喘息クラスターと関連した(OR = 1.51, P = 0.0010)。さらに健常者 2321 名、喘息 1376 名を用いた解析において、rs6967330 においてライノウイルス高感受性ジェノタイプ(AG+AA)を有する群では 10 歳以下に発症した成人喘息のみならず(OR = 2.31, P = 0.0064)、21 歳以降に発症した成人発症喘息においても rs7216389 は喘息発症と関連した(OR = 1.38, P = 0.043)。ライノウイルス非感受性ジェノタイプ(GG)を有する群では rs7216389 のT アレルは 10 歳までに発症した若年発症成人喘息のみと関連した(OR = 1.47, P = 0.0076)。

考 察:
喘息の病態において、抗原特異的IgE 抗体による獲得免疫系に加え、グループ 2 自然リンパ球を中心とした抗原非特異的な 2 型自然免疫系の活性化が重要な役割を果たしてい る。喘息患者ではアレルギー感作の有無に関わらず血清総 IgE 値が上昇しており、これ は、一般的な吸入抗原に対する IgE 感作だけではなく、感染や喫煙などの外的要因、さらには喘息を発症した結果として生ずる気道のバリア障害による抗原非特異的な 2 型自然免疫の活性化を反映した結果である可能性がある。特に ORMLD3/GSDMB 遺伝子は吸入抗原に対するアレルゲン特異的IgE 産生を介してではなく、ウイルスやたばこ煙などの刺激による 2 型自然免疫の活性化を介して喘息の発症に寄与する可能性が考えられた。さら に、ORMDL3/GSDMB 遺伝子は成人喘息の中でも若年発症症例と関連し、同遺伝子の影響で発症した小児喘息は呼吸機能維持・血清総IgE 高値・アトピーを特徴とする成人喘息に持ち越す可能性が示唆された。特に CDHR3 遺伝子多型によってライノウイルスの影響を受けやすい遺伝的背景を有する群においては、ORMDL3/GSDMB 遺伝子が成人以降の喘息発症にも関連する可能性が示唆された。

結 論:
ORMDL3/GSDMB 遺伝子の機能的遺伝子多型(rs7216389)が若年発症、または高 IgE値を特徴とする成人喘息と関連することを示した。さらに、同多型は吸入抗原に対するアレルギー感作には関連していないが、血清総 IgE 値上昇と強く関連していた。また、 ORMDL3/GSDMB 遺伝子の影響で発症した小児喘息は軽度気流閉塞・アトピー・血清総 IgE 高値を特徴とする成人喘息に持ち越す可能性が示唆された。さらに、CDHR3 遺伝子多型によってライノウイルス感染の影響を受けやすい遺伝的背景を有する群においては、 ORMDL3/GSDMB 遺伝子は成人以降の喘息発症にも関連している可能性が示唆された。

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