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大学・研究所にある論文を検索できる 「リン脂質フリッパーゼATP11Aの生理機能の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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リン脂質フリッパーゼATP11Aの生理機能の解明

落合, 由貴 大阪大学

2021.03.24

概要

真核生物の細胞膜は脂質二重層で構成され、リン脂質は二層間で非対称に分布する。アミノリン脂質であるホスファチジルセリン (PS) やホスファチジルエタノールアミン (PE) は細胞質に面する内層に限局し、ホスファチジルコリンやスフィンゴミエリンは主に外層に分布する。アミノリン脂質の非対称分布は、PSやPEを外層から内層へ移層する酵素、リン脂質フリッパーゼによって樹立・維持される。当研究室では、P4型ATPaseファミリーに属するATP11AとATP11Cを哺乳類の細胞膜で機能するフリッパーゼとして同定した。ATP11AとATP11Cは10回膜貫通型の膜タンパク質であり、サブユニットであるCDC50Aと結合することで細胞膜に局在し、PSやPEを外層から内層へ移層する。ATP11Cは肝臓やB細胞に強く発現しており、その遺伝子欠損マウスは、B細胞欠損症、胆汁鬱滞などの表現型を示す。一方、ATP11Aの遺伝子欠損マウスは報告されておらず、その生理機能は不明である。そこで本研究は、ATP11Aの生理機能の解明を目的としてATP11A 遺伝子欠損 (ATP11A-/-) マウスを解析した。

ATP11A-/-マウスは、胎生致死であり、胎生期 (Embryonic day; E) 14.5日以降に死亡した。ATP11Aは胎仔心臓、とくに心筋細胞に強く発現していた。それに対応して、E13.5 ATP11A-/-マウスは心室壁の菲薄化や心室中隔部分欠損といった心臓の形態異常を示した。そこで、心筋細胞特異的ATP11A-/- (αMHC-Cre+ATP11Aflox/flox) マウスを作製したところ、この変異マウスは、心臓の形態異常を呈さず正常に発育した。最近、胎生致死となる多くの遺伝子欠損マウスが、胎盤の形成不全を起こすことが報告されている (Nature 555, 463–468, 2018)。実際、胎盤ではATP11Aが高発現していた。そこで、胎盤葉上層細胞 (Epiblast) 特異的なATP11A遺伝子欠損 (Sox2-Cre+ATP11Aflox/flox) マウスを樹立したところ、マウスは正常に発育した。ATP11A遺伝子を欠損した胎盤は、ラビリンス層が未発達であり、それらを構成する合胞体栄養膜細胞の異形成や多数の死細胞が観察された。

以上より、ATP11A-/-マウスの心臓の形態異常は、胎盤の発達不全に起因すると結論した。ATP11Aは胎盤形成、とりわけ合胞体栄養膜細胞の形成・維持に重要な役割を持つ可能性が示唆された。今後、合胞体栄養膜細胞の形成とATP11Aのフリッパーゼ機能の関連を検討する必要があろう。

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