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大学・研究所にある論文を検索できる 「Investigation of Groin Pain Incidence among Male Soccer Players」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Investigation of Groin Pain Incidence among Male Soccer Players

萩原, 麻耶 筑波大学

2023.09.04

概要

〔博士論文概要〕
Investigation of Groin Pain Incidence among Male Soccer Players
令和 4 年度
筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学専攻








1. 研究背景
スポーツ傷害調査は, van Mechelen et al. (1992) により提唱された 4 段階の傷害予
防戦略の第 1 段階に位置し, 傷害の実態の把握がスポーツ傷害予防へとつながっていく.
傷害調査は, International Olympic Committee や各種競技団体から出されている合意声
明に基づき調査を実施することが推奨されており, 合意声明に基づく調査を実施すること
で, 他のスポーツ競技との比較や傷害発生の実態を把握することが容易となり世界中で実
施されている. しかし, 傷害調査の問題点として, time loss injury などの定義に至らな
い疼痛や機能制限などが把握できておらず, 実際に発生している傷害の全体を表すことが
できないことが挙げられる. 競技者のスポーツ傷害をより詳細に検討するためには, 練習
や試合における疼痛の状況やコンディショニングを調査する必要がある.「疼痛」は傷害
発生の初期症状であることが多く (Bahr, 2009; 眞下ら, 2016), 傷害調査に加えて調査
することで, 傷害発生の全体を捉えることができる.
サッカー競技は世界中で最も競技者が多く, 傷害調査も数多く実施され, time loss
injury の定義を用いた調査により, 傷害発生率, 傷害発生部位, 傷害の種類などが明らか
にされている. しかし, time loss を伴わない傷害調査では, 股関節での傷害発生が最も
多く, 再発の多い部位であり, 疼痛継続日数も長期化することが示され, サッカー選手に
おいて重要な問題となっている (Weir et al., 2015; Langhout et al., 2018;
Hagiwawra et al., 2022). 2014 年に開催された Doha 会議により, 股関節・鼠径部の痛み
の総称が「グロインペイン」と定義され, 臨床所見を中心とした分類により診断が統一さ
れた. これ以降, グロインペインの調査が同定義を利用し実施されるようになり, 他の研
究との比較検討が可能となった. グロインペインは疼痛を主訴とし, 複数の要素が複合的
に関与するため, 診断や治療が難しいとされている. 特徴として男性での発症が多く, 既
往歴のある選手の半数以上が再発し, 疼痛継続期間が長く, 発生率が競技レベルによって
変わらないことが明らかとなっている (Holmich et al., 2014; Haroy et al., 2017;
Esteve et al., 2019; Cezarino et al., 2020). しかしながら, サッカー選手における

グロインペインの発生実態, 特に年代別の発生状況が十分に検討されていない. また, グ
ロインペインにおける痛みに関する調査は少なく, 年代別の痛みの実態も明らかではな
い. 有効な予防策を確立するためにも, グロインペインを初めて既往する時期を明確にす
ることが重要であると考えられる.
そこで, 本研究では, 男子サッカー選手におけるグロインペインの発生状況を, 縦断的
に検討し, 初発の年齢を明らかにすることを目的とし, 以下の課題を設定した.
研究課題 1:

Investigation of groin pain in male college soccer players
among one season

研究課題 2:

Characteristics of groin pain among junior high school,
high school, and university male soccer players: Application
of the Copenhagen hip and groin outcome score (HAGOS)

2.

各研究課題の概要

2–1. Investigation of groin pain in male college soccer players among one season
(研究課題 1)
専門学校に所属するサッカー選手を対象に, 1シーズンを通したグロインペインの発生
実態を前向きに調査し, 発生状況を明らかにすることを目的とした. 対象者は 39 人のフ
ィールドプレーヤーで, そのうち 31 人 (79.4%) がグロインペインの既往歴を有してい
た. 高校生で初発した選手が 23 人 (74.2%) で最も多く, 次いで中学生での初発が 7 人
(22.6%) であった. 調査期間中に発症した選手は 17 人 (43.5%) で, 全ての選手が高校生
で初発し, 高校 2 年生での既往が 9 人と最も多かった. プロ選手のシーズンを通してのグ
ロインペインの発症割合が 49% (Mosler et al., 2015) であり, 同程度であった. また,
本研究で発症した 17 人中, 10 人 (58.8%) がシーズン中に再発した. 再発した選手の多く
は同シーズン中に何度も再発していることから, 初発時に適切な対応策を実施すること
で, 再発を防ぐことができたのではないかと推察した. また, time loss に至らないグロ
インペインが 78.0%で, 多くの選手が痛みを抱えてプレーしていることが示唆された.
Doha 会議により分類されたグロインペインの原因関連部位でみると, 内転筋群での発症が
56.6%とシーズンを通して最も多く, 先行研究 (Holmich et al., 2014; Whittaker et
al., 2015; Mosler et al., 2018) を支持する結果となった. 本研究では, 試合期に鼠径
部でも内転筋群と同数の 13 件の発生が報告され, キック動作中の負荷の高い内転筋群だ
けでなく, 腹筋群の関与が大きい鼠径部痛に対する予防策の検討も必要であることが示唆
された. 再発率が高く, 長期間に渡り痛みを抱えながらプレーしている選手が多いことか
ら, 予防策の適切な介入時期を明らかにする必要があると考えられる. また, 調査期間中
にグロインペインを発症した選手が全員高校生で初発していたことから, 中学生や高校生
での発生状況を調査し, 初発時期を明らかにする必要があると考えられた.

2–2. Characteristics of groin pain among junior high school, high school, and
university male soccer players: Application of the Copenhagen hip and groin
outcome score (HAGOS)(研究課題 2)
グロインペインはサッカー選手の多くが抱える問題であり, 長引く痛みや機能制限, 再
発率の高さ, 競技レベル関係なく同等に発症するなどの特徴は捉えられてきているが, グ
ロインペインを抱える選手の日々のコンディショニング状況はあまり調査されていない.
そこで, 中学生, 高校生, 大学生の男子サッカー選手を対象に, グロインペインに関する
後ろ向き調査を実施し, 年代別のグロインペインの初発時期を明らかにすることを目的と
した. 調査内容は, 股関節の傷害および痛み, 股関節以外の過去 1 年以内の傷害発症状
況, および HAGOS とした. HAGOS は, 2014 年に開催された Doha 会議で推奨されている評
価方法で, 若年から中年期のスポーツ選手のグロインペインによる症状や機能制限を評価
でき, 長期間継続するグロインペインを抱える選手にも有用な調査方法である. HAGOS を
用いることで, 日々のコンディショニング調査方法としての活用ができ, グロインペイン
による症状や機能制限の状態を把握することができる. 本研究の対象者は, 中学生 205
人, 高校生 204 人, 大学生 205 人で, 自記式質問紙による調査を実施した. グロインペイ
ンの既往歴を持つ対象者は 614 人中 302 人 (49.3%) であり, 中学生で 93 人 (45.4%), 高
校生で 98 人 (48.0%), 大学生で 111 名 (54.4%)となり, 年代間における有意差は見られ
なかった. 初発の割合が最も高かった学年は高校 2 年生 (21.1%) で, 次いで高校 1 年生
(18.3%), 中学 1 年生 (17.4%), 中学 2 年生 (15.9%) の順であった. 最も初発の割合が高
かった高校生では, 1 週間あたりの練習時間が中学生と大学生より有意に長く, 試合時間
も中学生の 60 分から, 80 分または 90 分へと延長される. 先行研究でも, 17 歳での傷害
発生率が高く, 理由の1つとして, 試合での exposure hours が長いことが挙げられ, そ
れに伴う身体負荷の増加が要因であると示されている (Cezarino et al., 2020). また,
高校生に次いで初発の割合の高かった中学生では, サッカーボールのサイズやピッチのサ
イズが正規のサイズになり, 競技者数が 8 人制から 11 人制へと変わることに加え, 試合
時間も小学生の 40 分から 60 分へと変更され, 用具とプレー環境が大きく変化する. さら
に, 中学生の年代では, 急激な成長により骨格筋の不均衡や, 急激な筋出力の増加, キッ
ク動作時の内転筋群への負荷が増大することから, 股関節や鼠径部の筋や腱への負荷が高
まり傷害が増加すると考えられる. そのため, 発育期にあたる年代での予防策の介入が必
要であると考えられる. HAGOS の調査結果は, スコアの合計が 100 点満点で, 100 点では
グロインペインの症状や機能制限のないことを示し, 0 点では重度の痛みと機能制限があ
ることを示している. HAGOS のスコアを年代間で比較したところ, 中学生の activities
of daily living (ADL) の項目で, 高校生と大学生よりも中学生で有意に低い結果となっ
た. ADL では階段をのぼる, かがむ, 車の乗り降りなど, 日常動作での股関節の痛みや機
能制限に関して質問されていることから, 中学生で既往歴のある選手の多くは, 日常生活

から競技に至るまで, 痛みや機能制限を抱えていることが示唆された. また, グロインペ
インの既往歴がないと回答している選手においても, HAGOS のスコアが 100 点ではなく,
傷害調査では明確にできない症状や機能制限を抱えている選手がいることが示唆された.
3. まとめ
本研究では, 研究課題 1 として, 1 シーズンを通したグロインペインの発生実態を前向
きに調査した. その結果, 既往歴のある選手のみがグロインペインを発症し, その後の再
発率も高かった. また, 調査期間中に発症した全ての選手の初発時期が高校生で, 高校 2
年生での初発が最多であった. そこで, 研究課題 2 では, 中学生・高校生・大学生の男子
サッカー選手を対象に, グロインペインに関する後ろ向き調査を実施し, グロインペイン
の初発の時期を調査した. その結果から, 小学 5 年生から高校生までの発育期にあたる時
期に初発割合が増える傾向が示され, 高校 2 年生での初発割合が最も多かった. 以上の研
究を通じて, グロインペインの初発時期が明らかになり, その後の再発割合が高いことか
ら, グロインペインを発症させないような予防策が重要であると考えられた. そのために
は, 発育期から予防プログラムを提供する必要があり, 当該世代の指導者やトレーナーに
対して, 傷害予防プログラムやコンディショニングプログラムを提供できるよう, 予防策
を確立していく必要があると考えられる. ...

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