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大学・研究所にある論文を検索できる 「中高年発症喘息およびCOPDのリスク因子の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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中高年発症喘息およびCOPDのリスク因子の検討

重政, 理恵 筑波大学

2022.11.24

概要

目的:本研究では、複雑(complex)で不均一(heterogeneous)な病態である慢性炎症性気道疾患(成人喘息およびCOPD)の背景にあるリスク因子を明らかにすることを目的とし、3つの研究を行った。一つ目の研究(第2章)では、特定のIgE感作パターンが成人喘息発症に与える影響を検討した。二つ目の研究(第3章)では、ライノウイルス-Cの受容体であり、小児重症喘息の発症リスク因子であるCDHR3遺伝子多型が中高年発症の慢性炎症性気道疾患(成人喘息とCOPD)に与える影響をアトピーの有無(第1節)とアトピーになりやすい遺伝的体質(第2節)に着目して検討した。三つ目の研究(第4章)では、粘液線毛クリアランス障害を引き起こす原発性線毛不全症候群(Primary Ciliary Dyskinesia: PCD)の感受性遺伝子群が影響する喘息フェノタイプを探索した。

対象と方法:第2章: 2008年に筑波メディカルセンター病院の人間ドックを受診した健康な日本人成人集団1,523名を対象とした後方視的観察コホート研究を行った。調査開始時に吸入アレルゲンに対するアトピーのパターンによって対象集団を4つのIgE感作パターンに分類し、2018年までの10年間に新規に喘息を発症した集団(81名)と発症しなかった集団(1,271名)で喘息発症とIgE感作パターンとの関連検討を行った。第3章第1節: 健常者集団1,523名を対象とした後方視的観察コホート研究を行った。2018年までの10年間に新規に喘息あるいはCOPDを発症した集団(103名)と発症しなかった集団(1,260名)でCDHR3遺伝子多型rs6967330が成人発症の慢性炎症性気道疾患へ与える影響をアトピーの有無に着目して検討した。第3章第2節: 第1節と同じ集団において、アトピーになりやすい遺伝的体質の指標となるatopy-genetic risk score(GRS)を計算し、2018年までの10年間に新規に喘息あるいはCOPDを発症した集団(103名)と発症しなかった集団(1,257名)でCDHR3遺伝子多型rs6967330が成人発症の慢性炎症性気道疾患へ与える影響をアトピーになりやすい遺伝的体質に着目して検討した。第4章: 3つの成人日本人集団(健常者2,203名、喘息患者1,225名)を対象としたケースコントロール研究を行った。喘息と同様に粘液線毛クリアランスの障害をきたすPCDの発症に関連する5つ遺伝子領域の12個の一塩基多型(SNP)を用いてPCD-GRSを計算し、喘息集団においてPCD-GRS、発症年齢と対標準一秒量の3因子によるTwo step cluster分析を行った。

結果:第2章: ダニに対する強い感作があり血清総IgE値が高い感作パターンが成人喘息発症と有意に関連していた(HR2.07 [95%CI 1.05-4.06], P=0.035)。第3章第1節: CDHR3遺伝子多型とアトピーとの間に有意な交互作用を認め(P for interaction=0.0056)、既存のアトピー陽性者においてCDHR3遺伝子多型は成人以降の喘息やCOPDの発症リスク因子であった(Aallele: HR2.98[1.63-5.44], P=0.00038)。第3章第2節: CDHR3遺伝子多型とatopy-GRSの間に有意な交互作用を認めた(P for interaction=0.0082)、遺伝的にアトピーになりやすい体質の集団においてCDHR3遺伝子多型は成人期の喘息やCOPD発症のリスクであった(Aallele: HR3.61[1.86-7.01], P=0.00014)。第4章:クラスター解析によってPCD-GRSが健常者に比して有意に高いクラスターと有意に低いクラスターが同定された。これらのクラスターは、PCD-GRSの多寡にかかわらず中高年発症(発症年齢中央値49-51歳)で、正常肺機能(平均%FEV185.77-93.63%)、アトピーの割合が少ない(平均アトピー有病率56.4-58.9%)といった類似した特徴を示した。また、これらのクラスターは、PCD関連遺伝子の中でも特にOuter dynein armのコンポーネントであるDNAH5遺伝子の肺における発現量に影響を及ぼすSNP(eQTL)と強く関連していた。

考察:ダニに対する強い感作と血清総IgE高値によって特徴づけられた感作パターンが成人喘息発症のリスク因子であるという結果と、アトピー陽性者やアトピーになりやすい遺伝的体質を有する集団においては、成人期においても遺伝的にライノウイルス-Cへの感受性が高いCDHR3遺伝子多型のリスクアレル保有が成人喘息やCOPDの発症リスク因子であるという結果からは、成人喘息やCOPD発症の高リスク集団の拾い上げと、それらの集団へのアレルゲン回避やウイルス感染の予防が発症予防に役立つ可能性を示唆している。また、喘息のみならずCOPDにおいてもアレルゲン回避の重要性が示されたと考える。3つ目の研究(第4章)で同定されたクラスターのように、病態の背景に線毛機能障害が示唆される症例では、喘息の標準的な治療だけでなく線毛運動賦活作用や好中球炎症抑制作用のある少量マクロライド療法の使用を検討する余地があると考える。

結論:ダニに対する強い感作や血清総IgE高値は成人発症喘息のリスク因子であり、アトピー陽性やアトピーになりやすい遺伝的体質の集団では、成人期においてもCDHR3遺伝子多型は喘息やCOPD発症のリスク因子である。また、PCD関連遺伝子の肺における発現異常が関与する喘息フェノタイプの存在が示唆された。このように複雑(complex)で不均一(heterogeneous)な病態である慢性炎症性気道疾患(成人喘息およびCOPD)の背景にある多様な分子メカニズムを理解することは、早期介入や治療ターゲットの明確化、最適な治療の選択につながっていくと考える。

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