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大学・研究所にある論文を検索できる 「CAD/CAM冠用ハイブリッドレジンブロックの前歯部への臨床応用に関する基礎的研究 : 強度,適合性,および色調の評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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CAD/CAM冠用ハイブリッドレジンブロックの前歯部への臨床応用に関する基礎的研究 : 強度,適合性,および色調の評価

工藤, 博貴 大阪大学

2021.03.24

概要

【研究目的】
CAD/CAM冠用ハイブリッドレジンブロックから作製されるCAD/CAM冠は,ブロックの改良とともに小臼歯部から大臼歯部へと保険適応が広がり,2020年9月に前歯部にも適応された.これまで臼歯部CAD/CAM冠の接着や破壊強度に関する基礎的,臨床的研究が行われてきたが,前歯部と臼歯部では支台歯の形態や咬合状態が異なるため,適合性や強度については改めて評価する必要がある.また,ブロック単体で作製したCAD/CAM冠では隣接歯に調和した色調の再現が困難となる可能性も考えられる.そこで本研究では,CAD/CAM冠の審美的な問題点を解決するため,単色もしくはグラデーションを有するモノリシッククラウンに加え,ブロックをフレーム形態にミリングした後,唇側に硬質レジンを築盛したレイヤリングクラウンを作製し,強度,適合性,および色調✰評価を行った.

【材料と方法】
実験1.前歯部CAD/CAM冠と支台歯との適合評価
松風ディスクHC A2-LT(松風)から,前歯部CAD/CAM冠の支台歯形態を有する上顎左側中切歯支台歯を作製した.シリコーンゴム印象群では,支台歯を10回印象し,10個の石膏模型を作製後,ARCTICA Scan(KaVo)で計測し,10個のSTLデータを作成した.光学印象群では,TRIOS 3(3Shape)を用いて支台歯の光学印象を10回行い,10個のSTLデータを作成した.両STLデータから,松風ブロックHC A2-LT(松風)を,歯科用ミリングマシンを用いて切削し,口蓋側 1.0 mm,切縁部 2.0 mm,唇側 1.3 mmの厚み,セメントスペース 50 µmの前歯部CAD/CAM 冠を10個ずつ作製した.シリコーンレプリカ法を用いて切縁部,軸面,および辺縁部におけるクラウンと支台歯の間隙量を計測し,両群の差を検定した.検定にはt検定を用い,多項目検定のp値の補正には,Bonferroni法を用いた.

実験2.分光イメージング装置を用いた前歯部CAD/CAM冠の色調評価
単色の松風ブロックHC A2-LT(松風)で作製した前歯部CAD/CAM冠(以下 HC),2層の色調を有する松風ブロックHC 2レイヤー A2-2L(松風)で作製したCAD/CAM冠(以下 HC-2L),3層の色調を有するKZR-CAD HRブロック2 GRA2-GR(ヤマキン)から作製したCAD/CAM冠(以下 KZRGR)を,実験1と同じ形態で各5個作製した.加えて,モノリシッククラウンのSTLデータから,唇側切縁部のみ削除したカットバッククラウン用フレーム(削除量:0.3〜1.0 mm),および唇側面全体を削除したレイヤリングクラウン用フレーム(削除量:0.8〜1.0 mm)を設計し,松風ブロックHCA2-LTをARCTICA Engineを用いて削り出しを行い,2種類のハイブリッドレジン製フレームを各5個作製した.さらに,レジン前装冠用としてレイヤリングクラウン用フレームと同じデザインの金銀パラジウム合金製フレームを5個作製した.ビタクラシカルシェードガイド(VITA)A2を目標色とし,上記3種類のフレームに,歯冠用硬質レジン(セラマージュデュオ,松風)を築盛し,モノリシッククラウンと同一形態のクラウンを各5個作製した(以下 カットバッククラウン:HC-Cut,レイヤリングクラウン:HC-Lay,レジン前装冠:RFMと略す).6種類のクラウンをパナビアV5トライインペースト(クラレノリタケデンタル)のユニバーサル色を介在させ,レジン製支台歯に装着後,分光イメージング装置(オフィスカラーサイエンス)を用いて,黒色および白色背景下で,クラウンおよびA2色シェードガイドの分光情報を記録し,クラウンおよびシェードガイドの唇側近遠心中央部の30点におけるL*,a*,b*,Y値を取得後,透光性パラメーター(TP),コントラスト比(CR),シェードガイドとの色差(ΔE)を算出した.TPとCRの試料間の比較には,Tukeyの多重比較検定を用いた.多項目検定のp値の補正にはBonferroni法を用いた.

実験3.前歯部CAD/CAM冠の破壊強度
HC-2L,KZRGRを各20個,二ケイ酸リチウムガラスセラミック IPS e.max CAD A2-LT(Ivoclar)で作製した実験1と同じ形態の前歯部モノリシッククラウン(以下 e.max)を10個,HC-Layを30個,メーカー推奨の接着システムに従い,チタン製支台歯に装着した.HC-2L,KZRGRは装着24時間後および30日間水中浸漬後に,e.maxは装着24時間後に,それぞれ万能試験機にて切縁と基底結節の中央(以下 荷重点1)に荷重を加え破壊試験を行った.HC-Layは,装着24時間後と30日間の水中浸漬後に,荷重点1に加え,切縁から 1.5 mm歯頸側(以下 荷重点2)に荷重を加え破壊試験を行った.破壊試験後の支台歯とCAD/CAM冠の破断面を,実体顕微鏡と電界放射型走査型電子顕微鏡を用いて撮影した画像により観察した.破壊荷重値について,各クラウンの装着24時間後と水中浸漬後の比較にはt検定を,装着24時間後のクラウン間の比較にはTukeyの多重比較検定を,HC-Layにおける荷重点の違いによる差にはt検定を用いた.

【結果および考察】
実験1.前歯部CAD/CAM冠と支台歯との適合評価
試料10個における辺縁部の間隙量の平均値は,全9点において光学印象群がシリコーンゴム印象群よりも小さく,6点で有意差を認め(P < 0.05),適合性が高かった.歯冠補綴装置において辺縁部間隙量が 120 µm以下であれば臨床的に許容されるとされており,両群ともに,本実験で用いた前歯支台歯で作製したCAD/CAM冠は,臨床的に許容できる適合性を有していたが,光学印象を用いた方が,適合性が優れているものと考えられた.

実験2.分光イメージング装置を用いた前歯部CAD/CAM冠の色調評価
RFMは,他のクラウンと比較し,歯頸部から切縁部にかけた測定点30点中,TPでは28点,CRでは27点で有意差を認め(P < 0.05),透光性が小さかった.一方,HC,HC-2L,KZRGR,HC-Cut,HC-Lay,シェードガイドは透光性の変化の傾向が近似していた.シェードガイドとの色差ΔEに関し,測定点30点中,2.0以下は,HCが6点,HC-2Lが8点,KZRGRが28点,HC-Cutが9点,HC-Layが27点,RFMが22点であった.試料間の色差が2.0以下の場合,視覚による識別が困難であるとされており,A2色のみの実験ではあるが,グラデーションブロックから作製したKZRGRとレイヤリング法を用いたHC-Layは,シェードガイドの色調と近似しているものと考えられた.

実験3.前歯部CAD/CAM冠の破壊強度
装着24時間後の荷重点1での破壊荷重値は,HC-2Lが 1,464 ± 126 N,KZRGRが 1,746 ± 52 N,e.maxが 1,845 ± 186 N,HC-Layが 1,513 ± 141 Nであった.水中浸漬30日後の荷重点1での破壊荷重値は,HC-2Lが 1,460 ± 71 N,KZRGRが1,613 ± 78 Nであった.HC-Layの荷重点2での破壊荷重値は,装着24時間後が 1,500 ± 108 N,水中浸漬30日後が1,028 ± 143 Nで,水中浸漬後に破壊荷重値が有意に低下した(P < 0.01).成人男性の咬頭嵌合位における咬合力は中切歯で 146 ± 44 Nとの報告があり,前歯部CAD/CAMクラウンは咬合力に耐えうる強度を有しているものと考えられた.

【結論】
本研究により,CAD/CAM冠用ハイブリッドレジンブロックは,クラウンと支台歯の間隙量,破壊荷重値ともに,前歯部へ適用可能な値を有していることが確認できた.一方,目標とする色調によっては作製方法を検討する必要があることが明らかになった.

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