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ズッキーニ由来Major latex-like proteinの生物機能の解明

藤田, 健太郎 神戸大学

2022.09.25

概要

第I章総合緒論
殺虫剤ディルドリンやダイオキシンなどは、残留性有機汚染物質(POPs)に含まれ、高い毒性を有し、現在では使用が禁止されている。ウリ科作物は、土壌中に残留していたPOPsを葉や果実などの地上部に高濃度に蓄積する。そのため、ウリ科作物から残留基準値を超えて、POPsが検出される事例が後を絶たない。これには、ウリ科作物ズッキーニから同定されたタンパク質であるMajor latex-like protein(MLP)が関与する。MLPは土壌中のPOPsと根で結合し、結合した状態で導管へ移行する。その結果、MLPを介して、POPsは地上部に輸送され、蓄積する。すなわち、MLPはウリ科作物におけるPOPsの輸送因子である。

第II章MLP遺伝子の発現制御による汚染低減化
温度や日長などの環境要因によって、MLP遺伝子の発現量は変動し、それに伴い地上部に輸送される有機汚染物質の量が変化する。これは、ウリ科作物を取り巻く環境要因によってMLP量の制御が可能であることを示唆する。そこで、環境要因として作物栽培に欠かせない農薬に着目した。農薬の散布によって、MLP遺伝子の発現を抑制し、MLPを介して地上部に輸送されるPOPs量の減少を試みた。ウリ科作物に対して適用のある農薬から、MLP遺伝子の発現を抑制する農薬として、殺菌剤ダコニールを選抜した。殺菌剤ダコニールの散布により、根と導管液におけるMLP量は低下し、導管液中のPOPs濃度は低下した。よって、殺菌剤ダコニールの散布は、MLP遺伝子の発現抑制を介して、ウリ科作物におけるPOPs蓄積を抑制することが明らかになった。

第III章MLPの結合制御による汚染低減化
ウリ科作物におけるPOPs汚染の第一の段階として、MLPとPOPsの結合が挙げられる。そこで、MLPとPOPsの結合を、作物栽培に欠かせない農薬による阻害を試みた。化合物ライブラリーからMLPと高い結合親和性を有する化合物を選抜したところ、殺虫剤コルトの原体と共通する構造を有する化合物が複数存在した。また、殺虫剤コルトの原体は、invitroにおいて、MLP-GR3とPOPsの結合を競合的に阻害した。さらに、殺虫剤コルトの散布により、導管液中のPOPs濃度は低下した。よって、殺虫剤コルトの散布は、MLPとPOPsの結合阻害介して、ウリ科作物におけるPOPs蓄積を抑制することが明らかになった。

第IV章MLPによる病害抵抗性の充進
MLPは感染時特異的タンパク質クラス10(PR-10)と同じファミリーに属するタンパク質である。PR-10は、生物的ストレスや非生物的ストレスに応答し、それらに対する耐性を植物に付与する。そこで、MLPもPR-10と同様にストレス耐性を付与すると考え、ズッキーニ由来MLP-PGIの病害抵抗性への関与を評価した。タバコ野火病菌(Pseudomonas syringae pv. tabaci)の接種により、MLP-PGJ遺伝子の転写が活性化されたものの、MLP-PGlにはPR-10が示すようなRNase活性をinvitroで有していなかった。そこで、PR-10のようなRNase活性を示すのではなく、MLPは病害抵抗性遺伝子の誘導により、間接的に病害抵抗性に関与すると考えた。MLP-PGJ遺伝子を過剰発現させたタバコをRNA-sequencingに供したところ、PR-2遺伝子、PR-5遺伝子といった病害抵抗性に関与する遺伝子が高発現していた。また、MLP-PGJ遺伝子を過剰発現させたタバコでは、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)の病斑面積が減少していた。よって、MLP-PGlはPR遺伝子の発現誘導を介して、ズッキーニに病害抵抗性を付与することが示された。

第v章MLP遺伝子の発現制御機構の解明
ズッキーニには、ovifera亜種とpepo亜種が存在し、pepo亜種では、Zincfinger-protein(ZFP)遺伝子が高発現するだけでなく、POPsが地上部に高濃度で蓄積する。そこで、ズッキーニpepo亜種では、ZFPが転写因子として機能することで、MLP遺伝子の発現が誘導され、POPsを高濃度に蓄積すると考えた。ズッキーニ由来のZFP遺伝子を過剰発現させたタバコにおいて、MLP-GR3遺伝子の転写が活性化された。また、ovifera亜種よりもpepo亜種はMLPGR3遺伝子の転写活性化が促進されていた。よって、pepo亜種では、ZFP遺伝子の高発現により、MLP-GR3遺伝子の転写が活性化され、POPs蓄積が促進されることが明らかになった。

第VI章ズッキーニゲノムにおけるMLP遺伝子の同定
シロイヌナズナ、ブドウ、リンゴなどの双子葉類において、そのゲノム中に10以上のMLP遺伝子を有している。しかし、これまでにウリ科作物においてMLP遺伝子のゲノム内における同定が行われたことはない。従って、POPsの蓄積に寄与しうるMLP遺伝子を看過している可能性がある。そこで、MLPの隠れマルコフモデルを作成し、ズッキーニゲノムにおいて、MLPの網羅的同定を行った。その結果、ズッキーニゲノム中には、21個のMLP遺伝子が存在していた。それぞれのMLP遺伝子の根における発現量、リガンド結合キャビティの疎水性と体積などの観点から、POPs蓄積への寄与を評価した。しかし、多くのMLP遺伝子の根における発現量は低く、これまでに同定したMLP-GR3遺伝子の方がPOPs蓄積への寄与は大きいと結論付けられた。

第VII章総合考察
以上の結果より、MLPの遺伝子発現や結合制御をケミカルバイオロジー的アプローチにより達成することで、POPs蓄積の抑制を証明することができた。また、MLPの生理機能を、遺伝学・植物病理学・構造生物学の点から洞察を与え、ゲノム・遺伝子・タンパク質の観点から詳細に評価した。これにより、MLPが関与する生物機能を複合的に捉えることができた。

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