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書き出し

貿易自由化が日本の食肉貿易に与える影響に関する数量経済学的研究

金, 圣浩 JIN, SHENGHAO キン, セイコウ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

貿易自由化が日本の食肉貿易に与える影響に関する
数量経済学的研究
金, 圣浩

https://hdl.handle.net/2324/6787674
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(農学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)





:金

圣浩

論文題名

:貿易自由化が日本の食肉貿易に与える影響に関する数量経済学的研究



:甲

















日本では近年,環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11 協定)や日
EU 経済連携協定,日米貿易協定といった主要な農産物輸出国との貿易協定が相次いで発効するな
ど,農産物の貿易自由化が進められている.
上述の貿易協定交渉において「重要 5 品目」に位置付けられた品目の中で,豚肉および牛肉にお
いては,他の 4 品目(米,麦,乳製品および甘味資源作物(砂糖))と比べて大幅な貿易自由化が行
われることとなった.そのため,特に食肉において,貿易自由化が輸入量を増加させ,ひいては国
内生産を縮小させることが懸念されている.一方,貿易自由化による輸入増加や少子高齢化による
国内消費量低迷の影響を軽減する 1 つの方法として,政府は農林水産物・食品の輸出拡大に取り組
んでいる.特に日本産牛肉(主に和牛肉)は,輸出額が農産物の中で最大の品目であり,今後もさ
らなる輸出拡大が期待されている.
以上から,現在進められている貿易自由化は,豚肉については主に輸入面に,牛肉については輸
出入の両面に影響を与えると考えられる.したがって,本論文では,貿易自由化が豚肉の輸入およ
び牛肉の輸出入に与える影響について,数量経済分析を行うことを目的とする.具体的には,豚肉
の輸入を考察する上で重要となるコンビネーション輸入,また,牛肉の輸出入を考察する上で重要
となる製品差別化および双方向貿易について,それぞれ焦点を当てて分析を行う.
上記の研究背景や研究課題を第 1 章で説明した後,第 2 章では,差額関税制度下の豚肉コンビネ
ーション輸入について定量把握を行った.分析の結果,まず,日本の豚肉輸入価格は分岐点価格付
近に調整されており,実際にコンビネーション輸入が行われていることを明らかにした.また,ア
メリカ産豚肉を対象として定量把握を行い,関税削減後も関税額が最小となるのはコンビネーショ
ン輸入を行ったときであるため,輸入業者は関税削減後もコンビネーション輸入を続けることが予
想されることを明らかにした.しかし,国際市場の変動による低価格グループの輸入豚肉の価格上
昇によって,コンビネーション輸入を行うインセンティブが弱まるないし完全に失われる可能性が
考えられるため,引き続き輸入豚肉の価格水準を注視する必要があることを明らかにした.
第 3 章では,日本産牛肉の主要な輸出先である中国,アメリカ,EU,香港およびシンガポールを
対象として,日本産牛肉需要について計量経済分析を行った.分析の結果,すべての対象国・地域
において,日本産牛肉の価格下落は,日本産牛肉の需要量を統計的に有意に増加させるものの,輸
出金額の増加にはつながらないこと,ならびに,アメリカおよび EU においては,日本産牛肉需要
は一般牛肉価格から一定程度の影響を受ける一方,中国,香港およびシンガポールにおいては,両
者は統計的に有意な代替関係にない(差別化されている)ことを明らかにした.
第 4 章では,製品差別化と双方向貿易を含む空間均衡モデルを新たに構築した上で,第 3 章で推
計された海外市場における日本産牛肉需要の価格弾力性の推計値等を用いて,牛肉の貿易自由化の
政策シミュレーション分析を行った.分析の結果,貿易自由化の影響を最も受ける国・地域は日本
であること,現行の貿易協定によって,日本においては,日本産牛肉の純輸出量は増加するものの,
その程度は一般牛肉の純輸入量の増加と比べて微小であるとともに,一般牛肉の純輸入量増加およ

び価格下落を受けて日本産牛肉の需要量が減少し,価格が下落するため,一般牛肉と日本産牛肉の
生産量がともに減少すること,貿易自由化の度合いが高まるほど日本における上記の変化の程度は
大きくなることを明らかにした.
以上から得られる本論文の結論は,以下のとおりである.まず,豚肉の輸入について,貿易自由
化が進展しても差額関税制度は維持されるため,コンビネーション輸入は続くことが予想される.
このとき,低価格グループの輸入価格の高騰によって,コンビネーション輸入が続かず,低価格グ
ループが単独で輸入される可能性は残されているものの,貿易自由化そのものの影響は小さいと考
えられる.次に,牛肉の輸出入について,現行の貿易協定は,日本産牛肉の輸出量を増加させるも
のの,その程度は一般牛肉の輸入量の増加と比べると微小に留まる.一方,一般牛肉の輸入量増加
と価格下落は,一般牛肉の生産量を減少させるに留まらず,代替関係にある日本産牛肉の価格を下
落,生産を減少させるなど,貿易自由化によるマイナス影響は国内の牛肉生産全体に及ぶ.したが
って,一般牛肉を中心に,上記のマイナス影響を国内施策によって軽減することが重要になると考
えられる.また,貿易自由化の度合いが高まるほど上記の変化の程度が大きくなることから,牛肉
貿易のさらなる自由化は慎重に検討するべきである.

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