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書き出し

X線位相差CTを用いて測定される断裂僧帽弁腱索の構造的性質

幸田, 陽次郎 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Structural Properties in Ruptured Mitral
Chordae Tendineae Measured by Synchrotron-Based
X-ray Phase Computed Tomography

幸田, 陽次郎
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8726号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485910
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Structural Properties in Ruptured Mitral Chordae Tendineae
Measured by Synchrotron-Based X-ray Phase Computed Tomography
X 線位相差 CT を用いて測定される断裂僧帽弁腱索の構造的性質

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
心臓血管外科学
(指導教員:岡田
幸田

健次
陽次郎

教授)

僧帽弁腱索断裂(RCT)は僧帽弁閉鎖不全症(MR)の主な原因であり、RCT に起因する
MR の第一選択治療として僧帽弁形成術が選択される。しかし、心臓内部の僧帽弁複合体の
解剖学的構造が確立されても、構造的性質や腱索断裂との関連は十分に検討されていない。
したがって、従来の僧帽弁形成術後に MR が再発する可能性がある。放射光を用いた X 線位
相差 CT(XPCT)は、従来の CT よりも高感度であり、生体軟部組織中の微小な密度差の可
視化が可能である。高輝度光科学研究センター(SPring-8)で開発された回折格子干渉計を
用いた XPCT が、いくつかの生体軟部組織に用いられている。位相シフトには減衰の約
1,000 倍の物理量が関与しているため、原理的に XPCT は軟組織に対して高感度である。わ
ずかな密度差や構造の細部を可視化できるのは、高い空間分解能と密度分解能に起因する。
このことは、僧帽弁腱索病変の密度データを得て、その形態学的変化を調べるのに有用であ
ることを示唆している。本研究では、XPCT を用いた詳細な可視化と構造定量化により、
RCT における腱索の構造変化を調べることを目的とした。
僧帽弁断裂腱索(n=6)は、MR に対して僧帽弁手術を受けた患者から得られた。切除され
た断裂腱索は 10%ホルマリンで固定され、6 ヶ月以内に XPCT を用いて 3D 画像が得られた
(断裂群)。RCT は 5 本が僧帽弁後尖内側(P2)に、1 本が僧帽弁前尖内側(A2)に存在し
た。さらに、心臓弁膜症のない献体の心臓から 12 本のホルマリン固定した正常な僧帽弁腱
索が得られた(対照群)。断裂群の患者の平均年齢は 70.2±3.0 歳(65-72 歳)、対照群の患
者の平均年齢は 67.2±14.1 歳(38-83 歳)であった。(p=0.4927)。
SPring-8 の放射光施設で使用されている XPCT システムは、シンクロトロンビームライン
の X 線タルボ回折格子干渉計をベースとしている。標本をアガロースゲルに包埋し、生理食
塩水を満たした適当な大きさのプラスチックキャニスターに入れた。次に、回転ステージを
用いて、キャニスター内で標本をゆっくりと回転させた。検査室の温度は一定に保たれた。
位相格子と吸収格子からなるタルボ格子干渉計を標本の後方に設置し、干渉計で発生したモ
アレ縞を X 線検出器で検出した。位相検索には、位相ステップ数を 5 としたフリンジスキャ
ン法を用いた。位相検索は、ピエゾ駆動ステージで吸収格子をシフトさせる 5 段階の位相ス
テップを使用して達成された。データはハイスループット・システムで処理され、3D 画像
が作成された。ホルマリン固定した各サンプルについて、僧帽弁腱索の関心領域内の平均質
量密度を推定することにより、形態学的差異を定量的に評価した。各関心領域は、断面積×
100 ボクセルを深さとした。対照群として正常な僧帽弁腱索の乳頭筋付着部付近の質量密度
を測定した。断裂腱索では、乳頭筋付着部近傍の断裂部分と僧帽弁尖近傍の非断裂部分の 2
箇所で密度を測定した。
XPCT 撮影終了後、検体を 10%ホルマリンで保存し、横断面方向に切片化した。その後、各
標本の切片をヘマトキシリン・エオジン (HE)およびシリウスレッド (SR)で染色した。SR
染色は弾性線維と膠原線維の検出に用いられた。テノモジュリン (Tnmd)は抗 Tnmd 抗体に
よる免疫染色で同定し、腱索の治癒過程を検出するために用いた組織学的検査では、炎症、
膠原線維や弾性線維などの組織成分の異常を含む修復過程の同定に焦点を当てた。さらに、

膠原線維が腱索の密度変化に寄与していることを評価するため、ImageJ を用いて標本中の
膠原線維の占有率を求めた。占有率は、選択された面積に対する膠原線維成分の占める面積
の割合として定義された。
形態学的差異を定量的に評価するため、各標本で腱索の質量密度を推定した。対照群(n =
12)では、腱索の平均密度は 1.085±0.015g/cm3 であり、腱索内では有意な変動はなかっ
た。これらの所見は、同じ部位の組織学的所見と一致しており、中膜には均一な高密度の膠
原線維が観察された。これらの所見は、腱索の密度が均一であり、腱索に安定した構造をも
たらしていることを示しているかもしれない。断裂群では、腱索断裂部分の平均密度は
1.029±0.004g/cm3 であり、正常な僧帽弁腱索の質量密度より有意に低かった(p<0.0001)
正常と断裂腱索の質量密度の違いは、関連する組織学的標本で観察された膠原線維の分布と
一致していた。
正常および断裂腱索の組織学的検査において、正常腱索では、高密度の膠原線維がほぼすべ
ての断面を占め、膠原線維束を構成していた。SR 染色では、内皮下の小間質組織に見られ
る黒い病変は弾性線維を示した。SR 染色を偏光すると、緑色に染色された膠原線維(III
型)が、内皮層下の小さな間質組織領域とともに、膠原線維束の大部分を占めていることが
示された。対照的に、HE で染色した断裂腱索では、膠原線維束を取り囲む間質組織の異常
増殖が増加していた。断裂腱索の SR 染色では、隣接する膠原線維と比較して弾性線維が多
く、膠原線維が少ない異常間質組織の増加が認められた。得られた CT 画像は、正常および
断裂腱索の構成弾性線維と膠原線維の違いを反映していた。正常腱索では、膠原線維束を示
す均一な高信号を示したが、断裂腱索では、中核の膠原線維が、木の年輪のような異常な間
質組織を反映する信号に囲まれていた。断裂腱索の矢状断面を HE で染色したところ、病理
学的断面所見と一致する非縦長の異常間質組織層が観察された。異常間質組織と縦方向の膠
原線維束を含む全層に炎症浸潤は認められなかった。SR 染色の偏光により、非縦走性異常
結合組織層には弾性線維(黒色病変)と膠原線維(黄色病変;I 型膠原線維、緑色病変;III
型膠原線維)が含まれていることが明らかになった。膠原線維の分布の違いを定量化するた
めに、異常結合組織が豊富な領域と正常な膠原線維束の領域を含む 2 つの選択された領域で
膠原線維占有率を計算した。膠原線維占有率は、正常な膠原線維束のある部位で 61.1%、異
常な結合組織が豊富な部位で 17.2%であった。さらに、索状腱膜の治癒過程を検出するため
に、抗 Tnmd 抗体による免疫染色を行った。正常腱索では、Tnmd 陽性細胞は極めてまれ
で、内皮細胞層の下の間質組織に局在していた。しかし、断裂腱索では、Tnmd 陽性の散在
細胞が異常結合組織の増加した領域にしばしば見られた。
放射光を用いた XPCT により、僧帽弁腱膜の組織密度を測定することが可能になった。正常
腱索の均一な密度は、膠原線維束中の高密度の膠原線維と一致しており、断裂腱索の断裂部
分の局所的な低密度は、構造的変化をもたらした以前の腱索損傷に対する治癒過程が進行中
であることを反映している可能性がある。したがって、僧帽弁腱索の低密度は、断裂腱索の
脆弱性と関連している。

神戸大学大学院医学研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
甲第

3315号





受付番号

幸田陽次郎

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審査委員

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(要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)



【目的 】
RCT)は僧帽弁閉鎖不全症 (
M
R
) の主な原因であり、 RCTに起因する MR
僧帽弁腱索断裂 (

の第ー選択治療として僧帽弁形成術が選択される。しかし 、心臓内部の僧帽弁複合体の解
剖学的構造が確立されても、構造的性質や腱索断裂との関連は十分に検討されていない。
X
PCT) は、従来の CTよりも高感度であり、生体軟部組織
放射光を用いだ X線位相差 CT (
SPri
ng
-8
) で開発
中の微小な密度差の可視化が可能である。高輝度光科学研究センター (

された回折格子干渉計を用いた XPCTが、いくつかの生体軟部組織に用いられている。
申請者は 、XPCTを用いた詳細な可視化と構造定量化により、 RCTにおける腱索の構造変
化を調べることを目的に本研究を行った。

方法 】
僧帽弁断裂腱索は、 MRに対して僧帽弁手術を受けた患者から得られた。切除された断裂
腱索は 10%ホルマリンで固定され、6ヶ月以内に XPCTを用いて 3D画像が得られた。
SPri
ng
-8の放射光施設で使用されている XPCTシステムは、シンクロトロンビームライン

エゾ駆動ステージで吸
の X線タルボ回折格子干渉計をベースとしている。位相検索は、ヒ゜
収格子をシフトさせる 5段階の位相ステップを使用して達成された。データはハイスルー
プット ・システムで処理され、3D画像が作成された。各サンプルについて 、僧帽弁腱索の
関心領域内の平均質量密度を推定することにより、形態学的差異を定量的に評価した。 XPCT
撮影終了後 、検体を 10%ホルマリンで保存し、各標本の切片をヘマトキシリン ・エオジン
(
HE
)およびシ リウスレッド (
SR)で染色した。テノモジュリン (
Tn
m
d
)は抗 Tnmd抗体による

免疫染色で同定した。

結果】
形態学的差異を定量的に評価するため、各標本で腱索の質量密度を推定した。腱索断裂
部分の平均密度は 1
.029土 0.004g/cm3であり、正常な僧帽弁腱索の質董密度より有意に低
かった。正常と断裂腱索の質量密度の違いは 、関連する組織学的標本で観察された膠原線
維の分布と一致していた。正常および断裂腱索の組織学的検査において、正常腱索では、
高密度の膠原線維がほぼすべての断面を占め 、膠原線維束を構成していた。対照的に、 HE
で染色した断裂腱索では、膠原線維束を取り囲む間質組織の異常増殖が見られた。断裂腱
索の SR染色では 、隣接する膠原線維と比較して弾性線維が多く、膠原線維が少ない異常間
質組織の増加が認められた。得られた CT画像は、正常および断裂腱索の構成弾性線維と膠
原線維の違い を反映 していた。 断裂腱索では病理学的断面所見と一致する非縦長の異常間
質組織層が観察された。膠原線維の分布の違いを定量化するために、異常結合組織が豊富
な領域と正常な膠原線維束の領域を含む 2つの選択された領域で膠原線維占有率を計算し
.1%、異常な結合組織が豊富な
た。膠原線維占有率は、正常な膠原線維束のある部位で 61
2%であった。 さらに、索状腱膜の治癒過程を検出するために 、抗 Tn
md抗体に
部位で 17.

よる免疫染色を行った。正常腱索では、 Tnmd陽性細胞は極めてまれで、内皮細胞層の下の
間質組織に局在していた。し かし、断裂腱索では、 Tnmd陽性の散在細胞が異常結合組織の
増加した領域にしばしば見られた。


結論 】
本研究は、放射光を用いた XPCTにより 、僧帽弁腱膜の組織密度を測定することを可能に
し、僧帽弁腱索の低密度は、以前の腱索損傷に対する治癒過程が進行中であることを反映
している可能性を示した価値ある報告である 。 よって本研究者は、博士(医学)の学位を
得る資格があると認める。

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