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大学・研究所にある論文を検索できる 「高温登熟が水稲の胚乳澱粉構造, 食味に与える影響及び秋田県における高温登熟耐性を具えた極良食味系統の育成」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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高温登熟が水稲の胚乳澱粉構造, 食味に与える影響及び秋田県における高温登熟耐性を具えた極良食味系統の育成

加藤, 和直 KATO, Kazunao カトウ, カズナオ 九州大学

2020.03.23

概要

本研究は登熟期の高温がイネの生理、形態、胚乳澱粉構造および食味評価に与える影響を明らかにし、秋田県における高温登熟耐性品種の育成に資することを目的として、①高温登熟による玄米の形態、澱粉構造および澱粉特性の変化が秋田県の主力良食味品種である「あきたこまち」の食味官能評価に与える影響の解析および②東北地域における高温登熟耐性「強」の品種が高温登熟下で示す形態および生理的特性の解析を行った。さらに、③秋田県の既存品種よりも高温登熟耐性が強く、コシヒカリを超える極良食味品種の開発を行った。

①高温登熟が食味官能評価に与える影響を明らかにするために、秋田県の主力良食味品種である「あきたこまち」を人工気象器および温水掛け流し温室で栽培し、高温登熟下における玄米の形態、澱粉構造および澱粉特性の変化が食味官能評価に与える影響を解析した。高温登熟した玄米はいずれの試験区においても常温や低温で登熟した玄米と比較して外観品質が劣り、玄米の長さ、幅、厚みの全てにおいて有意に小さく、玄米千粒重が 10 %以上低下した。高温下で登熟した玄米を精米した白米は、白米の背側の胚乳において種皮、または維管束が黄色く残存しており、外観が常温で栽培した白米よりも明らかに低下した。高温登熟が玄米の重量、形態に与える影響は大きく、高温下で登熟した「あきたこまち」は経済的な価値が低下し、農家の経済活動に悪影響を及ぼす可能性があることを明らかにした。また、高温で登熟したイネの胚乳澱粉構造は、常温や低温で登熟した胚乳と比較して胚乳における GBSSI の発現レベルが低く、見かけのアミロース含有量が有意に低くかった。さらにアミロペクチンの短鎖-長鎖比は有意に小さかった。さらに高温で登熟した胚乳澱粉におけるアミロペクチン構造では、DP = 6-15(DP = 8 を除く)のアミロペクチン鎖の割合は減少し、DP = 8 および DP> 18 のアミロペクチン鎖の割合が増加した。DP = 6–15 の中で DP = 8 だけが特異な動きをしていた。BEIIb タンパク質レベルは低温で成熟した胚乳よりも高温で成熟した胚乳で低下する一方で、SSI タンパク質レベルは低温で成熟した胚乳よりも高温で成熟した胚乳で高かった。これらの結果は、高温でのアミロペクチン鎖 DP = 6–15 の減少と DP> 18 の増加は、それぞれ BEIIb タンパク質レベルの低下に起因すると考えられ、高温によって DP = 8 の割合が特異的に増加する主な原因は、高温登熟による BEIIb の発現減少の背景にある SSI 発現の増強であることが示唆された。高温で登熟した「あきたこまち」の食味官能評価は、常温で栽培されたものと比較して大きく劣った。高温で登熟した炊飯米の「硬さ」は柔らかい傾向にあり、「粘り」は有意に低かった。これらの物性の違いは、温度感受性酵素である BEIIb と SSI および GBSSI の活性の違いに起因していると考えた。高温登熟によるアミロース含有量の低下は食味評価の向上には寄与せず、食味評価の低下の主な理由は玄米の白濁によるものではなく、澱粉構造の変化であることを明らかにした。地球温暖化にイネが耐えていくためには移植時期を変えて高温を避ける技術や非温度感受性の BEIIb を持つ品種等を開発し、玄米収量や玄米品質を維持していく必要があると考察した。

②高温登熟耐性とイネの形態的、生理的特性の関係性を明らかにするために、成熟期が同じで高温登熟耐性が異なる「ふさおとめ」、「あきたこまち」と「笑みの絆」、「コシヒカリ」を供試し、根や葉身などの生育特性および葉身のケイ酸や非構造性炭水化物の転流等の養分吸収特性と高温登熟耐性について解析を行った。高温登熟耐性品種に共通する生理、形態的な特徴としては、作土層における根量が多く、地上部に対する根の割合が大きく、高温下ではケイ酸を積極的に取り込みつつ、上位葉の伸長を抑制していた。これらの結果から、高温登熟耐性品種は、高温下で高い養分吸収特性をもち、受光態勢に優れ、根活性が高く光合成に有利な生育特性を持つことが明らかとなった。ここでは高温登熟耐性に関する根の身長や草型など形態的な特徴を見出したが、これら形態的、生理的特徴に加えて、胚乳澱粉生合成に関わる酵素に関する特性などを加味することで、高温登熟耐性に関する品種選抜にさらに資することが期待できると考えた。

③2010 年の6月〜9月の異常高温によって、秋田県の作況指数および「あきたこまち」の 1 等比率は大きく低下した。また、日本各地で良食味米に関する育種およびブランド化が激化する中で、秋田県内の生産者や流通関係者からは、ブランド力があり、高い価格帯で安定して販売することができる秋田県の顔となるような極良食味品種への要望が高まっていった。そこで、高温登熟耐性とコシヒカリを超える極量食味品種を育成するために、食味官能評価方法の改善に加えて、水田にガラス温室と温水掛け流しを併用した高温登熟耐性検定施設による選抜を行った。その結果、外部機関による評価でも食味評価が非常に高く、高温登熟耐性が「やや強」に相当する「秋田 128 号(秋系 821)」の育成に成功した。

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