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大学・研究所にある論文を検索できる 「イネにおける高温登熟の世代間応答に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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イネにおける高温登熟の世代間応答に関する研究

スリヤサック, チェットピリン CHETPHILIN, SURIYASAK 九州大学

2021.03.24

概要

本研究では、イネ(Oryza Sativa L.)の高温適応機構を解明するため、子実登熟における高温ストレスが玄米外観品質に及ぼす影響や、前世代の高温環境が次世代の生育に及ぼす影響について、作物生理学的および分子生物学的に解析した。

 開花期から収穫期まで、対照区(25℃)および高温区(30℃)で生育させ、玄米の外観品質を調査したところ、高温登熟した玄米の白未熟粒率は対照区と比べ有意に高く、高温登熟における白未熟粒発生に関与するデンプン分解遺伝子の発現も高温区において有意に高かった。イネの種子発芽時において、デンプン分解遺伝子の発現は、活性酸素を介した植物ホルモンによって制御されることが報告されている。高温登熟された子実内の過酸化水素含量は対照区と比べ高く、活性酸素産生に関与するNADPHオキシターゼ遺伝子の発現上昇も認められた。これらの結果は、高温登熟による白未熟粒発生機構に高温による子実内の活性酸素産生が関与すること示唆した。そこで、高温条件下において抗酸化剤を処理し、玄米外観品質を調査したところ、高温登熟による白未熟粒率の上昇を有意に抑制した。さらに、抗酸化剤を処理した子実は、高温登熟によって増加するジベレリン(GA)合成関連遺伝子やアブシジン酸(ABA)代謝関連遺伝子およびデンプン分解遺伝子の発現を抑制した。以上の結果から、高温登熟による玄米外観品質の低下は、活性酸素を介した植物ホルモンの制御によるデンプン分解遺伝子の発現調節によって引き起こされていると考えられた。高温登熟が次世代の生育へ及ぼす影響について、始めに、対照区と高温区で登熟された種子を用いて発芽試験を行った結果、高温登熟された種子の発芽遅延が確認された。先行研究において、高温下で登熟されたイネ種子は、休眠性が深くなることが報告されている。そこで、追熟処理により休眠を解除後、発芽率を調査したところ、高温登熟種子の発芽遅延は追熟処理後も維持された。これらの結果は、高温登熟された種子の発芽遅延は、これまで報告されている種子休眠機構とは異なるとことを示唆した。種子発芽・休眠関連遺伝子の発現解析において、高温登熟種子はABA合成遺伝子の発現上昇、ABA代謝遺伝子およびデンプン分解遺伝子の発現低下を示した。さらに、これらの遺伝子のプロモーター領域について、DNAのメチル化を確認したところ、ABA代謝遺伝子およびデンプン分解遺伝子において高いメチル化が認められた。以上の結果から、高温登熟による種子の発芽遅延は、発芽関連遺伝子のDNAのメチル化が関与すると考えられた。

 次に、高温登熟された種子を用いて、イネ個体の成長解析を行った結果、高温登熟を経験した植物体は、対照区と比べ、分げつの促進、早期開花および止葉伸長の抑制を示した。早期開花について着目して解析したところ、高温登熟を経験した植物体は、出穂・開花関連遺伝子の発現促進が認められた。さらに、その遺伝子のプロモーター領域のDNAのメチル化は、高温登熟した種子において低いことが示された。また、高温登熟を経験した植物体は、高温条件下における止葉の光合成速度の低下および登熟子実のデンプン合成遺伝子発現の低下を抑制し、玄米外観品質を向上させた。以上のことから、イネの登熟期における高温は、DNAのメチル化などエピジェネティックな制御を介して、次世代の成長へ影響を及ぼすことが示された。

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