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大学・研究所にある論文を検索できる 「骨軟部肉腫の薬剤感受性に関与するlong non-coding RNAの研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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骨軟部肉腫の薬剤感受性に関与するlong non-coding RNAの研究

山田 英晴 東北大学

2020.09.25

概要

【研究背景】
骨軟部肉腫は希少がんの一種で、予後は不良である。近年、がん分子標的治療薬のパゾパニブが軟部肉腫の日常診療に導入されたが、軟部肉腫の中でもどのような組織型あるいは特定の分子サブタイプに特に効果的かについて未だ不明な点が多い。最近、抗がん薬の薬剤感受性を予測する手段として、分子バイオマーカーの同定が試みられ、中でもnon-coding RNAの一種であるlong non-coding RNA(lncRNA)は、発がんメカニズムや薬剤感受性に関与することが明らかにされつつある。しかし軟部肉腫に対するパゾパニブの薬物療法感受性に関与し、治療効果予測バイオマーカーとして有用かどうかについては未だ不明である。

【研究目的】
本研究の目的は、骨軟部肉腫に対するパゾパニブの治療効果予測に有用な、新規lncRNAバイオマーカーの探索を行なうことである。

【研究材料及び研究方法】
骨軟部肉腫細胞株(以下、細胞株)16種類に対するパゾパニブを用いたMTTアッセイにより、細胞株をパゾパニブの有効な群(感受性群)と無効な群(耐性群)に分類した。がん及び幹細胞に関連することが知られている90種類のlncRNAの、これらの細胞株における発現プロファイルをマルチプレックスqPCRにより解析し、2群間で発現差のあるlncRNAを抽出した。また、パゾパニブの治療歴がある骨軟部肉腫患者組織(以下、患者組織)を、その治療効果からパゾパニブが有効な群(有効群)と無効な群(無効群)に分類した。患者組織を用い、mRNAに加えてlncRNAを対象としたマイクロアレイによる網羅的遺伝子・lncRNA発現解析を行ない、2群間で発現差のあるlncRNAを抽出した。細胞株で解析対象としたlncRNAの中で、患者組織でも同様な発現差のある候補lncRNAを抽出した。候補lncRNAがパゾパニブの有効性による分類に有意に寄与するかを全体モデル検定により検討した。次に、解析に用いた細胞株と患者組織を、候補lncRNAの発現量の高低で2群に分け、パゾパニブIC50値(細胞株)、無増悪生存期間(PFS)(患者組織)、全生存期間(OS)(患者組織)の差を解析した。細胞株において、siRNAを用いた候補lncRNAのノックダウンが、パゾパニブへの感受性へ影響するかを調べた。細胞株でもマイクロアレイによる網羅的遺伝子・lncRNA発現解析を行ない、患者組織の結果と合わせ、有効な群と無効な群で共通する発現変動を示す遺伝子・lncRNA群のGene Ontology(GO)解析と機能的クラスター解析を行なった。

【結果】
細胞株16種類は、4種類が感受性群、12種類が耐性群に分類され、12種類のlncRNAが2群間で発現差のあるlncRNAとして抽出された。また、解析対象とした患者組織の有効群13症例と無効群10症例の比較で、2,417種類のlncRNAプローブが発現差のあるlncRNAとして抽出された。細胞株と患者組織それぞれの2群間発現差解析で、パゾパニブが有効な群に共通する発現差のあるlncRNAはHAR1BとHOTAIRであった。また、HAR1B及びHOTAIRの発現量からなるモデルが、パゾパニブが有効な群または無効な群の分類モデルに有用であることが示唆された(p<0.05)。発現データをもとにHAR1Bに着目した。HAR1Bが高発現の群と低発現の群では、パゾパニブIC50値が51.7μMvs.100.8μM(p=0.08)、PFSが7.6ヶ月vs.3.1ヶ月(p=0.48)、OSが55.8ヶ月vs.11.0ヶ月(p=0.02)と、HAR1Bが高発現の群で良好な傾向であった。また、HAR1Bの発現レベルが高い感受性群の細胞株であるHS-SY-IIとYamato-SSにおいて、siHAR1BによるHAR1Bのノックダウンにより、パゾパニブ2μMにおける細胞生存率がHS-SY-IIで58.8%±3.3%vs.69.4%±3.3%(p=0.003)、Yamato-SSで58.8%±5.1%vs.66.2%±4.8%(p=0.007)と、パゾパニブへの抵抗性が増加することが示された。細胞株のマイクロアレイでも、感受性群では耐性群より7.08倍(p=0.04)のHAR1B発現上昇が見られた。細胞株の感受性群と患者組織の有効群で共通し発現上昇を認める遺伝子・lncRNAはHAR1Bを含む460種類であった。これらの遺伝子群のGO解析により、GO用語65種類と、機能的クラスター7種類が、統計学的に有意に関連づけられた。

【考察・結語】
本研究において、lncRNAであるHAR1Bが、骨軟部肉腫におけるパゾパニブへの感受性に関与することを示唆する知見を得た。これはHAR1Bがパゾパニブの治療効果予測バイオマーカーになり、骨軟部肉腫治療におけるより効果的な分子標的治療法の開発に繋がる可能性を示唆するものである。

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