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大学・研究所にある論文を検索できる 「経腟分娩後の産道損傷に対する超選択的な経カテーテル的動脈塞栓術の有効性」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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経腟分娩後の産道損傷に対する超選択的な経カテーテル的動脈塞栓術の有効性

佐々木, 康二 神戸大学

2021.09.25

概要

【背景】
産後出血は、周産期医療の発達した現代においても依然として妊産婦死亡の主要原因である。一般的に産後出血の原因は、弛緩出血をその代表とした子宮平滑筋の収縮不良が問題となる病態、腟壁裂傷などの産道損傷、遺残胎盤などの胎盤関連出血、純粋な凝固異常の 4 つに分類される。このうち最多の原因は、弛緩出血とさ れ、次いで産道損傷が多い。近年の血管内治療の進歩により、弛緩出血に対する経カテーテル的子宮動脈塞栓術の有効性や安全性は確立されている。さらに外科的な縫合で止血困難な産道損傷に対しても経カテーテル的動脈塞栓術(Transcatheter arterial embolization; TAE)が有効であるとの報告も散見される。一方、弛緩出血と違い、産道損傷の責任血管は多岐に渡るため、吻合を介した再出血が時に問題となる。当院では吻合を介した再出血を減少させ、止血を確実に行うために、可能な限り損傷部の近くまでカテーテルを進める超選択的な TAE(Super selective TAE; S-TAE)を近年採用している。過去の報告では、再出血のリスクファクターとして大量輸血の有無や血腫の部位などが挙げられているが、詳細な塞栓方法にまで言及した報告はこれまでにない。

【目的】
今回の研究の目的は、外科的縫合で止血困難な経腟分娩後の産道損傷に対する S- TAE の有効性を検討する事である。

【方法】
2008 年 1 月から 2020 年 12 月に止血困難な経腟分娩後の産道損傷に対して当院で TAE を行った患者(28 例)を対象とした。TAE 前に予め全身麻酔での外科的な止血術を予定されていた患者(1 例)を除外し、計 27 例について後方視的に検討し た。患者を塞栓方法によって 2 つの群に分類して評価を行った。内腸骨動脈の前枝から 2 分岐以上末梢で損傷部の出来るだけ近くまでカテーテルを進めて TAE を行った群 (S-TAE 群)と内腸骨動脈前枝の近位から TAE を行った群(P-TAE 群)の 2 群に分類した。患者背景因子、大量輸血の有無、血腫の部位、手技前の脈拍/血圧比(shock index)、凝固障害の有無、術前造影 CT の有無、TAE 所見、TAE の技術的および臨床的成功率、合併症に関して 2 群間で比較検討した。群分けや TAE 所見に関しては、2 名の IVR 専門医がそれぞれレビューを行い、合議によってコンセンサスを得た。技術的成功は、TAE 直後の血管造影および産婦人科医による内診で止血が確認出来ている事、臨床的成功は再 TAE や手術などによる再止血術を要さない事とそれぞれ定義した。統計学的検討は、EZR software を使用し、量的変数に関しては Mann-Whitney’s U test、質的変数に関しては Fisher’s exact test を使用した。統計学的有意水準は、いずれも p < 0.05 とした。

【結果】
27 例の患者のうち S-TAE 群は 21 例、P-TAE 群は 6 例であった。単変量解析では、平均年齢、出産歴、産後出血の発症時期、手技前の貧血や凝固能異常、shock index や大量輸血の有無などの患者背景因子に関して 2 群間での有意差を認めなかった。一方で手技前の造影 CT に関しては、S-TAE 群で有意に多く実施されていた(S-TAE 群: 19/21 例、P-TAE 群:2/6 例、p=0.011)。27 例で 34 血管からの出血が同定され、責任血管は腟動脈が 17 例(50%)で最も多く、次いで会陰動脈 8 例(23%)、内陰部動脈 4 例(12%)、閉鎖動脈 3 例(9%)、下腸間膜動脈 1 例(3%)、下直腸動脈 1 例(3%)であった。7 例において出血の責任血管として複数本(2 本)が関与していた。また血腫の位置や責任血管の本数、手技時間、在院日数に関しては、2 群間で有意差を認めなかったが、塞栓物質に関しては S-TAE 群でより多く永久塞栓物質である n-butyl- 2-cyanoacrylate (NBCA) が使用されていた(S-TAE 群:15/21 例、P-TAE 群:0/6例、p=0.0031)。技術的かつ臨床的成功率は、S-TAE 群で 100% (21/21 例) であったのに対し、P-TAE 群は 67% (4/6 例) であり、S-TAE 群で有意に成功率が高かった(p=0.04)。P-TAE 群のうち、技術的不成功例(1/6 例)は腟内のガーゼパッキングで止血に成功し、臨床的不成功例(1/6 例)では超選択的な再 TAE を行う事で止血を得た。合併症に関しては、在院中(6.12 ± 3.93 日)に重篤な合併症は 1 例も認めず、全例で後遺症なく生存退院となった。

【考察】
経腟分娩後の産道損傷に対する S-TAE は、過去の他家の報告(技術的成功率:96%、臨床的成功率:88%)と比べて特に臨床的成功率で高い傾向にあった。S-TAE で破綻部を含めて超選択的に塞栓する事は、元々潜在的な血管吻合が豊富な骨盤領域において、吻合枝を介した再出血の予防に役立っているものと考えられた。また超選択的に破綻部にカテーテルを進めてピンポイントで液体の永久塞栓物質である NBCA を使用する事でより効果的な塞栓が実施出来ているものと考えられた。今回の検討では、出血の責任血管として複数の血管が同定された。手技前の造影 CT は、S-TAE 群で有意に多く実施されていた。手技前の造影 CT では全例で活動性出血が描出されており、責任血管の同定に寄与した可能性がある。当研究の限界として研究デザイン(単施設後ろ向き)、症例数が少ない事、塞栓手技が完全に同一ではない事(複数の術者によって実施)、経過観察期間が短い事が挙げられた。

【結論】
経腟分娩後の産道損傷に対する S-TAE は有効かつ安全な止血手段と考えられる。手技前の造影 CT は、責任血管の同定に役立ち、S-TAE 実施の一助となっている可能性がある。

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