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大学・研究所にある論文を検索できる 「頭頚部再建における内頚静脈血栓と肺塞栓症」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

頭頚部再建における内頚静脈血栓と肺塞栓症

北野, 大希 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Internal jugular vein thrombosis and pulmonary
thromboembolism after head and neck
reconstructive surgery

北野, 大希
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8505号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482253
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

学位論文の内容要旨

Internal jugular vein thrombosis and pulmonary thromboembolism
after head and neck reconstructive surgery

頭頚部再建における内頚静脈血栓と肺塞栓症

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
形成外科学
(指導教員:寺師浩人 教授)

北野

大希

論文要旨
頭頚部がん切除後の遊離皮弁による再建(頭頚部再建)の術後合併症の一つに,内頚静脈血栓
(internal jugular vein thrombosis, IJVT)による遊離皮弁の静脈還流不全がある。IJVT の原
因として,頚部郭清や過去の放射線照射,感染などによる血管障害が関与していると考えられ
ている。過去の報告から,IJVT は約 20%程度の症例で見られると考えられている。しかし,
実際に IJVT が原因で遊離皮弁の静脈還流不全を来す症例は,全体の 1%未満である。これは,
例え IJVT であっても,必ずしも血管内腔全てが血栓で満たされているとは限らないため,遊
離皮弁の静脈還流不全まで至らない(側副血行路を通じて皮弁の血流が確保されている)こと
がほとんどである。また,頭頚部再建後の IJVT という疾患自体は,両側性に生じて顔面浮腫
を来す場合など特殊な場合を除いて,その殆どが無症候性である。以上のことから,対処法に
関して議論の対象となることが少なかった。
しかし,主に内科領域で IJVT と言えば,しばしば準緊急的な治療対象となり得る疾患であ
る。例えば,中心静脈カテーテルの留置によって IJVT を発症した場合,肺塞栓症(Pulmonary
thromboembolism, PTE)を併発し重篤な経過を辿ることも珍しくないことから,抗凝固療法
の是非が問われる。頭頚部再建後の IJVT に関して文献を渉猟したところ,IJVT による皮弁
の静脈還流不全を防止する目的で短期的に行う抗凝固療法の是非を問う文献が数例存在して
いたが,規模の大きな研究や長期的な抗凝固療法の意義に関する議論は皆無に等しいのが現
状であった。そこでわれわれは,IJVT とその続発症,特に PTE の発生と治療について研究
することとした。
今回われわれは,兵庫県立がんセンターにおいて施行された遊離皮弁を用いた頭頸部再建手
術 118 例を対象とした。まず,診療録を元に IJVT の発生率を求めた。術中に内頚静脈内に
血栓を見つけたもの,遊離皮弁の壊死により血栓が発覚したもの,そして術後頚部超音波や
CT で血栓を指摘されたもの,上記のいずれかを満たせば IJVT と診断した。次に,IJVT に
よる皮弁の静脈還流不全,および PTE の発生率を調査した。対象となった 118 患者のうち,
頚部郭清後の内頚静脈 (internal jugular vein, IJV)は 133 本で,先に挙げた手法で血栓の有
無の評価が可能であった IJV は 116 本(108 患者)であった。
IJVT は,
25 本(21.6%)
に生じていた。血管再吻合を要した皮弁トラブルは全体で 4 例
(3.4%)
に生じ,その内,1 例(0.8%)は IJVT による静脈還流不全が原因と考えられた。また,IJVT
が原因と考えられる PTE が 2 例(1.7%)に生じていた。1 例は術後 20 日目に突如胸痛と息
切れを訴えたため,器質的疾患を疑い胸部造影 CT を撮影したところ PTE の診断に至った。
もう 1 例は無症状であり,術後 7 日目に頚部精査目的に撮影された造影 CT で偶然 PTE を指
摘された。いずれの症例も IJVT 以外の血栓症,つまり下肢 DVT や上肢 DVT は明らかでは
なかった。症状の有無に関わらず,両症例ともに全身状態が良好であったため,Edoxaban の
内服による抗凝固療法が 3 か月間施行され,血栓の消失が確認され退院した。抗凝固療法に

よる副作用(出血)は認められなかった。
われわれの調査により,頭頚部再建後の IJVT は,皮弁の静脈還流不全だけでなく,PTE の
発症にも関与している可能性が示唆された。幸いなことに,われわれの経験した PTE の 2 症
例はいずれも軽症であったが,PTE は重篤な経過に至る場合も珍しくないことに注意が必要
である。以上より,頭頚部再建後の IJVT に対する抗凝固療法は,皮弁の静脈還流不全予防
だけでなく,PTE の発生予防という観点からも検討されうるべき課題であると考えられた。
ただし,IJVT の治療に関しては,頭頚部再建の手術後であることを考慮し,抗凝固療法に伴
う副作用(出血を誘発する危険性)に留意する必要がある。例えば,われわれは,頭頚部再建
後の血流トラブル防止を目的とした予防的抗凝固療法はルーチンで行っていない。なぜなら,
予防的抗凝固療法は皮弁喪失率および血栓症発症率にはプラスの影響を及ぼさず,むしろ血
腫形成とそれに伴う合併症の発生率を高める(皮弁壊死の確率も高まる)と報告されているた
めである。周術期に抗凝固療法を行うことで術後出血リスクが高まることは明らかであるか
ら,抗凝固療法により得られる利益と不利益をよく整理し,慎重に適用を考える必要がある。
また,周術期を過ぎて中長期的に抗凝固療法を行う場合,最適な治療期間に関しても議論が必
要である。ある調査によると,PTE を含む血栓塞栓症に対して抗凝固療法を行い,治療期間
別にみた再発率を比較したところ,3 か月を境にプラトーに達し,それ以降は不利益(出血な
ど)が利益を上回ると指摘されていた。以上からわれわれは,抗凝固療法の施行期間は 3 か
月程度を目安とし,血栓が消失していれば漫然と治療を続けないように心掛けている。
今回の調査の限界として,単施設での検討であり症例数に限界があること,後方視的研究であ
ること,また胸部の画像検査を行っていない症例も存在するため実際には無症候性の PTE が
発生している可能性が否定出来ないことなどが挙げられる。本論文により,頭頚部再建後の
IJVT と PTE の関係性について,今後更なる調査が行われることが望まれる。

神戸大学大学院医学(

)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨


受付番号

甲 第 3249号

論文題目

I
n
t
e
r
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g
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l
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e
i
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T
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n

頭頸部再建における内頸静脈血栓症と肺塞栓症





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fExaminer
審 査 委 員 副

E
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1
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V
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1
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r



北野大希

叶疹 h 〗---

叶/朽平ジ
了\q 虔

(要旨は 1, 0 0 0字 ∼ 2, 0 0 0字程度)



.

背景
頭頸部がん切除後の遊離皮弁による再建(頭頸部再建)の術後合併症の一つに,内頸静脈血栓 (
i
n
t
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r
n
a
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jugularveint
h
r
o
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b
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i
s
,I
]
V
T
)による遊離皮弁の静脈還流不全がある。 I
J
V
Tの原因として,頸部郭清
や過去の放射線照射,感染などによる血管障害が関与していると考えられおり、過去の報告では, I
J
V
T
は約 20
%程度の症例で見られている。しかし,実際に I
J
V
Tが原因で遊離皮弁の静脈還流不全を来す症例
は,全体の 1
%末満であり、例え I
J
V
Tであっても,必ずしも血管内腔全てが血栓で満たされているとは
限らず,遊離皮弁の静脈還流不全まで至らない(側副血行路を通じて皮弁の血流が確保されている)もの

J
V
T という疾患自体は,両側性に生じて顔面浮腫を来す場合など
と思われる。また,頭頸部再建後の I
特殊な場合を除いて,その殆どが無症侯性であり、これまで対処法に関して議論の対象となることが少
なかった。

J
V
Tと言えば, しばしば準緊急的な治療対象となり得る疾患である。例え
しかし,主に内科領域で I
J
V
T を発症した場合,肺塞栓症 (
P
ul
m
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e
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ば,中心静脈カテーテルの留置によって I
P
T
E
)を併発し重篤な経過を辿ることも珍しくないことから,抗凝固療法の是非が問われる。頭頸部再建
JVT に関して文献を渉猟したところ,I
J
V
T による皮弁の静脈遠流不全を防止する目的で短期的に
後の I
行う抗凝固療法の是非を問う文献が数例存在していたが,規模の大きな研究や長期的な抗凝固療法の意
義に関する議論は皆無に等しいのが現状であった。

目的と方法

J
V
Tとその続発症,特に P
T
Eの発生 と治療について研究することとした。 今回
そこで、われわれは, I
われわれは,兵庫県立がんセンターにおいて施行された遊離皮弁を用いた頭頸部再建手術 118例を対象

J
V
T の発生率を求めた。術中に内頸静脈内に血栓を見つけたもの,遊離
とした。 まず,診療録を元に I
皮弁の壊死により血栓が発覚したもの,そして術後頸部超音波や CTで血栓を指摘されたもの,上記の

J
V
Tと診断した。次に, I
J
V
Tによる皮弁の静脈還流不全,および PTE の発生率を
いずれかを満たせば I
i
n
t
e
r
n
a
lj
u
g
u
l
a
rv
e
i
n
, UV)は 1
3
3
調査した。対象となった 118 患者のうち ,頸部郭清後の内頸静脈 (
本で,先に挙げた手法で血栓の有無の評価か可能であった I
]
V
l1
6本 (
1
0
8患者)を対象として解析した。
結果

I
J
V
Tは
, 25本 (
2
1
.6%

に生 じていた。血管再吻合を要した皮弁トラブルは全体で 4 例 (
3.
4%
)に生じ,
0
.8%

は I
J
V
T による静脈還流不全が原因と考えられた。また, I
J
V
Tが原因と考えられる
その内, 1例 (
PTEが 2例 (
1
.7%
)に生じていた。 1例 は術後 20 日目に突如胸痛と息切れを訴えたため,器質的疾患を
疑い胸部造影 CT を撮影したところ PTE の診断に至った。 もう l例は無症状であり,術後 7日目に

Tで偶然 PTE を指摘された。いずれの症例も I
J
V
T以外の血栓症,つ
頸部精査目的に撮影された造影 C
V
Tや上肢 D
V
T は明らかではなかった。症状の有無に関わらず,両症例ともに全身状態が良
まり下肢 D
d
o
x
a
b
a
nの内服による抗凝固療法が 3ヶ月間施行され,血栓の消失が確認され退院し
好であったため, E
J
V
T
た。抗凝固療法による副作用(出血)は認められなかった。われわれの調査により,頭頸部再建後の I
は,皮弁の静脈還流不全だけでなく, PTE の発症にも関与している可能性が示唆された。幸いなことに,

われわれの経験した P
T
Eの 2症例はいずれも軽症であったが, P
T
Eは重篤な経過に至る場合も珍しく
ないことに注意が必要である。

考察
以上より ,頭頸部再建後の I
J
V
T に対する抗凝固療法は,皮弁の静脈還流不全予防だけではなく ,P
T
E
の発生予防という観点からも検言寸されうるべき課題であると考えられた。ただし, I
J
V
Tの治療に関して
は,頭頸部再建の手術後であることを考慮し,抗凝固療法に伴う副作用(出血を誘発する危険性)に留意
する必要がある。例えば,われわれは,頭頸部再後の血流トラブル防止を目的とした予防的抗凝固療
法はルーチンでは行っていない。 なぜなら , 予防的抗凝固療法は皮弁喪失率および血栓症発症率には
プラスの影孵を及ぼさず,むしろ血腫形成とそれに伴う合併症の発生率を高める(皮弁壊死の確率も高
まる)と報告されているためである 。周術期に抗凝固療法を行うことで術後出血リスクが高まることは
明らかであるから,抗凝固療法により得られる利益と不利益をよく整理し,慎重に適用を考える必要が
ある 。 また,周術期を過ぎて中長期的に抗凝固療法を行う場合,最適な治療期間に関しても織論が必
要である。ある調査によると, PTE を含む血栓塞栓症に対して抗凝固療法を行い,治療期間別にみた再
発率を比較したと ころ
, 3ヶ月を境にプラトーに達し,それ以降は不利益(出血など)が利益を上回ると
指摘されていた。以上からわれわれは,抗凝固療法の施行期間は 3ヶ月程度を目安とし,血栓が消失し
ていれば漫然と治療を続けないように心掛けている 。 今回の調査の限界として,単施設での検討であ
り症例数に限界があること,後方視的研究であること,また胸部の画像検査を行って いない症例も存在

T
Eが発生している可能性が否定出来ないことなどが挙げられる 。本論文
するため実際には無症候性の P
J
V
Tと P
T
Eの関係性について,今後更なる調査が行われることが望まれる。
により,頭頸部再建後の I
結論
本研究は頭頸部癌切除後の有利組織移植再建について、 重篤な術後合併症である内頸静脈血栓症を研究
したものであるが、従来ほとんど行われなかった内頸静脈血栓症と肺塞栓症との関係について重要な知
見を得たものとして価値ある集稜であると認める 。 よって、本研究者 は、博士 (
医学)の学位を得る賓
格があると認める。

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