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児童自立支援施設職員のバーンアウト傾向に及ぼす個人的・環境的要因の検討

渡邉 由紀 山梨大学 DOI:info:doi/10.34429/00005152

2022.03.18

概要

児童自立支援施設職員のバーンアウト傾向についての知見は,看護師や教師といった他の対人援助職の知見に比べてきわめて乏しい。本研究では,児童自立支援施設職員のバーンアウト傾向に関連する要因が他のヒューマン・サービスの専門職と同様なのか,違うとすればどのような点なのかについて検討することを目的とし,中部地区の児童自立支援施設( 11施設)を対象に質問紙調査を行った。質問紙の内容は,性別や勤務年数等のデモグラフィック変数と,「バーンアウト傾向」「レジリエンス」「コーピング」「非ストレス環境」に関する調査項目で構成された。「非ストレス環境」に関しては独自の調査項目であったため,探索的因子分析( プロマックス回転)を実施し,スクリープロットや因子負荷量を参考に項目を絞り込みながらくり返し実施したところ,3因子解が適当と判断された。第Ⅰ因子は「良好な労働環境」,第Ⅱ因子は「職務上のスキルに関する自信」,第Ⅲ因子は「児童との関係性と効力感」とそれぞれ命名された。

バーンアウト傾向の3側面を従属変数とし,レジリエンス2側面,コーピング3側面,非ストレス環境 3側面を独立変数とした重回帰分析を行ったところ,情緒的消耗感については,非ストレス環境3側面の「良好な労働環境」,「職務上のスキルに関する自信」,「児童との関係性と効力感」のいずれもが,有意な負の値を示し,コーピング3側面については「症状対処」のみ有意な正の値を示した。脱人格化については,非ストレス環境3側面のうち「良好な労働環境」,「児童との関係性と効力感」の2つが有意な負の値を示し,コーピング3側面については「回避的行動・認知」のみ有意な正の値を示した。個人的達成感の低下については,非ストレス環境3側面のうち「良好な労働環境」,「職務上のスキルに関する自信」の2つが有意な負の値を示した。

なお,レジリエンス2側面は,バーンアウト傾向のいずれの側面3側面についても有意ではなかった。
以上のことから,児童自立支援施設の職員のバーンアウト傾向は,職場の人間関係や施設の方針等の労働環境,職場の期待にこたえられているかどうかや仕事に対する自信などが大きく影響しており,その傾向は看護師をはじめとする他の対人援助職の傾向と概ね同様といえることが明らかにされた。また,男性より女性の方がより高いバーンアウト傾向を有していた点も,他の対人援助職の傾向と概ね一致していた。しかし一方で,勤務の環境差に関しては,「担当実務をこえて仕事をする場合がある」を選択した場合に,個人的達成感が低下しない傾向があることが示された。これは,利他的な奉仕的精神がバーンアウトのリスクを高めるというヒューマン・サービスの性格特性とは一見異なる結果であった。この結果は,担当実務をこえてする仕事に,ある程度の裁量を任された場合,自分の意見や考えを業務内容に反映できることで,やりたいことに挑戦できたり,それが責任のある仕事であればやりがいを感じることが増えることによるとも考えられる。また,児童自立支援施設の現場では,職員間で連携することを『一枚岩になる』と表現することがあるが,職員が一つのチームとしてうまく機能している時,担当実務をこえて仕事をする場合があれば,それは仕事へのやりがい, つまり個人的達成感につながる可能性も考えられる。

本研究の結果に基づいて,職員の労働環境を良好に保つことでバーンアウトへの予防的対応が期待できると考えられる。
今後の課題としては,本研究が縦断的研究ではないため因果関係を確定できないこと,また, サンプルサイズが小さいため知見の一般化には慎重さが求められることが挙げられる。

参考文献

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平野真理・梅原沙衣加(2018).レジリエンスの資質的・獲得的側面の理解にむけた系統的レビュー,東京家政大学研究紀要,第 58 集(1),pp.61‐69

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