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大学・研究所にある論文を検索できる 「可溶性CD14は関節リウマチ由来線維芽細胞様滑膜細胞においてToll-Like Receptor 4を介して炎症性サイトカインを誘導する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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可溶性CD14は関節リウマチ由来線維芽細胞様滑膜細胞においてToll-Like Receptor 4を介して炎症性サイトカインを誘導する

Ichise, Yoshihide 神戸大学

2021.03.25

概要

【背景】
 関節リウマチ(RA)は慢性の滑膜炎により骨・軟骨破壊を来す疾患である。RAにおいて線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)は、滑膜炎を構成する重要な細胞のひとつであり、置かれた炎症環境の影響を受け、自らもサイトカイン、ケモカイン、MMPの産生や接着分子の発現などにより炎症を促進する。このことは、FLSを標的とした治療薬がTNF-α阻害薬などの補完的な治療薬となり得ることを示唆している。
 CD14は、単球、樹状細胞、好中球の細胞表面マーカーとして特徴づけられ、LPSの受容体としても働く。CD14は膜貫通ドメインを欠いているため、直接シグナルを伝達することはできない。CD14と結合したLPSはTLR-4とMD-2の複合体に移送され、そこで細胞内シグナルが伝達される。CD14は膜型以外に可溶性CD14(sCD14)も存在する。RA患者の血清、滑液および尿のsCD14濃度は、変形性関節症(0A)患者や健常者よりも高いことが報告されている。更に血清および尿のsCD14濃度がRAの疾患活動性に相関していることが示されている。ただし、RAの病態におけるsCD14の役割は明らかではない。

【目的】
 本研究ではRAの病態におけるsCD14の潜在的な役割を調べるために、sCD14がRA患者由来FLS(RA-FLS)にシグナルを伝達するかを検討した。

【方法】
 RA-FLSは、神戸大学医学部附属病院整形外科で関節置換手術または滑膜切除術を施行されたRA患者のうち、インフォームドコンセントが得られた患者の滑膜から単離した。
 最初に、sCD14によるIL-6産生への影響を評価した。RA-FLSにそれぞれ0、5、50、500ng/mlのsCD14を添加して6時間培養し、IL-6のmRNA相対的発現量をreal-time PCRで評価した。また、RA-FLSに500ng/mlのsCD14を添加して6時間後まで培養し、IL-6のmRNA相対的発現量の推移をreal-time PCRで評価した。また、RA-FLSに500ng/mlのsCD14を添加して24時間培養し、IL-6蛋白産生量をELISAで評価した。
 更に、sCD14によるIL-8、ICAM-1、IL-1β、TNF-α、GM-CSF、CCL-5、CXCL10、MMP-3、C0X-2およびRANKLの発現への影響を評価した。RA-FLSに500ng/mlのsCD14を添加し、3時間および6時間培養後に、これらのmRNAの相対的発現量をreal-time PCRで評価した。
 また、sCD14の細胞増殖への影響を検討した。RA-FLSにそれぞれ0、500、2,000ng/mlのsCD14を添加して24時間培養し、BrdUアッセイで評価した。
 続いて、sCD14によるシグナル伝達がTLR-4を介しているのかを検討した。RA-FLSにsCD14を添加する前にTLR-4アンタゴニストであるLPS-RSを添加する群と添加しない群に分けて、IL-6、IL-8、ICAM-1のmRNAの相対的発現量をreal-time PCRで評価した。
 最後に、TNF-αやIL-17AがsCD14の作用を増強するかを検討した。まず、RA-FLSにそれぞれ10ng/mlのTNF-α、IL-17Aを添加して3時間培養し、TLR-4のmRNAの相対的発現量をreal-time PCRで評価した。次に、RA-FLSにmedium、sCD14 500ng/ml、TNF-α(またはIL-17A)10ng/ml、sCD14+TNF-α(またはIL-17A)を添加する4群に分けて、それぞれを添加した後3時間培養し、IL-6のmRNAの相対的発現量をreal-time PCRで評価した。

【結果】
 RA-FLSにsCDM500ng/mlを添加するとIL-6のmRNA発現が亢進し、発現量は刺激後3時間時点で最高値に達した。そして、sCD14を添加して24時間培養すると、IL-6蛋白産生量が増加した。これらの結果より、sCD14はRA-FLSのIL-6産生を亢進させることが示唆された。
 sCD14 500ng/mlを添加すると、IL-8、ICAM-1、IL-1β、TNF-α、GM-CSF、CCL-5、CXCL10、MMP-3、C0X-2のmRNA発現は刺激後3時間で、RANKLのmRNA発現は刺激後6時間で亢進した。これらの結果より、sCD14はRA-FLSにおける複数のサイトカインやケモカインなどの発現を亢進することでRAの病態形成に関わっていることが示唆された。
 sCD14 2,000ng/m1を添加して24時間培養すると、細胞増殖が促進した。この結果より、sCD14が滑膜過形成に関わっていることが示唆された。
 sCD14を添加する前にLPS-RSを添加しておくと、sCD14刺激によるIL-6、IL-8、ICAM-1などのmRNAの亢進は阻害された。この結果より、sCD14はTLR-4を介してRA-FLSにシグナルを伝達することが示めされた。
 TNF-αあるいはIL-17Aで刺激すると、RA-FLSにおけるTLR-4のmRNA発現が亢進した。次に、sCD14にTNF-αあるいはIL-17Aを加えて刺激すると、それぞれ単独で刺激するよりもIL-6のmRNA発現が亢進した。これらの結果より、TNF-αあるいはIL-17Aは、RA-FLSのTLR-4の発現を増加させて、sCD14に対する反応を増幅させることが示唆された。

【考察】
 本研究で我々は、RAにおいてsCD14は内因性の炎症誘発因子として重要な役割を果たしていることを初めて報告した。
 sCD14がLPSの非存在下において単独でRA-FLSの炎症を引き起こし、細胞増殖を促進することを示した。培養液中にpolymyxin Bを加えても結果に影響を与えなかったことから、IL-6産生はLPSのコンタミネーションによるものではないことを確認した。RA患者の滑液中のsCD14濃度は2,800(2,100-3,300)ng/mlという報告があり、今回我々が用いたsCD14の濃度は比較的低値と言える。sCD14の細胞増殖への作用は比較的弱かったが、炎症性サイトカイン、ケモカイン、メディエーターの発現においては500ng/mlという低用量で強い作用を示した。これらの結果から、sCD14は関節滑膜の炎症、過形成、血管新生、炎症局所への免疫細胞浸潤、破骨細胞分化、マトリックス破壊を促進することにより、RAの病態形成に関わっていることが示唆された。
 sCD14の産生については、細胞表面からの切離、エキソサイトーシスなどいくつかの機序が言われている。IL-6剌激によりHep2G2がヘパトーマ細胞やPBMCからsCD14が産生されたという報告と本研究結果を合わせると、sCD14がRA-FLSを活性化し、活性化されたRA-FLSから産生されたIL-6が肝細胞や単球からsCD14産生を引き起こすという正のフィードバックループの存在が示唆される。また、sCD14がエキソサイトーシスされるということからは、sCD14はダメージ関連分子パターン(DAMPs)の一つとして働いていることが示唆される。RA患者の滑液中におけるsCD14産生亢進の機序については更なる研究が必要である。
 我々は、RA-FLSにおいてTLR-4を阻害するとsCD14刺激によるサイトカイン等の発現亢進が阻害されることを示した。sCD14は0A患者由来FLS(0A-FLS)に対しては単独ではシグナルを伝達しないことが報告されている。加えて、sCD14はマクロファージや口腔上皮細胞にシグナルを伝達する一方で、ヒト冠動脈内皮細胞にはシグナノレを伝達しないことが報告されている。これらの細胞腫間での反応の違いがなぜ起こるのかは知られていないが、RA-FLSは0A-FLSよりもTLR-4を多く発現していること、マクロファージと口腔上皮細胞はTLR-4を発現しているがヒト冠動脈内皮細胞はTLR-4を発現していないこと、更にTLR-4を阻害することでsCD14によるRA-FLSへのシグナル伝達は阻害されるという本研究結果を合わせると、TLR-4の発現量がsCD14に対する感受性に関わっている可能性が示唆される。
 我々はsCD14の効果がTNF-αまたはIL-17Aの存在下で増強されることを示したσTNF-αやIL-17Aの刺激によって、RA-FLSにおけるTLR-4の発現量が増加した。TNF-αやIL-17Aは、直接RA-FLSの炎症性サイトカイン産生を誘導するのみならず、TLR-4発現を亢進させることによりsCD14に対する感受性を高めることでもRAの病態形成に関わっているのかもしれない。

【結論】
 sCD14はTLR-4を介してRA-FLSに炎症性シグナルを伝達する。sCD14の効果は、炎症性環境で増強される可能性がある。我々の結果は、sCD14がRAの病態形成に関与しており、新たな治療標的となる可能性を示唆している。

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