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大学・研究所にある論文を検索できる 「A novel method for isolating lymphatic endothelial cells from lymphatic malformations and detecting PIK3CA somatic mutation in these isolated cells」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A novel method for isolating lymphatic endothelial cells from lymphatic malformations and detecting PIK3CA somatic mutation in these isolated cells

臼井 秀仁 横浜市立大学

2021.03.25

概要

【序論】
 リンパ管腫はリンパ管奇形(lymphatic malformation, LM)とも呼ばれる先天性の腫瘤性疾患である.組織学的には良性疾患だが, 腫瘤の局在とサイズによって重篤な症状をきたし, 治療に難渋する.特に気道狭窄を伴う頸部LMは重症であり, 気管切開を行いつつ硬化療法や外科手術などが行われているが, 標準化された治療とはいえない(血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン, 2017).気管切開を要さず, 安全で確実な治療法の確立が望まれている.
 LMの病因・病態は現在も不明であり, 病態に基づいた治療もなかった.しかし近年, LM内皮細胞(LM-lymphatic endothelial cells, LM-LEC)の分離培養やmammalian target of rapamycin(mTOR)阻害薬の有効性などが報告されており, 病態の研究とそれに基づいた治療の進展が期待されている.しかしこれまでに報告されたLM-LECの分離方法には問題点があるため, 新たな分離方法(内腔消化法)の開発が必要と考えられた.

【実験材料と方法】
基礎研究
 外科切除を行ったLM7例を対象とし内腔消化法によるLM-LECの分離培養を試みた.LMの嚢胞内を洗浄の上でトリプシンを注入し, 2分40秒間の嚢胞内腔消化処理を行い, 回収液の培養を行った.分離培養された細胞の性状観察, ポドプラニン染色を行い, RT-qPCRでLECの特異遺伝子の発現を調べた.3例で全エクソーム解析を行って血液遺伝子と比較, 追加4例は候補遺伝子のターゲットリシーケンスを行い, 血液遺伝子と比較した.
臨床研究
 気道狭窄を来した頸部LM11例(日齢4-4歳)を対象とし, バルーン補助下超音波ガイド硬化療法(UBAS)を行った.11例中10例は入院時に陥没呼吸などの気道症状を呈し, うち8例は気管挿管などの気道補助装置を要していた.全身麻酔下に狭窄した上気道内にバルーンカテーテルを留置し, これを指標に超音波ガイド下に, 気道狭窄の責任病巣を穿刺し, ブレオマイシン注入を行った.術前評価, UBAS, 治療後の気道管理, 評価までを1コースと定義した.気道狭窄とそのリスクが消失した時点で治療完了とし, 治療完了までコースを追加した.

【結果】
基礎研究
 7症例全例で細胞の分離培養に成功した.敷石状の形態を示し, ポドプラニンを発現していた.LECに特異的な遺伝子の発現を認め, 同細胞をLM-LECと結論付けた.全エクソーム解析で3例におけるLM-LECのみのPIK3CA変異を認め, 残り4例でも同様の変異を認めた.PIK3CA変異の85.7%が, 同遺伝子の変異が集中するホットスポットの変異であった.
臨床研究
 UBAS治療後に気道補助を要していた8例中7例が, 治療1コースで気道補助より離脱でき, 残る1例も2コース目で離脱した.治療から気道補助の離脱までに要した日数は中央値15日(気管切開2例を除く).2例の気管切開例も離脱に成功した.治療完了に中央値2コースの治療を要した.明らかな合併症を認めなかった.

【考察】
 LM組織には少量のLM-LECと多数の間質細胞が含まれる.LMの病態の本体はLM-LECにあると考えられており(Blesinger H et al. 2018), LM組織中よりLM-LECのみを分離培養する方法が模索されてきた.これまでの分離報告はLECの特異抗体を用いたものであり(Osborn AJ et al. 2015), LMを粉砕した後に, セルソーターを用いてLM-LECを分離する.しかし, Kawai et al.(2007)が述べたように, 複数のリンパ組織や交差抗原をもつ組織の混入がある場合, 抗体法ではその区別ができない.このため, LMに応用すると正常LECや腹膜中皮細胞の混入が生じる.これに対し我々のLM嚢胞内腔消化法は特異抗原に依存しない分離方法であり, 他組織の混入を防ぎながらLM-LECを分離できる.自験例では全例でPIK3CA変異を認めた.PIK3CAはPI3Kの触媒サブユニットをコードし, PI3K/Akt/mTOR経路などを構成する.この変異は機能亢進が示唆され, 同経路の亢進がLMの病態に関与することが示唆される.これは近年注目されるmTOR阻害薬のLMに対する効果とも符合する.今後は遺伝子変異と薬の効果との関連性などの検討を進める事で, さらなる治療や病態解明に繋がる可能性がある.
 気道狭窄を伴うLMの硬化療法は, 術後の反応性腫脹による窒息のリスクがあり, 長期挿管や気管切開などを要する事が多い.切除術を選択すべきとする報告もあるが(Defnet et al. 2016), 手術には血管・神経・筋肉損傷による機能的障害, 美容的問題, 高い再発率など非常に多くの問題がある(Gaffuri M et al. 2019).我々のUBASは硬化療法であるが, 術前や術中の画像検査により正確に把握した気道狭窄の責任LM病巣に限定して組織反応の少ないブレオマイシンを必要最小量注入する治療である.その結果, 術後の腫脹を最小限に留め短期間の気道確保のみで病変を縮小させることができた.気道狭窄部に留置したバルーンは狭窄部の指標および音響窓となり, 術中超音波検査下での責任LM病変の同定と正確な局注に有用であった.手術や気管切開を要さず, LMを縮小させうる治療法といえる.

この論文で使われている画像

参考文献

Blesinge r H, Kaul fuß S, Aung T, Schwoch S, Prantl L , Rößl er J, Wilting J, B ecker J. (2018). PIK3C A mutations are speci ficall y local ized to lymphatic endothelial cell s of l ymphati c mal formati ons. PLoS One. 7, e0200343.

Defnet AM, Bagrodia N , Hernandez SL , Gwi lliam N , Kandel JJ. (2016). P ediatri c l ymphati c mal formations: evolving und erstanding and therapeuti c options. Pediatr Surg Int. 32, 425 -433.

Gaffuri M, Torretta S, Iofrida E, C antarella G, Borzani IM, Ciralli F, Calderini E , L eva E, Iurlaro E, Mosca F, Pignataro L. (2019). Multidisciplinary Management of Congeni tal Giant Head and N eck Masses: Our E xperi ence and Revi ew of the L iterature. J Pediatr Surg. 54, 733 -739.

Kawai Y, Minami T, Fujimori M, Hosaka K, Mi zuno R, Ikomi F, Kodama T, Ohhashi T. (2007). Characteri zation and microarray analysis of genes in human l ymphatic endothelial cells from pati ents wi th breast cancer. Lymphat Res Bi ol . 5, 115 -126.

血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン,(2017),「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班

Osborn AJ, Dickie P, Neils on DE , Glaser K, Lynch KA , Gupta A , Dickie B H. (2015). Acti vating PIK3CA allel es and lymphangi ogenic phenotype of lymphati c endothelial cells isolated from lymphati c mal formations. Hum Mol Genet. 24, 926 -938.

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