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大学・研究所にある論文を検索できる 「Cytotoxic T cell(CTL)介在性白斑におけるFas-FasL経路の関与、およびメラノサイトのFas誘導性アポトーシスに対する病変部のTNF-αとIFN-γの役割について」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Cytotoxic T cell(CTL)介在性白斑におけるFas-FasL経路の関与、およびメラノサイトのFas誘導性アポトーシスに対する病変部のTNF-αとIFN-γの役割について

Jimbo, Haruki 神戸大学

2020.03.25

概要

背景
尋常性白斑は表皮メラノサイトが消失する結果生じる後天性の脱色素性疾患である。白斑患者の血中や病変部周囲皮膚にメラノサイトを特異的に認識する細胞障害性 T リ ンパ球(CTL)が検出されており、メラノサイト消失の機序に CTL の関与が古くから示 唆されている。CTL はグランザイム B/パーフォリンのような細胞障害性メディエータ ーの放出、もしくは Fas-Fas Ligand (FasL)経路という2種の異なる経路を介して標的細 胞に直接的な細胞障害をもたらし得る。白斑患者の病変部組織において、グランザイムB/パーフォリン陽性細胞を認めるという報告やFasL 陽性細胞を認めるという報告が あり、また tumor necrosis factor (TNF)-α や interferon (IFN)-γ などの炎症性サイトカイン の増加を伴うという報告もある。マウスの白斑モデルにおいても、この2つの経路に 関する報告が少ないながら存在し、パーフォリンの関与の有無については CTL を介し た白斑モデルにおいて報告により異なる結果となっている。また Fas-FasL 経路につい ては CD4 陽性 T リンパ球を介した白斑モデルの1つでその関与が証明されているが、 CTL を介したモデルではその関与が否定的な報告がある。以上の結果から、マウスの モデルでは白斑誘導の方法により、主体となる経路が異なる可能性が示唆される。

方法
本研究では Byrne らの報告(2011)にならい CTL を介した白斑を誘導するモデルを用いた。B16F10 メラノーマ細胞を C57BL/6 マウスの右臀部に接種し、day4 と day10に抗 CD4 抗体(clone GK1.5)を投与し、day12 に B16F10 腫瘍を外科的に切除した。その後、白斑様変化が出現するのを観察した。

正常ヒト表皮メラノサイト(NHEM)と培養液はクラボウより購入したものを用いた。リアルタイム RT-PCR およびフローサイトメトリー解析は標準プロトコールに従い施行した。細胞障害の評価は LDH assay (Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST; DOJINDO)を用いて行い、アポトーシスの解析には Annexin V /propidium iodine staining assay (Annexin V-FITC Apoptosis Detection Kit; Sigma)を用いた。カスパーゼ活性の測定には Caspase-Glo 3/7 Assay と Caspase-Glo 8 Assay (Promega)を使用した。siRNA によるノックダウン実験は、Pre-designed Silencer Select siRNAs (Thermo Fisher Scientific)を購入し行った。

実験は、少なくとも2回行った。2群間の比較はスチューデントの t 検定で、3群 以上の比較はテューキーの HSD 検定によるpost-hoc テストで比較し有意差を検定した。 P < 0.05 を有意差ありとし、データは mean ± SEM で表記した。

結果
C57BL/6 野生型マウスに誘導した白斑部では局所の IFN-γ および TNF-α の mRNA 発現は増加する傾向を認め、ヒトの白斑と同様の傾向であることを確認した。Fas が欠損している C57BL/6 lpr/lpr マウスにおいて白斑を誘導すると、野生型マウスと比較し白斑様変化はごくわずかにとどまった。この結果から、CTL を介した白斑誘導マウスでは Fas-FasL 経路が関与している可能性が示された。

次に白斑病変部で発現が上昇している TNF-α と IFN-γ が Fas 介在性のメラノサイトアポトーシスに対し、どのような影響を及ぼすかをNHEM を用いて調べた。まずNHEMにおける Fas の発現を調べたところ、TNF-α 単独刺激により Fas mRNA および細胞膜上の Fas 蛋白発現が増加し、さらに IFN-γ によって相乗的に増加することがリアルタイム RT-PCR およびフローサイトメトリーにより確認された。この結果から、白斑局所で増加している IFN-γ、TNF-α により Fas 発現が増加し、FasL によるアポトーシスが誘導されやすくなっている可能性を考えた。その可能性を検証するために、IFN-γ、TNF-αで前処置した NHEM に FasL 刺激を加え、LDH assay で細胞障害性を測定した。その結果、予想に反して、TNF-α によって細胞障害は抑制され、IFN-γ による相乗的な抑制効果も認めた。Annexin V / propidium iodide staining assay によるアポトーシスの評価においても同様の傾向を示すことを確認した。次に、アポトーシスにおいて重大な役割を担っているカスパーゼ活性を計測した。initiator caspase である Caspase 8 活性、および effector caspase である Caspase 3/7 活性も、TNF-α により抑制され、IFN-γ によって相乗的に抑制されることを確認した。このアポトーシス抑制機序を調べる目的で、IFN-γ と TNF-α によるメラノサイト刺激後の抗アポトーシス分子の発現を調べた。代表的な抗アポトーシス分子9種類の発現についてリアルタイム RT-PCR を用いて検討した結果、両サイトカイン刺激で相乗的に発現が上昇したのは、c-IAP2, c-FLIP, Mcl1 の3種であった。次に、これら3種の抗アポトーシス分子が実際に Fas 介在性アポトーシスの抑制に関与しているのかどうか調べるために、siRNA によるノックダウン実験を行った。その結果、LDH assay において、c-FLIP は細胞障害の抑制に寄与していたが、cIAP2 は有意な効果を認めず、両者の相乗効果も認めなかった。同様の実験を c-FLIP, MCL1 で行ったところ、c-FLIP と MCL1 が相乗的に細胞障害抑制に作用していることが確認できた。次に、Caspase 3/7 活性を測定したところ、c-FLIP siRNA, MCL1 siRNA によって、 IFN-γ と TNF-α による抑制効果が部分的にキャンセルされた。以上より、Fas 介在性のメラノサイトのアポトーシスを TNF-α と IFN-γ が相乗的に抑制する機序には、少なくとも c-FLIP と MCL1 が関与していることが示された。

TNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)は FasL と同様にアポトーシスを誘導する分子として知られている。白斑病変周囲には TRAIL を発現した樹状細胞が特異的に浸潤しているという報告があるため、FasL との関連について検討を行った。NHEM に対し、TRAIL、FasL、および両者の併用刺激を行い、Annexin V /propidium iodide staining assay を行ったところ、それぞれ単独刺激でアポトーシスが誘導され、両者の相乗効果も認めた。この結果から、白斑患者において FasL と TRAIL がメラノサイトの細胞障害に、協同的に作用している可能性も示唆された。

考察
本研究のマウスを用いた実験結果よりCTL を介した白斑形成にFas-FasL 経路が関与している可能性が示唆されたため、培養ヒトメラノサイトを用いて Fas を介したアポトーシスについて検討を行った。その結果、Fas を介したメラノサイトのアポトーシスを TNF-α が IFN-γ と相乗的に抑制することを見出した。既報告の多くは、TNF-α と IFN-γの刺激によって Fas 発現が増加し、その結果 Fas を介したアポトーシスが生じやすくなるというものであり、本研究の結果と異なるものである。少数ながら、TNF-α と IFN-γ刺激により抗アポトーシス分子である Bcl-xL の発現が低下し、それによって Fas を介したアポトーシスの感受性が亢進するという報告がある。今回の我々の実験では、 Bcl-xL は TNF-α と IFN-γ 刺激により影響を受けなかった。しかし、c-FLIP, MCL1 は、相乗的に増加していた。これらの結果から、TNF-α と IFN-γ 刺激が Fas を介したアポトーシスに及ぼす影響は、Fas 発現では無く、Bcl-xL の発現低下レベルと FLIP を含む他の抗アポトーシス分子の増加レベルのバランスに依存しているのではないかと推測している。

近年、抗 TNF-α 抗体による治療後に、白斑の新規発症や白斑が進行する症例報告が増えてきている。大規模解析により、抗 TNF-α 治療を受けた患者における白斑の新規発症率が有意に高いことを示した報告もある。その機序は不明であるが、TNF-α による Fas を介したメラノサイトのアポトーシス抑制が抗 TNF-α 治療によってキャンセルされることが、白斑を発症あるいは増悪させる1つの要因となっている可能性を考えている。

本研究の結果から、CTL を介した白斑形成に Fas-FasL 経路が関与し、白斑病変部で発現が上昇している TNF-α と IFN-γ は Fas を介したメラノサイトのアポトーシスを相乗的に抑制している可能性が示された。

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