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大学・研究所にある論文を検索できる 「セルロース布のTEMPO触媒酸化に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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セルロース布のTEMPO触媒酸化に関する研究

由井(田中), 千晶 東京大学 DOI:10.15083/0002002710

2021.10.27

概要

綿セルロース布(綿布)の化学改質による機能加工は、綿繊維に対して永続的な機能を付与できる反面、衣料用途としては繊維の強度、柔軟性、変色などの問題が発生する。その原因として、綿繊維を化学改質すると、その分子構造を変化させるだけのエネルギーを必要とし、結果的に綿繊維に大きなダメージを与えてしまう。そこで、従来法より緩和な反応であるTEMPO触媒酸化による綿繊維の改質を行うと、綿繊維にダメージを与えることなく、化学改質が可能になり、これまで弱アルカリ性条件におけるTEMPO触媒酸化反応条件を検討し、カルボキシ基量および重合度の他に衣料材料としての基本物性である加熱による白色度低下挙動等を検討した。また、TEMPO触媒反応条件により物性が異なる影響について、反応液中に存在するTEMPO由来のラジカルをESR分析装置で定量することにより反応機構の検証を行った。
 本研究では、弱酸性~中性条件でのセルロース綿布のTEMPO触媒酸化反応を中心に検討した。反応条件が衣料材料としての基本物性に与える影響の要因を解析するため、反応液中に存在するTEMPO由来のラジカルをESR分析装置で定量した。また、弱アルカリ条件でのTEMPO触媒酸化における主酸化剤を、より緩和な条件で反応を進行させる新規酸化剤を検討した。さらには、得られたTEMPO酸化綿布における風合い計測することにより、TEMPO酸化綿布の特徴を検討した。また、綿繊維だけでなく、再生セルロース繊維が使用されている医療用酸化セルロース布代替品の開発を目的として、再生セルロース布の酸化により、繊維の脆化を防ぎながら高濃度のカルボキシ基を導入するTEMPO触媒反応条件について検討し、現行の医療用止血剤と加工特性・布の機械特性と性能を比較検討した。また、実用化に向けたTEMPO触媒酸化反応後の反応溶液の排液処理方法についても検討した。

弱酸性あるいは中性条件下でのTEMPO触媒酸化
 綿布は糸番手40/1(DPv=2200)のニット布とし、繊維強度を維持するために、導入するカルボキシ基量の目標値を約0.3 mmol/gとして反応条件を検討した。TEMPO/NaBr/NaClO系酸化と比較すると、TEMPO/NaClO/NaClO2および4-AcNH-TEMPO/NaClO/NaClO2系酸化反応の方が、重合度低下を抑えながら効率的にカルボキシ基を導入することができた。また、酸化反応直後の反応溶液に直接ブドウ糖を添加した場合、加熱処理による白度の低下と風合いの低下をバランスよく抑えることができた。

ESR分析によるTEMPO触媒酸化反応機構の解析
 4-AcNH-TEMPO/NaClO2/NaClO系における反応溶液中のTEMPO由来のラジカル濃度の変化は、共酸化剤であるNaClOの濃度に大きく影響されていた。NaClOの存在によりTEMPOのラジカル構造がオキソニウム型に迅速に変換し、昇温とともに還元型を経て約半数がラジカル状態へ戻り、昇温後、主酸化剤であるNaClO2から生成するNaClOにより再びオキソニウム型に変換される機構が明らかとなった。また、昇温時にCHO基からCOOH基まで効率的に酸化され、昇温後はCHO基量が増加しており、NaClO2がNaClOへ分解することでCHO基からCOOH基へ変換する量が減少し、生成したNaClOによりラジカル構造の4-AcNH-TEMPOも減少した。TEMPO/NaClO2/NaClO反応系の場合でも同様の挙動を示した。

ジクロロイソシアヌル酸を用いる綿布のTEMPO触媒酸化
 HOClを除放する特性を有するSDICを主酸化剤としたTEMPO/NaBr/SDIC系酸化では、同条件でNaClOを主酸化剤とする酸化反応よりも、高カルボキシ基量で、高重合度の酸化綿布が得られた。さらに、同じカルボキシ基量の酸化綿布を比較した場合、TEMPO/NaClO/NaClO2系よりも高重合度となったことから、SDICを用いることにより、酸化剤がセルロース中のC6位の1級水酸基の酸化に優先的に消費され、重合度低下への寄与が少ないことが示された。さらに、TEMPO触媒酸化反応後の処理工程を改善することにより洗浄工程が削減でき、その結果酸化綿布の剛軟度も向上させることができた。

TEMPO酸化綿布の風合い測定評価
 綿布、TEMPO酸化綿布、CMC綿布の風合いを、各力学的特性及び表面特性をKES計測システムにて計測し、風合い値を算出することで風合い評価を行った。綿布はこしがあってしなやかであり、洗濯後もこし、しなやかさを維持したがソフトさが失われていた。CMC綿布は洗濯前にふくらみ、ぬめりがあったが、洗濯後はこしが出てくる結果となった。TEMPO酸化綿布は、こしがある風合いであったが、洗濯後は綿布およびCMC綿布に比べ、こし、ふくらみが低下した。しかし、しなやかさは綿布およびCMC綿布が洗濯前後で低下しているのに対して、TEMPO酸化綿布は洗濯前後で増加した。このことから、TEMPO酸化綿布は、洗濯により、こしおよびふくらみが低下し、しなやかさが増加する特徴を持つことが明らかになった。

再生セルロース布のTEMPO触媒酸化
 止血材として使用することを目的としたレーヨンのTEMPO触媒酸化反応において、TEMPO触媒酸化反応系からNaイオンを排除し、酸化剤にCa(ClO)2、pH調整のため0.5MKOHを使用することで、繊維構造を維持しながら高カルボキシ基量を生成させることができた。さらに、このTEMPO酸化方法で生成したCOOHはCaイオンによって架橋していることが推測され、さらに繊維強度を増大させる効果があることが明らかになった。実際の止血効果は、対照であるサージセル®と同等の止血効果があり、短繊維レーヨンの改質試料では、それ以上の止血効果が確認できた。

フェントン試薬によるN-オキシル化合物の分解
 Fe2+とH2O2を用いる水系でのフェントン反応によるTEMPOの分解挙動について、ESRによるTEMPOラジカル強度から算出したTEMPO濃度変化を検討した。本実験の反応条件では、90分の処理でTEMPO由来のN-オキシルラジカルのシグナルが消失し、上澄み液中のTEMPO成分をほぼ完全に酸化分解することができた。また、4-AcNH-TEMPO、4-HO-TEMPO水溶液を用いたフェントン反応においても同様の挙動を用いたフェントン反応における、反応溶液中のTEMPO誘導体濃度の経時変化を示した。各種セルロースのTEMPO触媒酸化反応で生じる洗浄排液中の微量、TEMPOおよびTEMPO誘導体成分は、フェントン反応により二酸化炭素、水、無機窒素イオンへと酸化分解されることが示された。

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