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大学・研究所にある論文を検索できる 「Screening of novel Midkine binding protein by BioID2-based proximity labeling」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Screening of novel Midkine binding protein by BioID2-based proximity labeling

小俣, 洋介 名古屋大学

2021.07.20

概要

【緒言】
 ミッドカイン(Midkine, MK)はヘパリン結合性の成長因子であり、小児腫瘍の一つである神経芽腫で MK の高発現は予後不良と相関している。MK は膵癌や肺癌の転移や増殖にも寄与しており、更に MK の機能を阻害することで、様々な癌の成長を抑制することが明らかにされてきた。例えば神経芽腫の異種移植モデルでは、MK を標的とした RNA アプタマーが腫瘍の成長を抑制し、骨肉腫では MK 中和抗体が癌の増殖・転移を抑制している。以上より、MK は新たな治療の標的となることが期待されている。MK を標的とした治療を確立する為には、MK と相互作用(結合)するタンパク質を同定し、それによる細胞内シグナルを解明する必要がある。MK の受容体はこれまでいくつか報告されてきたが、それらとの相互作用の重要性は明らかになっていない。よって、他に新たな MK の受容体、または結合因子が存在する可能性がある。本研究では、タンパク質間の相互作用(結合が弱いものや結合時間が短いもの)を検出する近位依存性ビオチン標識法を用いて、MK と結合する新規タンパク質を網羅的に探索した。

【方法】
 まず、MK に対して応答する細胞株を探索した。内在性の MK 発現量が外部から加えた MK の応答の有無に関わっていると予測し、MK の発現量が異なる様々な細胞株を用意した。MK の応答は RPS6 のリン酸化をウエスタンブロッティング法で評価することで判断した。続いて、MK の結合因子を同定するために、近位依存性ビオチン標識法による探索を行った。ビオチンリガーゼの一種である BioID2 は結合しているタンパク質、あるいは近接するタンパク質をビオチン化する性質を持つ。MK と結合あるいは近接するタンパク質をビオチン化するために、BioID2 と MK の融合タンパク質(MK-BioID2)を発現するプラスミドを作製した。作製したプラスミドを HEK293T 細胞に導入し、細胞外に分泌された MK を含む条件培地(conditioned medium, CM)を調製した。MK 感受性の細胞株を CM で培養し、細胞を溶解した後、ビオチンに強く結合するストレプトアビジンビーズを用いてビオチン化されたタンパク質を回収した。ビオチン化タンパク質を銀染色で確認した後、質量分析を行った。これを独立して三回繰り返し、MK の結合因子をスクリーニングした。

【結果】
 MK に対して応答する細胞を探索するため、MK 発現量がそれぞれ異なった種類の神経芽腫の細胞株を播種し、無血清培地で飢餓状態にした後、組換えヒト MK を添加し、RPS6 のリン酸化を調べた。その結果、内在性 MK 低発現細胞株として用意した SH-SY5Y の MK 遺伝子発現抑制細胞(SH-SY5Y MK-K/D)と LA-N-5 は MK 添加後 20分で RPS6 のリン酸化が確認された(Fig. 1A)。一方、MK 高発現細胞株である SH- SY5Y および SK-N-DZ(Fig. 1B)では RPS6 のリン酸化は見られなかった。以上より、内在性 MK 低発現細胞株において MK と結合する受容体が発現、あるいは結合因子が分泌していることが示唆された。
 次に、MK の結合因子を同定するために、近位依存性ビオチン標識法を用いた。MK- BioID2 のプラスミドを作製後、HEK293T 細胞に遺伝子導入し CM を回収した。MK 抗体を用いたウエスタンブロッティング法にて CM 内の MK-BioID2 融合タンパク質(48 kDa)を確認した(Fig. 2A)。更に、SH-SY5Y MK-K/D を CM で 24 時間培養後、回収した細胞でウエスタンブロッティング法を行った結果、様々な大きさのビオチン化タンパク質が検出された(Fig. 2B)。細胞から分泌された MK-BioID2 はビオチン化活性を有することが確認できた。
 続いて、MK の新規結合因子を探索するために SH-SY5Y MK-K/D 株を用いて、MK- BioID2 によるビオチン化反応および質量分析を行った。ストレプトアビジンビーズを用いてビオチン化タンパク質を分離抽出し、銀染色およびウエスタンブロッティングを行った。質量分析に必要な量のビオチン化タンパク質が分離されていることを確認し(Fig. 3A)、質量分析を行った。新規の MK 結合候補因子として最終的に 25 種類のタンパク質を同定した(Fig. 3B)。
 25 種類の中には、insulin-like growth factor 2(IGF2)と insulin-like growth factor binding protein 2(IGFBP2)が含まれていた。IGF2 は insulin-like growth factor 1 receptor(IGF1)および insulin receptor(IR)のシグナル伝達に関わっており、PI3K/Akt 経路および RPS6の上流に位置する。IGFBP2 は IGFs に結合し、これらのシグナル伝達を調節することが知られている。また、MK 自身も含まれており、これは MK のホモ二量体を形成するという既報と一致している。さらに、唯一の MK ファミリーに属する pleiotrophin もあり、MK とヘテロ二量体を形成することが示唆された。その中で我々は三回の質量分析のすべての結果で 5 番以内に入っていた IGFBP2 に着目した。質量分析に用いたサンプルをウエスタンブロッティング法で確認したところ、35 kDa 付近に IGFBP2 のバンドを検出することが出来た(Fig. 3C)。よって質量分析で検出された IGFBP2 は確かに MK-BioID2 と結合し、ビオチン化されたことが確かめられた。

【結論】
 本研究により、近位依存性ビオチン標識法が MK のような分泌タンパク質との融合でも応用可能であることが示され、新たな MK 結合タンパク質の探索が可能となった。この手法でビオチン化を効率よく行うには、CM 内に含まれる MK-BioID2 の濃度が重要であることが考えられる。実際に、低濃度の MK-BioID2 含有 CM を用いた場合、ビオチン化タンパク質を検出できなかった。CM を調製した後に MK-BioID2 の濃度を評価することが必要である。また、IGFBP2 は IGFBP ファミリーに属し、IGFs に結合することで IGF1R、IR、さらには IGF1R/IR のシグナル伝達を調製する。IGF2 が質量分析で検出されていることを考慮すれば、MK は IGFBP2 の IGF2 への結合を阻害し、遊離した IGF2 が以上の受容体シグナル伝達を促すことで最終的に RPS6 がリン酸化を受けると推測される。

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