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大学・研究所にある論文を検索できる 「First-principles Study on the Effect of Electron-phonon Scattering on the Transport Properties of Thermoelectric Materials」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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First-principles Study on the Effect of Electron-phonon Scattering on the Transport Properties of Thermoelectric Materials

森, 仁志 大阪大学

2021.03.24

概要

熱電変換の性能の指標として無次元性能指^ZT=p- ^K- x T が用いられる。pは電気抵抗率, Sは Seebeck係数,zcは熱伝導率である。電力因子PF もまた、物質から得られる電力の大きさの指 標として用いられる。電気抵抗率を小さくするために物質にキャリアを添加すると、Seebeck係数も同時に小さくなる傾向にあることから、熱電性能を向上させるのは簡単ではなく、いくつかの物質設計の戦略の下で熱電物質の更なる高性能化を目指した研究が進んでいる。
熱電性能を向上させることができる電子バンド構造の一つとして、マルチバレー構造が知られている。これは、フェルミ.エネルギー近傍に複数のバンド端(バレー)を持つバンド構造であり、バンド端の高い状態密度に起因して低い電気抵抗率と高いSeebeck係数の両立が可能となると一般に考えられている。しかしながら、電子が受ける散乱を考えた際、マルチバレー構造の場合にのみ生じるバレー間散乱が電気抵抗率を大きくしてしまう原因になりかねないとも考えられる。
例えば、マルチバレー構造を持ち、大きな電力因子を持つ層状物質TiS2は、電気抵抗率の温度依存性が特異的であることが知られている。簡単なモデル計算に基づいた先行研究においては、この特異な電気抵抗率の温度依存性を説明するためには、音響フォノンによるバレー間散乱の寄与がバレ一内散乱の寄与と同程度に大きいと考える必要があることが結論されている。仮にTiS2においてバレー間散乱が大きいとすると、この物質の電力因子が大きい原因はマルチバレー構造による電気抵抗率の低減ではないということになる。マルチバレー構造が電気抵抗率を低減する物質設計の戦略の一つとして有用であるかどうかを知るためには、バレー間散乱が電気抵抗率などの輸送特性に及ぼす影響を調べる必要がある。
そこで、我々は電気抵抗率が受けるバレー間散乱の影響を定量的に理解するために、第一原理計算を用いて電子-フォノン相互作用を計算し、フォノンによる電子散乱の効果を露わに評価することで、TiS2の類縁物質、ならびに優良なn型熱電物質として知られるMg3Sb2において、電気抵抗率やSeebeck係数などの輸送特性の計算を行った。本研究では特にバレー間散乱が輸送特性に及ぼす影響に注目するため、計算対象とした物質は、その電子バンド構造がマルチバレー構造を有しているという共通点を持つ。この計算によって得られた電気抵抗率やSeebeck係数の温度依存性は、実験結果を定性的に再現するものであった。特に、電気抵抗率の温度依存性は、従来の理論研究においてしばしば用いられてきた近似法(緩和時間一定近似)では得ることのできないものである。ま た、電子散乱に対する寄与が特に大きいフォノンモードを同定するために、輸送特性のフォノンモードによる寄与の分解を行った結果、特に室温付近においては、バレー間散乱による寄与は小さ く、光学フォノンによる、バレー内散乱の寄与が支配的に大きいことを示す結果を得た。光学フォノンの周波数は十分に高く、その占有数は十分に小さいため、室温以下の電子の輸送特性にはあまり寄与しないものと直観的にとらえることもできそうであるが、今回得られた結果はそれに反するものとなった。これは縦波光学フォノンが誘起する分極による長距離静電ポテンシャルが電子を非常に強く散乱する要因となるためである。これにより、本研究で対象とした熱電物質においては、室温付近では、輸送特性に及ぼすバレー間散乱の影響は小さく、結果としてマルチバレー構造が電気抵抗率を十分に低減する役割を果たしているといえるとの結論を得た。

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