光切断方式による3Dスキャナを用いた新たな手術ナビゲーションシステムの開発 (第137回成医会総会一般演題)
概要
【目的】
人工膝関節置換術(以下TKA)に際しては,術前計画に沿ったインプラントの設置が求められる.しかし,単純X 線像上で2次元テンプレートを用いた術前計画では,術中に術前計画を正確に反映することは困難である.また,既存のnavigation system やPSI は,術前計画とは異なる座標系で評価されている.より正確にシステムを評価するためには,術前計画から術後評価まで一貫した共通の座標系を用いる必要がある.我々は,CT データに基づく3次元術前計画を,術中に正確に反映させ,術後に術前計画と共通の座標系を用いて評価することができる新方式の手術ナビゲーションシステム(以下,スキャンナビ)を開発した.本研究ではスキャンナビで術中に使用する3D スキャナの正確性を評価したので報告する.
【方法】
対象は2019年1 ~ 2月に東京慈恵会医科大学附属病院でTKA を行った変形性膝関節症の患者5例7膝で,平均年齢は63歳であった.ZedView™ を用いて3次元術前計画を作成した.手術はその設置精度が検証されているJIGEN™ を用いて行った.JIGEN™ 骨切りガイドに3D スキャナを設置し,レーザー光線を照射させながらスライドさせ,大腿骨前面骨皮質を撮像した.撮像した3D 画像を術前計画とマッチングし,骨切りガイドの位置と術前計画との角度の差を記録した.術中計測値はJIGEN™ による誤差も含むため,術後CT をZed View™ で評価し,JIGEN™ の設置誤差を取り除きスキャンナビの精度を算出した.
【結果】
スキャンナビの誤差は,内外反1.7±0.6°,屈曲伸展1.6±0.9°,回旋1.9±1.6°であった.
【結論】
諸家の報告ではNavigation TKA における大腿骨コンポーネントの設置誤差はおおむね2°以内であり,我々の開発したスキャンナビの誤差も同程度の精度であった.この誤差には3D スキャナの精度に加え,骨切りやインプラントの打ち込みの精度,セメント層の均一性の影響を含むため,我々が開発したスキャンナビの精度は十分に臨床応用が可能であると考えられる.以上から,スキャンナビはTKA において,術前CT に基づく3次元術前計画を術中に正確に反映させ,術後に術前計画と共通の座標系で評価できる有用なシステムであると考える.