新規放射線治療装置の有用性に関する検討 (第137回成医会総会一般演題)
概要
【背景・目的】
2020年3月より米国Accuray 社の放射線治療装置Radixact を導入し,強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)を行っている.IMRT は,組織への照射線量を抑制しつつ,標的体積への線量集中を図ることができ,従前より使用している汎用型リニアックにおいてもIMRT を行っている.今回導入したRadixact は, 使用する多分割コリメータ(MLC:multi leaf collimator)の開閉速度が速く,更なる線量分布の改善が期待できる.また,寝台を動かし連続的に照射を行うため,治療範囲が広く2~3か所に分割して照射せざる得ない症例においても,1回の照射で治療が可能である.そこでRadixact の有用性を検討するため,汎用型リニアックおよびRadixact それぞれで同一患者の治療計画を立案し,比較した.
【方法】
頭頚部領域3例,全脳全脊髄照射1例の治療計画を,汎用型リニアックおよびRadixact で作成し,標的体積の線量指標である最大線量(Dmax),最小線量(Dmin),線量均一性: HI(Homogeneity Index),線量集中性:CI(Conformity Index),標的近傍にある正常組織の線量指標である最大線量(Dmax),平均線量(Dmean),および照射時間を比較した.
【結果】
Radixact で作成された治療計画は,汎用型リニアックと比較して標的体積および正常組織の線量指標ともに良好な結果となった.特にHI においては,優位な差が見られた.照射時間においては,汎用型リニアックでは1分程度であるが,Radixact の場合は3 ~ 5分と幅があり,照射時間は長くなった.
【結論】
Radixact を導入するにあたり治療計画を比較した.線量指標に関してはRadixact の治療計画の方が良好な結果となり,標的体積と正常組織が近接しているような複雑な治療計画を行う場合に適している.一方で,照射時間は延長されることから,スループットの低下や患者への負担増加も懸念されるため,治療機器の選別は患者状態に合わせることも重要な要素である.