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励起状態分子内プロトン移動を示すベンゾトリアゾール骨格を基盤とした青色蛍光色素の開発

上坂 敏之 大阪府立大学 DOI:info:doi/10.24729/00017854

2022.11.28

概要

本論文は, 青色蛍光発光を示すH B T A やB T A の合成, およびH B T A と蛍光発色団からなるダイアド分子の合成について述べ, それらの発光特性や光安定性を評価し, 波長変換材料への応用についてまとめたものであり,7章からなる.

第 2 章では, B T A に置換したフェニル基の 2 位にヒドロキシ基以外のプロトン供与基としてアミノ基, アセトアミド基および7 V - メチルアミノ基を導入した化合物の合成と, それらの光吸収特性と蛍光発光特性についてまとめた. 得られたB T A の紫外可視吸収スペクトルおよび ^ - N M R スペクトルから, N - H - - - N 分子内水素結合が形成されていることが示された. これらのB T A は, O - H - - N 分子内水素結合を持つH B T A と同様に分子内水素結合を形成しているにもかかわらず, E S I P T に起因した無放射失活が支配的ではなく, 弱い青色蛍光発光を示した. これらの結果から, ヒドロキシ基をアミノ基など他のプロトン供与基に換えることで, E S I P T に誘引される無放射失活と蛍光失活のバランスを制御できることが明らかとなった.

第 3 章では, ベンゾトリアゾール環の 5 位にアミノ基が導入されたH B T A の合成と,発光特性および光安定性についてまとめた. 通常, 5 位に置換基を持たないH B T A は, E S I P T に続く無放射失活により蛍光発光を示さない. しかしながら, 5 位にアミノ基を導入したH B T A は, C H C U 中やC H 3 O H 中において青色蛍光発光を示した. 5 位のアミノ基の電子供与性によりベンゾトリアゾール環のプロトン受容能が低下し, その結果, E S I P T が抑制され, 蛍光発光が促進されたと考えられる. さらに, ポリ( メタクリル酸メチル) ( P M M A ) フィルム中において, アミノ基が導入されたH B T A の光安定性は,一般的なH B T A と比較して非常に低く, E S I P T の抑制により励起状態で分解反応が起こることが示唆された.

第 4 章では, H B T A と青色蛍光性 1 , 8 - ナフタルイミド誘導体( 以下, N 1 ) を直接結合させたダイアド分子( 以下, H B T A - N I ) の合成と, これらの 発光特性および光安定性についてまとめた. H B T A - N I はC H 3 O H 中やP M M A フィルム中において, N 1 成分に由来する青色蛍光発光を示したが, 単体の N 1 より蛍光量子収率はやや低下し, H B T A 成分による無放射失活の 促進が示唆された. 量子化学計算では, E S I P T が熱力学的に許容されることが示され, N 1 成分による蛍光失活とH B T A 成分におけるE S I P T を経た無放射失活の2つの失活過程の存在が示唆された. 単体の N 1 やH B T A とN 1 の 等モル混合物を含有するP M M A フィルムでは, 紫外線の連続照射により色素の分解が顕著にみられたのに対し, H B T A - N I 含有フィルムでは色素の 分解が抑制された. これらの結果より, H B T A を蛍光色素へ直接結合させることで, 蛍光発色団の 発光特性をある程度維持しながら光安定性を付与できることが明らかとなった.

第 5 章では, H B T A とフヱニル基上にヒドロキシ基以外の 置換基を持つ青色蛍光性 B T A を構成成分とし, それらをエステル結合により連結したダイアド分子( 以下, H B T A - B T A ) の合成と, これらの 発光特性および光安定性についてまとめた. 得られたダイアド分子は, C H C h 中やP M M A フィルム中において, B T A 成分に由来する青色蛍光発光を示したが, 蛍光量子収率はB T A 成分の 置換基により大きく異なった. これより, H B T A成分はB T A 成分の 光物理特性に影響することが示された. 量子化学計算では, E S I P Tは熱力学的に有利な過程であり, B T A 成分の 寄与による蛍光失活とH B T A 成分におけるESIPTを経た無放射失活が起こり得ることが予想された.これらのHBTA-BTAの,P M M A フィルム中における光安定性は低くなった. このように, 2 成分間をエステル結合で連結すると, H B T A 成分があるにも関わらず, ダイアド分子の 光安定性は低下することが示された.

第 6 章では, プロトン供与基をもたない青色蛍光性B T A を含有する波長変換フィルムを実際にトマトの 栽培場所に設置し, トマト果実の 成長とリコピン含量への 影響を評価した結果についてまとめた. 作製した波長変換フィルムは, 紫外光を青色光に変換する優れた波長変換特性を示した. このフィルムをトマトの栽培場所に設置し, 波長変換により光合成に必要な青色光を増加させたところ, さまざまなトマトの品種において,リコピン含量の増加と成長促進が認められた. 現状では, 青色蛍光性B T A の光安定性は不十分であるものの, このB T A を用いた波長変換フィルムは, 短期間の農作物の栽培に有効であることが確認された.

第7章では,本論文で得られた結論の総括を行った.

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