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大学・研究所にある論文を検索できる 「デジタル PCR で検出した末梢血幹細胞移植片の微小残存病変は高リスク神経芽細胞腫患者の予後と相関する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

デジタル PCR で検出した末梢血幹細胞移植片の微小残存病変は高リスク神経芽細胞腫患者の予後と相関する

二野, 菜々子 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Minimal residual disease detected by droplet
digital PCR in peripheral blood stem cell
grafts has a prognostic impact on high-risk
neuroblastoma patients

二野, 菜々子
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8592号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482340
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Minimal residual disease detected by droplet digital PCR
in peripheral blood stem cell grafts has a prognostic impact
on high-risk neuroblastoma patients

デジタル PCR で検出した末梢血幹細胞移植片の微小残存病変は
高リスク神経芽細胞腫患者の予後と相関する

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
小 児 科 学
(指導教員: 野 津

二 野

寛 大 教授)

菜 々 子

【背景】
神経芽細胞腫(NB)は、小児で最も一般的な固形腫瘍の一つで、神経堤由来の交感神経副腎前駆細
胞に由来し、自然退縮から悪性進行に至るまで極端な不均一性を示す。新たに診断された NB 患者
の約半数は、高リスクに分類され、NB 患者は小児がん関連死亡の約 15%を占める。高リスク NB 患
者は、導入療法、末梢血造血幹細胞(PBSC)移植併用大量化学療法、手術、放射線療法、免疫療法か
らなる標準レジメによって治療される。高リスクの NB 患者の 20%は、寛解導入療法に反応せず不
応性または進行性の経過をとる。残りの患者は通常寛解導入療法中に寛解を達成するが、高リス
ク NB 患者の半数以上が再発し、長期生存率は約 50%でしかない。再発した NB 患者の長期生存率は
10%未満という悲惨な結果である。NB の再発は、治療後に残っている微小残病変(MRD)の再活性化
によって起こると考えられている。現在、リアルタイム PCR(qPCR)やデジタル PCR(ddPCR)を用い
て複数の神経芽腫関連 mRNA(NB-mRNAs)を定量する多くの MRD 解析系が報告されており、骨髄(BM)
サンプルにおいては有意に予後と相関することが示されている。末梢血(PB)や末梢血造血幹細胞
(PBSC)における MRD の意義はまだ不明である。高リスク NB 患者では、BM では腫瘍細胞が陽性で
あっても、PB では全くないか少ないため、BM 移植片よりも PBSC 移植片の方が腫瘍細胞の混入リ
スクが低いと考えられており、現在の高リスク NB 患者の大量化学療法後の自家移植では PBSC 移
植片が用いられている。しかし、腫瘍細胞で汚染された PBSC 移植片の輸注が再発を引き起こし、
高リスク NB 患者の転機に影響を与えるかどうかは相反する報告があり、明らかになっていない。
【目的】
高リスク NB 患者におけるデジタル PCR を用いた PBSC-MRD の臨床的意義を明らかにすること。
【患者と方法】
対象:高リスク NB 患者 20 名(COG リスク分類または INRG 病期分類で診断)
患者は、
日本小児がん研究グループ神経芽腫委員会(JNBSG)の高リスク NB プロトコール(JN-H-07、
JN-H-11、JN-H-15)に基づいて治療された。
期間:2011 年 6 月から 2018 年 1 月(観察期間 120 か月)
参加施設:兵庫県立こども病院、神戸大学医学部附属病院
PBSC 検体:20 検体 (再発/再増大なし 9 検体/あり 11 検体)(3 or 4 回目の導入療法後に採取)
本研究は、書面でインフォームドコンセントを取得し、神戸大学大学院医学研究科と兵庫県立こ
ども病院の倫理委員会で承認された。
解析方法: 7NB-mRNAs ddPCR Assay (CRMP1、DBH、DDC、GAP43、ISL1、PHOX2B、TH mRNAs)
RNA の分離と cDNA の合成: TRIzol と RNA 精製キット(Life Technologies,Carlsbad,CA)を使用し
て PBSC サインプルから全 RNA を抽出した。Quantitect 逆転写キット(Qiagen, Valencia, CA,
USA)を使用して 1 µg or 0.5 µg の全 RNA から cDNA を合成し使用するまでサンプルはすべて-80
度で保存した。7NB-mRNAs(CRMP1、DBH、DDC、GAP43、ISL1、PHOX2B、TH mRNAs)および参照遺伝子
mRNA(HPRT1)の発現量は、QX200 ddPCR システム (Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA) を用いて

計測した。ddPCR 分析は、デジタル MIQE ガイドラインに従って実施した。7NB-mRNA のレベル(結
合シグネチャ)は、7 つの相対コピー数(各 NB-mRNA のレベル)の加重合計として定義した。非 NB コ
ントロール PB サンプルの 90 パーセンタイルの逆数を、各 NB-mRNA の重み付けに使用した。
統計分析:2 つのサンプル母集団間の 7NB-mRNAs のレベルの違いは、マンホイットニーの U 検定で
評価し、7NB-mRNAs のレベルと再発との関連は、ROC 分析で評価した。曲線下面積(AUC)は、
「低
精度」0.50〜0.69、
「中精度」0.70〜0.89、
「高精度」0.90〜1.00 と解釈した。EFS(診断日から再
発/再増大まで)と OS(診断日から死亡日まで)はカプランマイヤー法とログランク検定で評価した。
P<0.05 を統計的に有意とした。
【結果】
本研究の高リスク NB 患者 20 名は、高リスク NB の典型的な特徴を持っていた。
50%が MYCN 増幅腫瘍で、95%が診断時に骨髄転移あり、80%が副腎腫瘍であった。観察期間の中央
値は 47.5 か月(範囲:16-116 か月)であった。先行研究と一致して、PBSC 移植片の各 NB-mRNA の
レベルは 45-75%(9-15/20)で、7NB-mRNAs のレベルは 100%(20/20)で検出され、個々の患者で大き
く異なっていた。PBSC 移植片中の 7NB-mRNAs のレベルは、診断時の BM や PB サンプルほど高くは
なかったが、11 名の再発患者から採取された PBSC 移植片では、非再発患者から採取された PBSC
移植片よりも有意に高かった。7NB-mRNAs のレベルと再発について ROC 曲線をプロットすると、
AUC は 0.768(>0.7、有意な精度)であり、PBSC 移植片中の 7NB-mRNAs のレベルが高いほど再発する
と予測できた。次に、20 名の高リスク NB 患者のコホート全体でカプラン・マイヤー曲線による生
存分析を行い、3 年の EFS と OS を推定すると、3 年の EFS は 45.0% (95% CI:23.1–64.7%)、OS は
69.3% (95% CI:44.0–84.9%)であった。ROC 曲線から導出した 7NB-mRNAs のカットオフ値(7NBmRNAs=3.5)に基づいて、PBSC 移植片の 7NB-mRNAs のレベルカットオフを設定すると、MRD が高い
患者(7NB-mRNAs≧3.5,n=9)vs MRD が低い患者(7NB-mRNAs<3.5,n=11)の 3 年の EFS と OS は、11.1%
(95% CI: 0.6–38.8%)と 55.6% (95% CI: 20.4–80.5%) vs 72.7% (95% CI: 37.1–90.3%)と 81.8%
(95% CI: 44.7–95.1%)(EFS:p=0.0148、OS:p=0.18) となり、PBSC-MRD と EFS が有意に相関した。
【考察】
本研究では、PBSC 移植片 20 検体を用いて、ddPCR ベースの PBSC-MRD モニタリングを実施した。
高リスク NB 患者では、PBSC-MRD と EFS が有意に相関し、PBSC-MRD が高いほど EFS が不良である
ことを明らかにした。我々が知る限り、本研究は高リスク NB 患者における ddPCR ベースの PBSCMRD の予後予測能を実証した最初の研究である。
高リスク NB 患者の PBSC 検体における MRD の臨床的意義については、多くの報告がある。いずれ
の報告も qPCR 法で複数マーカーを用いた解析を行っており、PBSC 検体における MRD が患者アウト
カムと相関するという報告と相関しないという報告の両方が示されている。
興味深いことに、同一の研究グループからの同じコホートを用いた最近の報告では、一般的に使
用されるアドレナリン作動型の 5 マーカー(ADRN)NB-mRNA(CHRNA3、DBH、DDC、PHOX2B、または

TH mRNA)を用いて qPCR で検出した PBSC-MRD は患者アウトカムと相関しなかったが、新たに同定
した間葉型マーカー(MES)NB-mRNA(POSTN または PRRX1mRNA)を用いて PBSC-MRD を検出すると、
PBSC-MRD は患者のイベントフリー生存率(EFS)および全生存期間(OS)と有意に相関した。高リ
スク NB 患者における PBSC-MRD モニタリングに最適なマーカーおよび PCR 方法を決定するには、
より大きなコホートを使用した検証が必要である。
【結論】
ddPCR を用いて高リスク NB 患者の PBSC 20 検体における 7NB-mRNAs-MRD を評価すると、PBSC-MRD
と EFS は有意に相関した。

神 戸 大 学 大 学 院 医 学(
系)
研究科(博士課程)

言合}二文戸昔斧五距.ク> 糸吉 長艮 クつ 彦 巨 旨示
受付番号

甲 第 3257号





I二 野 菜 々 子

デ ジ タ ル PCRで検出した末梢血幹細胞移植片の微小残存病変は高リ
論文題目

スク神経芽細胞腫患者の予後と 相 関する

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主 査
審査委員

Examiner

釦灸札

Chi
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副 査

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副 査

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免仇謬 t



司 I

(要旨は 1, 000字 ∼ 2, 000字程度)




背景・目的】

NB)の約半数は高リスクで、導入療法、末梢血造血幹細胞 (PBSC)移植併用大量化学療
神経芽細胞腫 (
法を含む集学的治療が行われる。高リスク患者は寛解を達成しても半数以上が再発し、その長期生存割

0%未満である。再発は微小残病変 (MRD)が原因と考えられ、リアルタイム PCR(qPCR)やデジ
合は 1
タル PCR(ddPCR)を用いて NB関連 mRNA(NB-mRNAs)で解析した骨髄 (BM)の MRDは予後と相関
するが、末梢血 (
PB)や末梢血造血幹細胞 (PBSC)の MRDの意義は不明である。高リスク NB 患者では

B Mに腫瘍細胞が残存していても PBには認めないことも多いため、高リスク NB患者の大蜃化学療法
併用自家移植では造血幹細胞のソースとして B Mよりも PBSCが用いられる。しかし、 PBSC中の MRD
と再発の関連尺析には様々の方法が用いられ、相反する結果も報告されている。本研究では、

ddPCR

を用いて高リスク NB患者の PBSC中の MRDを測定し臨床的意義を評価した。

対象と方法】
日 本 小 児 が ん 研 究 グ ル ー プ 神 経 芽 腫 委 員 会 (JNBSG)の高リスク NB プ ロ ト コ ー ル (
JN-H-07、

JN
H1
1、J
NH1
5
)で治療された高リスク NB患者 20名の導入療法後に採取した PBSC(再発/再増大
なし 9検体、あり 1
1検体)から、全 RNAを抽出し cDNA を作成し、 7NB-mRNAs(CRMPl、 DBH、

DDC、 GAP43、 I
S
L
l、PHOX2B、THmRNAs)および参照遺伝子 mRNA(HPRTl)の発現塁を QX200
ddPCRでデジタル MIQEガイドラインに従 って分析 した。
7NBmRNAのレベルは、 7つの各 NB-mRNAレベルの加重合計とし、非 NBコントロール PBの 90
パーセンタイルの逆数を各 NB-mRNAの重み付けに使用した。母集団間の 7NB-mRNAsの差はマンホ

mRNAsレベル占
と再発との関連は ROC分析の曲線下面積 (AUC) で評
ィットニーの U 検定で、 7NBEFS、診断日から再発/再増大まで)と全生存期間 (OS
、診断日から死亡
価した 。無イベ ント 生存期間 (
<0.05を統計的に有意とした。
日まで)はカプランマイヤー法とログランク検定で評価した。 P

結 果】.

PBSCの各 NB-mRNAのレベルは 45-75%(
91
5
/
2
0
)で変動が大きかったが、 7NBmRNAsは 100%
で検出された。 1
1名の再発患者の PBSC中 7NBmRNAsのレベルは非再発患者の PBSCよりも有意に

mRNAsのレベルが高いほど再発と相関した。 7NB-mRNAsのレベルと再発の ROC曲線の
高く、 7NBAUCは 0
.
7
6
8であり、 2
0名の高リスク NB患者全体での 3年 EFSは 45.0%(95%C
I
:2
3
.
1-64.7%


OSは 69.3%(95%C
I
:4
4
.
0
-84.9%)であった。
ROC曲線から設定した 7NBmRNAsのカットオフ値 (
3.
5
)で 2群に分けると、高値群 (
n
=
9
)v
s低 値
群(
n=ll)の 3 年の EFS は 1
1
.
1% (95% C
I
:0
.
6
-38.8%) VS 7
2
.7% (95% C
I
:3
7
.l
-90.
3%)で有意

(
p
=
0
.
0
1
4
8
)に差があったが、 3年 OSは 55.
6%(95%CI:
2
0
.
4
8
0
.
5
%
)VS81.8%(95%C
I
:4
4
.
7
9
5
.
l%)
で差は有意でなかった (
p
=
0
.
1
8
)。

【考察】
本研究は高リスク NB患者の PBSCを用いて、 ddPCRで検出した MRDが EFSと有意に相関するこ
とを初めて示した。・過去の研究では、 PBSCにおける MRDと患者アウトカムの相関に関する結果は一
定していない。最近の報告で、 一般的に使用されるアドレナリン作動型の 5マーカー (ADRN)NBmRNA

(CHRNA3、DBH、DDC
、 PHOX2B
、または THmRNA) を qPCRで検出した PBSC-MRDは患者
アウトカムと相関じなかったが、同一研究グループの同ーコホートを用いた解析では新たに同定した間
葉型マーカー (MES)NBmRNA (POSTNまたは PRRXlmRNA) で PBSC-MRDを検出すると相関
していた。高リスク NB患者における PBSC-MRDモニタリングに最適なマーカーおよび PCR方法を
決定するには、さらなる検証が必要である。

結 論】
本研究は高感度の dd
PCRで評価した高リスク NB患者の PBSCにおける 7NB-mRNAsMRDと EFS
が有意に相関することを示した。別コホートなどで V
a
l
i
d
a
t
i
o
nは必要なものの、 PBSCによる大量化学
療法併用自家移植を受ける患者の予後予測因子として臨床で使用しうる可能性を秘めたもので、重要な
貢 献 を し た 価 値 あ る 研 究 で あ る と 認 め る。 よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格が
あると認める

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