臨床検査用全自動高速液体クロマトグラフィー・質量分析システムによる血清25ヒドロキシビタミンDの測定;基準範囲の設定 (第137回成医会総会一般演題)
概要
【目的】
臨床検査室では,血清25ヒドロキシビタミンD(25-OH VD)濃度などの低分子化合物は抗体を用いたイムノアッセイが広く用いられている.必須の検査法であるが,交差反応やキット間差・施設間差が大きい現状がある.近年は質量分析が利用可能であるが,自動化が進んでいないことも一因として普及が進んでいない.この度,本邦で最初に開発された臨床検査用全自動高速液体クロマトグラフィー・質量分析(LC/MS/MS)装置を中央検査部に設置し,血清25-OH VD 濃度の測定・基準範囲設定を行った.
【方法】
2019年5月,(株)島津製作所製全自動LCMS 前処理装置「CLAM-2030」と超高速トリプル四重極質量分析計「LCMS-8050」で構成された臨床検査用全自動LCMS システムを中央検査部に設置した.その基礎性能と,附属病院・晴海トリトンクリニック健診センター受診者1,563名(男性941,女性622名)年齢48.7歳±14.25(mean ±SD)の分布について確認した.なお,本研究は大学倫理委員会承認のもとに行われた.
【結果】
-OH VD2/VD3および標準となる安定同位体標識VD2-d3/D3-d6のピークを確認できた.また,3-epi VD2/VD3が分離できていることも確認した.測定範囲は5~120(ng/mL)で,Accuracy100±15%以下であった.また,25-OH VD2および25-OH VD3測定の日内再現性についても検討し,CV 値は4.1% 以下であった.健診受信者の測定値は,全例で25-OH VD2は感度以下の5.0(ng/mL)未満であり,25-OH VD3のみ検出された.よって25-OH VD3をTotal 25-OH VD として解析を実施した.mean±SD は14.73±6.04(ng/mL)であり,べき乗変換により正規化し±3SD にて2回反復切断を実施後の95%信頼区間は5.20 ~ 27.29(median:14.08)(ng/mL)であった.骨粗鬆症を対象とした日本内分泌学会・日本骨代謝学会・日本骨粗鬆学会のビタミンD 不足/ 欠乏の判定指針の欠乏20未満,不足30未 満(ng/mL)の割合は各々83.0 %,98.0%であった.
【結論】
除蛋白操作を含む前処理から全ての工程について全自動測定が可能であり,その基礎性能は従来より汎用されているイムノアッセイ用自動分析装置と同等もしくはそれ以上の性能を有していた.血清25-OH VD 値の分布はほぼ30未満(ng/mL)であり,基準範囲も既報(7 ~ 41 ng/mL)より低い傾向であった.今後対象を増やし,日本(東京)における正確な基準範囲の設定を行う.