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大学・研究所にある論文を検索できる 「サイクリンディペンデントキナーゼインヒビター1欠損マウスはインターロイキン1β誘発性関節リウマチが増悪する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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サイクリンディペンデントキナーゼインヒビター1欠損マウスはインターロイキン1β誘発性関節リウマチが増悪する

Takashima, Yoshinori 神戸大学

2021.09.25

概要

【目的】
関節リウマチ(RA)は滑膜組織が異常増殖し、骨関節を破壊する炎症性疾患である。RA治療薬は免疫を抑制し感染症や悪性腫瘍を誘導するため免疫を抑制しない新たな RA 治療の開発が期待される。Cyclin dependent kinase inhibitor 1 (p21) は DNA に損傷が生じるとp21 の発現が増加し細胞周期が停止するとされ細胞周期の調整因子である。我々は以前に p21 発現のコントロールが変形性関節症 (OA) の新たな治療になる可能性を報告してきた。一方で、RA おいても p21 の発現が抗炎症効果や細胞増殖能抑制効果をもたらす可能性が報告されている。しかし、p21が RA の滑膜細胞及び関節軟骨に与える影響は不明である。

そこで、本研究の目的は RA 患者の滑膜細胞および抗コラーゲン抗体関節炎 (collagen antibody induced arthritis、CAIA) モデルマウスの滑膜組織・関節軟骨にp21 が与える影響を明らかにすることとした。

【方法】
動物・CAIA 関節炎モデルマウス
Jackson 社より購入した 10 週齢の p21 欠損マウス (n = 16) と野生型 (WT) マウス (n = 16) を使用した。マウスに抗 II 型コラーゲンモノクローナル抗体を腹腔内投与し、投与後 3日目に Lipopolysaccharaide の追加投与を行うことで CAIA 関節炎モデルマウスを作成した。

関節炎スコア・滑膜・関節軟骨の組織学的評価・Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)・免疫組織化学染色
Brand らの関節炎スコアを用いて、抗体投与前、投与後 3、7、10、14 及び 28 日目に関節炎の肉眼的評価を行った。さらに、各マウスで抗体投与後 7 日 (n = 4)、14 日 (n = 4)、28 日目 (n = 4) にマウス膝関節と血清を採取し、組織学的評価及び血清中の炎症性サイトカインの測定を行った。組学的評価として、ヘマトキシリンエオジン染色では Osteoarthritis Research Society International (OARSI) recommended scoring を用いて滑膜炎の評価を行い、サフラニン O 染色では OARSI cartilage OA histopathology scoring を用いて関節軟骨破壊の評価を行った。免疫学的組織評価として滑膜及び関節軟骨における IL-1β、TNF-α、phosphor-IkB kinase complex (p-IKK) α/β、MMP-3、MMP-9、MMP-13、F4/80、CD86、CD206 の染色とF4/80 スコア、M1/M2マクロファージ比、各々の陽性細胞率の計測を行った。各タイムポイントでのマウス血清中の IL- 1β、IL-6、TNF-α もELISA で測定した。

ヒト滑膜細胞
人工膝関節置換術の際にヒト滑膜を採取し、RA (n = 5) 及び OA (n = 5) の滑膜細胞の単離培養を行った。OA 及び RA 滑膜細胞をコントロール群と、リポフェクション法により nonspecific small-interfering RNA (siRNA)を導入した群 (control siRNA 群) と、p21 siRNA を導入した群 (p21 siRNA 群) の 3 群に分けた。

Reverse transcriptase–polymerase chain reaction (RT–PCR)・Western blotting 法
各郡の細胞を刺激なしの細胞及び IL-1β で 15 分もしくは 24 時間刺激した細胞に分け蛋白・RNA を採取し、RT–PCR 及び Western blotting 法にて評価を行った。刺激なしの細胞と 24 時間刺激した細胞を使用し RT–PCR で human p21、 IL-6、 IL-8、 MMP-3、 MMP-9 の発現を OA 滑膜細胞と RA 滑膜細胞で比較した。また、刺激なしの細胞と 15 分刺激した細胞を使用し Western blotting 法でp-IKKα/β、phosphor-inhibitor of κB (p-IκBα)、IκBα の発現を OA 滑膜細胞と RA 滑膜細胞で比較した。

統計解析
関節炎スコアと組織学的評価の測定結果を two-way analysis of variance (ANOVA)検定で RT-PCR 及び Western blotting の結果を one-way ANOVA 検定を行い、各郡の比較を Tukey’s post hoc test で統計学的に解析した。

【結果】
関節炎スコア・組織学的評価・ELISA による関節炎の評価
関節炎スコアは、抗体投与後 7、10、14、28 日目に p21 欠損群では WT 群より有意に高値であった。サフラニンO 染色では、抗体投与後 7 日目でp21 欠損群のみ軟骨基質の染色性の低下を認め、28 日目では p21 欠損群で関節軟骨の破壊を認め、OARSI cartilage OA histopathologyスコアが WT 群より有意に高値であった。ヘマトキシリンエオジン染色では抗体投与後 7 日目で p21 欠損群は表層細胞の重層化も認め滑膜炎がより高度であった。p21 欠損群は 14、28 日目でも WT 群に比較し強い滑膜炎を認め、OARSI recommended スコアも各タイムポイントで WT 群に比較し有意に高値であった。ELISA による全身性の炎症性サイトカインの評価でも、IL-1β、IL- 6、TNF-α はいずれも各タイムポイントでp21 欠損群が有意に高値であった。

滑膜組織・関節軟骨での炎症性マーカー及び基質分解酵素の発現
炎症性マーカーである IL-1β、TNF-α、p-IKKα/β は関節軟骨において抗体投与後 7、14、 28 日目でp21 欠損群では WT 群より強く染色され、陽性細胞率も有意に高値であった。マクロファージのマーカーであるF4/80、CD86 (M1 マクロファージ)、CD206 (M2 マクロファージ) は関節軟骨において抗体投与後 7、14、28 日目でp21 欠損群では WT 群より強く染色され、F4/80 スコアと M1/M2 比も有意に高値であり M1 優位のマクロファージ浸潤の増加を認めた。基質分解酵素であるMMP-3、MMP-9、MMP-13 は滑膜組織・関節軟骨において、抗体投与後 7、14、28日目で p21 欠損群では WT 群より強く染色され、MMP-3、MMP-13 の陽性細胞率も有意に高値であった。

滑膜細胞におけるp21・ILs・MMPs の発現
単離培養した RA 滑膜細胞と OA 滑膜細胞の RT–PCR 結果より、p21 の発現は RA 滑膜細胞で OA 滑膜細胞と比較して有意に低く、IL-6、 IL-8、 MMP-3、 MMP-9 の発現は有意に高値であった。

炎症性刺激に対する炎症性サイトカイン・基質分解酵素・炎症経路の比較
RT–PCR による IL-6、 IL-8、 MMP-3、 MMP-9 の測定結果より、コントロール群と control siRNA 群の間に有意差は認めず、p21siRNA 群のみ各項目で有意な上昇を認め、その上昇の程度は RA 細胞でより増強されていた。Western blotting 法によるp-IKKα/β、p-IκBα、IκBα の測定結果より RA 及び OA 滑膜細胞ではコントロール群に比較してp21siRNA 群で p-IKKα/β、p- IκBα の有意な上昇と IκBα の有意な低下を認めた。さらに、IL-1β 刺激に対する p-IKKα/β、p- IκBα の上昇もしくは IκBα の低下も RA 細胞で有意に大きく、p21 ノックダウンにより IKKα/β、 IκBα のリン酸化と IκBα の分解が OA 細胞と比較し RA 細胞で有意に増強されていた。

【考察】
今回の研究により、p21 欠損マウス関節炎モデルの滑膜組織・関節軟骨において NF-kB経路を介した滑膜炎の増悪及び関節軟骨の破壊を引き起こしていることが示唆され、vitro の実験においても p21 の発現抑制により OA 滑膜細胞に比較して RA 滑膜細胞で NF-kB 経路を介した炎症の増悪を引き起こしていることが示唆された。

p21 と炎症に関して我々の過去の報告では p21 欠損マウスの OA モデルで関節炎の増悪と関節の OA の進行を認めたと報告しており、他の報告では p21 の欠損が炎症性サイトカインや細胞浸潤が増悪することが示唆されている。本研究では p21 欠損マウスで滑膜炎の増悪と関節軟骨の破壊や M1 優位のマクロファージ浸潤の増加、全身及び関節局所での IL-1β、TNF-α、IL-6 の上昇、局所での p-IKKα/β、MMP-3、MMP-9、MMP-13 の発現の有意な上昇を認めており、p21欠損関節炎モデルマウスでは NF-kB 経路を介した全身及び局所の炎症の増悪および軟骨の破壊が起こることが示唆された。Vitro の実験でも、以前より p21 が抗炎症効果や細胞増殖能の低下作用が示唆されているが、本研究では RA 滑膜細胞の p21 の発現抑制がIL-1β の刺激に対する IL-6, IL-8 の上昇、IKKα/β、IκBα のリン酸化の活性化、MMP-3、MMP-9 の有意な増加を起こしており、Vivo の実験と同様にヒト滑膜細胞においても p21 ノックダウンにより NF-kB 経路を介した炎症の増悪が起こることが示唆された。さらに、RA 滑膜細胞における p21 の発現は OA 滑膜細胞と比較し有意に低値であり、RA において p21 の発現低下が滑膜炎の増悪に寄与していることが示唆された。

【結語】
本研究の結果より、p21 欠損マウス CAIA モデルでは関節炎は増悪し、関節軟骨破壊を来し、その病態に IL-1β、TNF-α、IL-6 とマクロファージが強く関与することが明らかになった。 p21 発現は RA の滑膜炎と関節破壊を抑制する可能性が示唆され、p21 発現のコントロールが RAの新たな治療につながる可能性が示された。

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