Characteristics of the mesoscale field-aligned currents in the dusk sector of the auroral oval based on data from the Swarm satellites
概要
本論文では,オーロラオーバルの夕方側領域に現れるメソスケールの沿磁力線電流について,その性質と生成過程を明らかにすることを目的としている.
まず,第1章では,ラージスケールの沿磁力線電流の一般的な性質を解説し,磁気圏において,その電流がどのように生成されるのか,また,極域の電離圏においてどのように閉じているのかについてまとめている.メソスケールの沿磁力線電流については,その未解決となっている点を述べ,それをふまえた本研究の目的を示している.
第2章では,本論文で用いる磁場データと,そのデータを取得した極軌道のSwarm衛星編隊飛行観測の特徴について説明している.また,同じく本論文で使用している地上オーロライメージャーのデータとDMSP衛星の磁場と降下粒子のデータについても述べている.
第3章では、Swarm衛星と地上オーロラ全天イメージャーの共役同時観測の2例を提示している.ともに,安定した北向き惑星間空間磁場のもとでの観測であり,それぞれの例において,編隊飛行をする2機のSwarm衛星がともに不規則な磁場変動を捉えている.その1秒値の磁場データの解析を通して,不規則な変動が動的なアルベーン波によるものではなく,準静的なメソスケール(緯度幅は概ね20-30 km)の沿磁力線電流の多重構造によるものであることを示している.オーロラ全天イメージャーのデータからは,そのメソスケール構造で電流が流れ出している部分において,630 nmの波長の光のオーロラが相対的に強くなっていることを示し,その領域で数100 eVのエネルギーをもつ電子降下のエネルギーフラックスが高くなっていることを指摘している.これらをもとに,メソスケールの沿磁力線電流の多重構造は,安定した北向き惑星間空間磁場のもとでは,30分以上の長い間持続する現象であることを示している.また,DMSP衛星とオーロラ全天イメージャーとの共役同時観測例も示し,メソスケールの沿磁力線電流が,磁気圏の夕方側の低緯度境界層につながっていることを示している.さらに,その夕方側低緯度境界層における沿磁力線電流の生成のシナリオを提示している.
第4章では,Swarm衛星が3年以上にわたって取得した大量の磁場データに基づく統計解析の結果を示している.イベントの自動同定の方法により,準静的なメソスケールの沿磁力線電流の多重構造の事例を577の衛星軌道において同定している.現象が同定される頻度は,惑星間空間磁場の北向き成分が大きくなるにつれて上昇し,また,電流の密度は,太陽風のプロトン密度とともに増加する傾向があることも示している.これらの統計結果をもとに,磁気圏の夕方側低緯度境界層の中に沿磁力線電流の生成領域が複数形成され,その生成メカニズムには惑星間空間磁場の北向き成分が大きくなると起こりやすくなる太陽風プラズマの流入過程が関わっていることを示している.
最後の第5章では,全体的な結論を述べている.