リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Tooth brushing, tooth loss, and risk of upper aerodigestive tract (UADT) cancer: a cohort study of Japanese dentists」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Tooth brushing, tooth loss, and risk of upper aerodigestive tract (UADT) cancer: a cohort study of Japanese dentists

塚本, 峰子 名古屋大学

2021.07.14

概要

【緒言】
 上部気道消化管がんは世界で 6 番目に有病率が高く、上部気道消化管がんの予防は世界保健機関(WHO)の優先的な行動課題である。先行研究では、遺伝的要因、歯周病、ヒトパピローマウイルス感染、歯の喪失、および口腔衛生状態の悪さが上部気道消化管がんリスクを高めることが示唆されている。
 歯垢は歯周病や歯の喪失の原因であり、歯磨きでの歯垢除去は口腔衛生改善や歯周病の予防に有効である。また、歯周病は上部気道消化管がんと関連が指摘されており、歯磨きが上部気道消化管がんの予防に関連するかもしれない。歯磨きと上部気道消化管がんリスクとの関連を調査した研究がいくつかあるが、ほとんどの研究は症例対照研究であり、結果には一貫性がない。そこでコホート研究により、歯磨きが上部気道消化管がん発生に及ぼす影響を検討した。同時に歯の喪失と上部気道消化管がんリスクとの関連も解析した。

【対象及び方法】
 本研究は歯科医師を対象とした歯と全身の健康、栄養との関連に関する研究(LEMONADE [Longitudinal Evaluation of Multi-phasic, Odontological, and Nutritional Associations in Dentists] Study)の一部であり、研究対象者は全国の都道府県歯科医師会会員(歯科医師、 58,792 名)である。2001-2006 年に自記式調査票によるベースライン調査を実施し、ベ ースライン時点の歯磨き頻度、喪失歯数(智歯除く)、他の生活習慣などの情報を収集 した。参加者 21,272 名(回答率 36.2%)のうち、がんの既往がない等の条件を満たす 20,445 名を分析に含めた。上部気道消化管がん(ICD10 コード C00-06,10,13,15)への罹 患、死亡については、参加者の書面による同意を得た上で、都道府県歯科医師会が共 済制度等を通じて把握した情報を収集し、原則として 2014 年 3 月まで追跡した。
 統計学的解析では、アウトカムを上部気道消化管がん罹患または死亡とし、歯磨き頻度群別および喪失歯数群別のハザード比(HR)を、Cox 比例ハザードモデルを用い年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、喪失歯数または歯磨き頻度を調整して算出した。基準群は先行研究を参考に、歯磨き頻度では 1 日 2 回、喪失歯数では 0–14 歯または 0–9 歯とした。

【結果】
 ベースライン時点の平均年齢±SD は 51.8±12.0 歳で、女性は 1,607 名(7.9%)とベー スライン調査時の全都道府県歯科医師会会員の女性割合とほぼ同じであった(2009 年、 8.0%)。平均 9.5 年間の追跡期間中に、食道がんが 41 例、咽頭がんが 10 例、口腔がんが 11 例の合計 62 例の上部気道消化管がんの罹患・死亡が同定された。
 上部気道消化管がんリスクは、1 日歯磨き回数 1 回以下、2 回、3 回、4 回以上の多変量調整 HR がそれぞれ 2.13(95%信頼区間:1.04–4.37)、1(基準群)、1.24(0.63–2.45)、 1.21(0.51–2.90) (trend P = 0.22)であり、1 日歯磨き回数 1 回以下で有意に上部気道消化管がんリスクが上昇していた(Table 1)。追跡期間 1 年未満を除外した感度分析では、1 日歯磨き回数 1 回以下の HR は 1.86(0.89–3.88)とやや小さくなった。
 喪失歯数と上部気道消化管がんリスクの間には統計学的に有意な関連が認められなかった。喪失歯数 0–14 歯、15–27 歯、28 歯の上部気道消化管がんの多変量調整 HR は、それぞれ 1(基準群)、1.03(0.41–2.61)、1.37(0.50–3.75) (trend P = 0.58)であった(Table 2)。喪失歯数 0–9 歯、10–19 歯、20 歯以上の HR は、それぞれ 1(基準群)、1.14(0.45–2.87)、 1.10(0.46–2.62) (trend P = 0.81)であった。追跡期間 1 年未満を除外しても、歯の喪失と上部気道消化管がんリスクとの間に有意な関連はないとの所見は本質的に変化しなかった。

【考察】
 本コホート研究では、1 日 1 回以下の低い歯磨き頻度が上部気道消化管がんのリスク上昇と有意に関連した。歯の喪失と上部気道消化管がんリスクとの間には有意な関連は認められなかった。
 歯垢は局所的または全身的な炎症を引き起こし、炎症は正常な細胞の増殖制御を損傷する。さらに口腔微生物はニトロソアミンを産生し、発がんに関与している可能性がある。歯垢やニトロサミンを除去するには、歯磨きが最も効果的で簡便な方法である。さらに、上部気道消化管がんの主要な病因因子として確立されているヒトパピローマウイルス、アルコール残留物、ニコチン、タール、その他タバコに含まれる多くの有害物質は、歯磨きによって除去または減少させることができる。これまでの研究結果とも合わせて考えると、1 日 2 回以上歯を磨かない者が、より頻回かつ効果的に歯を磨けば、上部気道消化管がんリスクが減少するかもしれない。
 歯周病は口腔内の炎症性疾患であり、歯を失う主な原因である。さらに、歯周病は上部気道消化管がんと関連が指摘されてきたことから、がんの発生に直接に役割を果たしている可能性がある。したがって、歯の喪失は上部気道消化管がんのリスクの指標となるかもしれない。にもかかわらず、我々の結果は、歯の喪失と上部気道消化管がんリスクとの間に有意な関連を示さなかった。過去のコホート研究では、歯の喪失と食道がんリスクとの間に有意な関連が報告されていたが、3 研究では関連は認められなかった。我々の所見はこれら 3 件の報告と一致しているが、多数の症例対照研究の所見とは矛盾している。歯の喪失は、セルフケアの態度、外傷、矯正治療、健康保険の状況、歯科医療へのアクセス、受けた歯科医療の質など、さまざまな要因と関連している可能性がある。本研究の参加者は全員歯科医師であり、一般よりも口腔ケアに関する知識と技術を持っているため、本研究の所見は多くの先行研究とは異なるかもしれない。ただし本研究における上部気道消化管がんの症例数は、多くの歯を失った研究参加者の中では少なかったため、歯の喪失が上部気道消化管がんのリスクの指標となり得るかどうかを判断するためには、さらに研究が必要である。
 本研究にはいくつかの長所がある。第一に、前向きコホート研究であることから、関連性の時間性が保証されている。第二に、歯磨きと上部気道消化管がんのリスクとの関係を検討したコホート研究は、我々の知る限りでは初めてである。第三に、本研究では社会経済状況と歯科医療へのアクセス可能性という点で、比較的均質な歯科医師集団が対象となっている。
 また本研究にはいくつかの限界もある。第一に、歯を失った原因を特定していない。第二に、喪失歯数は自己申告であった。しかし自己申告による歯の本数の妥当性は一般集団で示されており、歯科医師ではより高い妥当性が期待される。第三に、すべての変数はベースライン調査の質問票に基づいており、共変量の経時的変化は考慮していない。第四に、本研究は歯科医師のみを対象としているため、その結果は一般集団には当てはまらない可能性がある。しかし、炎症、ニトロサミンの産生など、基礎となりうる機序は、歯科医師と一般集団に共通するはずである。第五に、研究参加者の 92%以上が男性であった。歯の健康状態は、男性と女性ではがんリスクに異なる寄与をするかもしれない。最後に、我々の結果は歯磨きと上部気道消化管がんのリスクとの間に統計的に有意な関連を示したが、がんの症例数(n = 62)は比較的少なかった。したがって、歯磨きと上部気道消化管がんリスクとの関連を確認するためには、より大規模なコホート研究が必要である。

【結論】
 低い歯磨き頻度は、上部気道消化管がんリスクの上昇と関連していた。一方、歯の喪失と上部気道消化管がんリスクの間には有意な関連は認められなかった。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る