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大学・研究所にある論文を検索できる 「放射光位相差X線CT法を用いた急性大動脈解離の大動脈壁構造解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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放射光位相差X線CT法を用いた急性大動脈解離の大動脈壁構造解析

Yokawa, Koki 神戸大学

2021.03.25

概要

【目的】
 急性A型大動脈解離(ATAAD)の手術成績は向上したものの、未だprehospital deathが多い疾患である。さらなる治療成績の向上のため、ATAADの発症機序の解明とその発症予測が重要であると考えた。過去に大型放射光施設(SPring-8)の位相差X線CT法(XPCT法)を用いてATAADを発症したMarfan症候群患者の大動脈壁の2D、3D画像での解析が報告されており、大動脈壁の構造解析に有用であると考えた。XPCT法を用いて急性大動脈解離を発症した大動脈壁の解析を行うことで、微細構造を明瞭に可視化し、これまでの病理学的な評価では行い難い定量的な解析を行った。本研究によって急性大動脈解離発症後の大動脈壁の構造変化を定量的に評価することで、他モダリティでの評価につなげ将来的に急性大動脈解離発症を予測する第一歩となる。

【方法】
 SPring-8でのXPCT法は、通常の医療用髙性能CT法の約1000倍の空間分解能(解像度は12.5μm)と密度分解能(1mg/cm3以下)を有し、X線吸収差が少ない軟部組織の解析に有効で組織密度の定量分析が非破壊で可能である。ATAAD手術時に採取された上行大動脈の切除標本と、他疾患で死亡し病理解剖により得られた上行大動脈をコントロールとし比較検討した。上行大動脈の摘出方法として、Sino-tubular juction上3cmを短軸方向に2cm幅で切除し、円形に摘出することで、解離部分と非解離部分での評価を行えるようにした。摘出後、ホルマリン固定し、XPCT法での解析を行った。標本の内訳はMarfan症候群のATAAD5例、非Marfan症候群のATAAD7例、および正常大動脈6例で、解離標本では大動脈壁内の非解離部分を対象としてXPCTによる二次元(2D)ならびに三次元(3D)解析を行った。XPCT計測後に病理組織学的に弾性線維、膠原線維、平滑筋細胞、血管内皮細胞、ならびに壊死性中膜壊死の分布について病理組織学的に検討した。

【結果】
 正常大動脈壁の中膜密度は1.081 ± 0.001g/cm3と壁内でほぼ均一の値を示した。非Marfan症候群の大動脈壁の中膜の密度は1.066 ± 0.003g/cm3で正常大動脈と比較し有意に低かった(P<0.0001)。さらに壁内では内膜側と外膜側であり有意差に内膜側が低かった(1.063 ± 0.003g/cm3 vs. 1.074 ± 0.002g/cm3, p<0.0001)。Marfan症候群を有する大動脈壁非解離部分の中膜組織密度は1.079 ± 0.008g/cm3であり非Marfan症候群の大動脈壁と比べ有意に髙値であった(p=0.0003)。また、正常大動脈と比較し、中膜密度にばらつきを認め、大動脈壁の病理学的な解析から嚢胞性中膜壊死や弾性線維の断裂を非解離部分に認めた。

【結論】
 放射光位相差X線CT法は急性大動脈解離を発症した大動脈壁構造を定量的に解析できる有用な方法である。非Marfan症候群で急性大動脈解離を発症した大動脈壁の非解離部分において中膜の密度低下を伴う大動脈壁構造の変化を認めることから、この変化は発症前より起こっていると考えた。定量的に大動脈壁を検討した研究は過去に少なく、今後さらに大動脈壁の構成成分を定量的に評価することで、大動脈の脆弱性を評価し、急性大動脈解離発症を予防することへつなげる重要な研究であったと考える。

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