リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「中国内モンゴルにおける肉用牛繁殖経営の現状と課題 : 赤峰市における半農半牧村と牧畜村を事例にして」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

中国内モンゴルにおける肉用牛繁殖経営の現状と課題 : 赤峰市における半農半牧村と牧畜村を事例にして

宝音図 東京農工大学

2022.05.18

概要

本論文は、中国内モンゴル自治区における肉用牛繁殖経営の現状と課題について、半農半牧村と牧畜村の比較実証分析を通じて明らかにした結果を取りまとめたものである。本研究の具体的な研究課題は以下の3点である。

1) 中国の牛 肉 産業の現 状について各種公刊統 計を用いて整理し、そのうえで中国及び内モンゴルにおける肉用牛繁殖経営の位置づけを明確にする。

2) 近 隣に位置しつつも、 飼料基盤及び立地条件において顕 著な地域差が存在する内モンゴル赤峰市の半農半牧村と牧畜村における肉用牛繁殖経営の現状を収益性及びその背景に注目し、明らかにする。

3)当該 2村における肉 用 牛 繁殖経営の課 題及び経営者の今後の意向を明らかにし、そのうえで今後の経営改善に向けた方向性に言及する。

課 題 2 )と3 )は、赤峰市バイリン右旗の半農半牧村と同市アルホル旗の牧 畜村で実施した農家経営調査( 33戸:半農半牧村16戸、 牧 畜村17戸)から収集した農家レベルのデータを用いた定量的分析に基づく。

各研究課題において明らかになった主な点は以下に要約される。

1 )近年、中国では所得水準向上を背景にして牛 肉消費 量が増大し、それに伴い牛肉輸入量も急増している。こうしたなか、国内牛肉生産の強化が急務とさ れ、肥育及び繁殖経営の拡充が重要課題になっている。国内有数の牛肉生産地である内モンゴル自治区においても肉用牛繁殖経営の強化が求められている。

2 )収益性に関する分析から以下の点が明らかにされた。第 1に、飼料基盤については、半農半牧村では濃厚飼料が主体であり、牧畜村では粗飼料が主体である。 第 2に、2000年代前半の環境保護政策以降 、半農半牧村では耕地でのトウモロコシ生産の強化、牧畜村では素牛出荷時期の放牧期間初期への転換により、飼料基盤の維持・拡充が図られてきた。半農半牧村ではトウモロコシ増産により、余剰生産物が生じ、その販売が大きな収入源になっている。第 3に、両村間には飼料基盤の顕著な違いがみられるものの、飼養頭数、粗収入、経営費、純収入において両村間に統計的な有意差はない。第 4に、規模階層間の収益性の比較から、半農半牧村ではトウモロコシの販売収入が大きい中規模層において優位性があり、牧畜村では広い牧草地をもつ大規模経営において優位性がある。ただし、両村とも大規模層では自給飼料の不足により、小・中規模層に比較して購入飼料依存率が高くなっている。第 5に、純収入を規定する主な要因は、飼養頭数、耕地面積、トウモロコシ販売の有無、素牛出荷率、素牛出荷体重である。飼料基盤の差に由来する繁殖管理・飼養方法の差が純収入の遠因になっていることが示唆される。半農半牧村では、飼養頭数、素牛出荷率、素牛出荷体重の素牛販売の構成要素のほか、重要な飼料供給源かつ収入源でもあるトウモロコシが生産されている耕地の面積が純収入の規定要因になっている。他方、牧畜村では素牛販売の構成要素の重要性については同様の結果であったが、唯一の飼料基盤である牧草地の面積が純収入に有意な影響を及ぼしていない。牧草地面積が必ずしも牧畜村繁殖農家の自給飼料生産力を反映していないことが示唆される。

3 )小規模層は出荷先の不安定性等の経営外部条件を問題と捉え、現 状 維持を志向する傾向にある。他方、大規模層は労働力不足、優良品種の少なさ、牧草地不足等の経営内部資源の不足を問題であると捉え、それら自己資源の拡充・強化により規模拡大を志向する傾向にある。将来、調査村では農家の分極化が進行し、経営規模格差の拡大化の可能性があることが示唆される。

調査村における今後の肉用牛繁殖経営の安定的発展には、これまでの量的拡大に加え質的改善が不可欠である。将来的には飼養頭数の拡大よりも、むしろ優良品種の導入や飼養管理技術の向上等による繁殖牛 1 頭当たり収益性の向上が重要になる。同時に、牧草地の保全に配慮した飼料基盤の拡充・強化が不可欠になる。半農半牧村ではトウモロコシの持続的生産の確保、牧畜村では唯一の飼料基盤である牧草地の利用効率の向上が求められる。

以上の結果は、肉用牛繁殖・肥育一貫経営と肉用牛肥育経営または繁殖経営等、異なる経営類型間の比較分析や地域性に注意を払わない研究においては見出せなかった知見である。先行研究の蓄積が十分ではない中国の肉用牛繁殖経営に関する研究分野における新たな知見といえる。

この論文で使われている画像

参考文献

阿柔瀚巴図(2003 年)「中国内考古の牧畜業における草地利用方式に関する研究」『農業経済研究報告』(35)

阿拉坦沙・千年篤(2012):「内モンゴルの牧畜業の持続的発展方向に関する検討」―「連戸牧場」を事例として」島根県立大学『北東アジア研究』第 23 号

阿拉坦沙・千年篤・淵野雄二郎(2011 年)「中国内モンゴル自治区の牧畜業産業化発展方向と問題点―「養羊小区」を事例としてー」養賢堂『畜産の研究』第 65 巻 第9号

石自忠(2017 年):「中国における肉用牛繁殖の効率と影響因子の分析」『中国農業科技導報』第 19 巻第 2 号

殷 佩瑜 (2011 年)「中国内モンゴル自治区における牛肉生産の持続可能な発展と牛肉産業チェーンの再編に関する研究」東京農工大学大学院連合農学研究科

伊藤操子 ・敖 敏・伊藤幹二(2006 年)「内モンゴル草原の現状と課題」『雑草研究』第 51巻 第 4 号

永海・星野仏方・ソリガ(2017 年)「内モンゴル半農半牧地域における「新たな農地開発」の実態と課題―赤峰市の末端行政レベルからの考察『沙漠研究』第 27 巻 第 1 号

王琼・劉玉梅(2019 年)「中国牛肉産業発展の現状分析」『海外情報・畜産の情報』 2019 年12 月号

王消消・何龍(2012)「小規模肉牛養殖場経済效益的調査分析」『中国草食動物科学』第 32巻 第 2 号

敖登花・松下秀介・双喜(2012 年)「中国内モンゴル自治区四子王旗における牧畜農家行動と過剰放牧の規定要因に関するー考察」『農業経営研究』50 巻 1 号

鬼木俊次・加賀爪優・余勁・根鎖(2007)「中国の退耕還林政策が農家経済へ及ぼす影響―陜西省・内モンゴル自治区の事例『農業経済研究』第 78 巻 第 4 号

鬼木俊次・双喜(2004)「中国内モンゴルおよびモンゴル国における地域的過剰放牧―牧民の家計調査の結果からー『農業経済研究』第 75 巻 第 4 号

鬼木俊次・双喜(2003 年)「中国及びモンゴル国の市場経済化と牧畜経済の変容」TEA 会報告論文 2003 年 10 月

杜 甘露(2012 年)「小规模肉牛养殖场经济效益的调查分析」『養殖与饲料』2012 年

巴 図(2007 年)「内モンゴル牧畜経営の実態と環境問題」『横浜国際社会科学研究』第 12 巻第 2 号

バラジニマ・加藤直子(2016 年)「中国農村信用社における草地担保貸付制度の展開と課題ー内モンゴル牧畜地域からの考察ー『農業経済研究』第 88 巻 第 3 号

広田秀憲 (1990 年)「草地学」『文永堂出版』東京 pp.47-64

暁剛(2014 年)「内モンゴル東部地域における農業政策が土地利用に及ぼした影響『農業経済研究』第 32 巻 第 1 号

韓柱・鄭青・安部淳・周忠(2008 年)「中国内モンゴルにおける「禁牧・休牧」と畜産経営ー農牧交錯地帯を対象にー

『農業市場研究』第 17 巻 第 1 号

張 文勝ら(2005 年)「内モンゴル牧戸の収益性構造と経営的特質」『農業経営研究』第 43 巻第 3 号

張 微ら(2009 年)「不同肉牛生产规模的经济效益比较分析『中国农学通报』 第 25 巻

李 分秀・三国 栄實(1999 年)「中国における牛肉生産と流通構造の現状『生物生産学研究』第 38 巻 第 1 号陳 暁紅・小栗克之(2001 年)「中国における牛肉市場分析『農業経済論集』第 52 巻 第 2号

陳 暁紅・小栗克之・李鎖平(2000 年)「農作物わら利用による中国養牛事業の展開『農業経営研究』第 38 巻 第 2 号

王洪亮(2017)「舎飼繁殖母牛飼養成本与效益分析『中国牛業科学』 第 43 巻

包鳳欄・達古拉(2012)「内モンゴル半農半牧区形成及び変遷的制度分析『生態経済』 第1 巻

郭慶海(2009)「中国のトウモロコシ市場に関する分析

『農業経済研究』第 81 巻 第 2 号司玉潔(2014)「内モンゴル牧畜地域における生態保護政策とその影響に関する一考察『愛知県立大学大学院国際文化研究科論集』 第 15 巻

鳥力吉図(2002)「内モンゴル高原における沙漠化の一要因―経済の観点から『現代社会文化研究』 第 24 巻

長命洋佑・呉金虎(2011)「中国内モンゴル自治区における農業生産構造の規定要因に関する研究『システム農学』第 27 巻 第 3 号

張微・朱躍明・超興友・王全業・申躍宇・莫放(2009)「不同肉牛生産規模経済効益分析」『中国農学通報』第 25 巻 第 9 号

張文勝・藤原貞雄・糸原義人(2005)「内モンゴル牧戸の収益性構造と経営的特質『農業経営研究』第 43 巻 第 3 号

張文勝(2003)「内モンゴル牧畜業における畜種構造変化の要因分析」『農林業問題研究」第39 巻 第 3 号

張瑞珍(2009 年)『中国半乾燥地域持続的農牧業の発展―内蒙古荒漠化地域の事例にー』中国農業出版社

ネメフジャルガル(2006 年)「中国の農村税費改革と地方財政問題―内モンゴル自治区の牧畜地域を事例に『経済学研究論文集』 第 31 号

陳建華・魏百剛・蘇大学(2004)「農牧交錯帯可持続発展戦略と対策」『化学工業出版社』朝克図・草野栄一(2007 年)「中国内蒙古自治区における草原環境保全政策と牧畜経営―オルドス市における禁牧農村の事例分析―『開発学研究』第 17 巻 第 3 号

朝魯門(2018 年)「乾燥・半乾燥地域における農牧業の経営展開と環境政策の課題―中国内モンゴル自治区を事例にー」『岐阜大学大学院連合農学研究科・博士論文』

何淑珍(2018)「中国内モンゴルにおける現代化と牧畜民の生活変化」『村落社会研究』 第24 巻 第 2 号

若林剛志・王雷軒(2017):「中国における大規模肉用牛経営重視の生産振興と肉用牛経営体が直面する課題『農林金融』第 70 巻 第 7 号

参考文献をもっと見る

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る