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大学・研究所にある論文を検索できる 「高選択的三次元HPLC分析法の開発と慢性腎臓病における血中キラルアミノ酸の網羅的含量解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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高選択的三次元HPLC分析法の開発と慢性腎臓病における血中キラルアミノ酸の網羅的含量解析

古庄, 仰 FURUSHO, Aogu フルショウ, アオグ 九州大学

2022.03.23

概要

タンパク質を構成するアミノ酸20種には、グリシンを除いて鏡像異性体の関係にあるD体とL体が存在する。近年の研究により、慢性腎臓病(CKD)と生体内D-アミノ酸含量に関連があることが明らかになってきた。CKDは国内での患者数が1300万人を超える国民病であり、進行すると腎代替療法が必要で生活の質の低下が避けられないため、早期に発見して治療を開始することが望ましい。しかし、既存の腎機能マーカーは疾患初期での変動が僅かであることから早期診断が困難であり、鋭敏な新規診断指標が切望されていた。これまでにD-アミノ酸数種の血中濃度が病態に伴って上昇することや既存の腎機能マーカーと相関することが報告されており、新規バイオマーカー候補として期待されている。D-アミノ酸の分析には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が汎用されており、中でも逆相分離と光学分割を組み合わせる二次元(2D)HPLC法は2段階のLC分離により選択的にD-アミノ酸を分析可能である。しかし、生体内D-アミノ酸含量は殆どの場合ごく微量であり、多種多様な生体成分による定量妨害を受けやすいことから選択性の不足に起因して測定可能なアミノ酸や試料に制限があった。そこで本研究では、より高選択的なキラルアミノ酸分析を目的として2D-HPLC法に新たな分離次元を追加した三次元(3D)HPLC法を開発し、CKDにおける血中キラルアミノ酸の網羅的含量解析を試みた。

 第一章では、CKDとの関連が指摘されているD-アラニン(Ala)、D-アスパラギン(Asn)、D-セリン(Ser)およびD-プロリン(Pro)を分析対象とする3D-HPLC法を開発し、有用性を評価した。試料中のアミノ酸は4-Fluoro-7-nitro-2,1,3-benzoxadiazoleを用いてプレカラム誘導体化し、LCに導入して蛍光で検出した。3D-HPLCの一次元目には微粒子充填型ODSカラムであるSingularity RP18(1.5x500mm)を使用し、移動相に0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む15%アセトニトリル(MeCN)水溶液を用いることで対象アミノ酸を他のアミノ酸および夾雑成分から120分で分離した。各アミノ酸をD体とL体の混合物としてそれぞれ分取し、得られた画分を二次元目に導入した。二次元目には逆相分離・光学分割とは異なる分離モードとして陰イオン交換分離を選択し、Singularity AXカラム(1.5x150mm)を装備して対象アミノ酸と夾雑成分の更なる分離を試みた。移動相に0.10%ギ酸を含むメタノール(MeOH)/MeCN混液(90/10、v/v)を用いた結果、対象アミノ酸が15-20分で溶出した。対象アミノ酸を再度分取し、各画分を三次元目のPirkle型光学分割カラム(SingularityCSP-001S、1.5x250mm)に導入して鏡像異性体の分離・定量を行った。移動相として0.15%ギ酸を含むMeOH/MeCN混液(85/15、v/v)を使用することで、全対象アミノ酸について30分以内での良好な光学分割を達成した(Rs>1.92)。開発した3D-HPLC法でヒト血漿試料を分析した結果、従来の2D-HPLC法で得られた結果と比較して最終次元での夾雑成分の顕著な減少が認められた。またCKD患者25検体の血漿試料分析において、全ての試料で夾雑成分による分析妨害を受けることなく微量D-アミノ酸を定量可能であり、3D-HPLC法が高い選択性を有することが示された。いずれの対象アミノ酸も既存の腎機能マーカーである推算糸球体濾過量(eGFR)の低下と共に血中%D値(D/(D+L)x100)が上昇する傾向が認められ、CKDとD-アミノ酸について3D-HPLC法を用いた更なる関連解析が期待された。

 第二章では、分析対象アミノ酸としてアスパラギン酸(Asp)、グルタミン、グルタミン酸(Glu)、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニンおよびバリンを追加し、キラルアミノ酸12種の一斉分析法開発を試みた。一次元目ではSingularity RP18カラム(1.0x500mm)を使用し、0.05%TFAを含む15-30%MeCN水溶液のグラジエント溶離により対象アミノ酸12種の相互分離を260分で達成した。二次元目にはSingularity AXカラム(1.0x150mm)に加えてミックスモードカラムであるSingularity MX-001カラム(1.0x250mm)を装備した。陰イオン交換カラムでの保持が強い酸性アミノ酸2種(Asp、Glu)はMX-001カラムで分析し、その他のアミノ酸はAXカラムを用いた。0.04-0.20%ギ酸を含むMeOH/MeCN混液(50/50、v/v)を移動相として用いることで全対象アミノ酸が15-20分程度で溶出した。三次元目の固定相にはSingularity CSP-001Sカラム(1.5x500mm)を選択し、0.2-0.9%ギ酸を含むMeOH/MeCN混液により、いずれのアミノ酸も50分以内に良好に光学分割された(Rs>1.37)。また標品を用いた検量線、再現性およびヒト血漿試料を用いた精度、真度について良好な結果が得られた。構築したシステムがヒト血漿試料の分析に適用可能であることが示されたため、健常人15検体およびCKD患者110検体の血漿試料を分析した。その結果、全ての試料において夾雑成分による定量妨害は認められず、キラルアミノ酸12種を正確に分析可能であった。これまでにCKDとの関連が報告されているAla、Asn、SerおよびProは健常人群に対してCKD群では血中%D値の有意な上昇が認められ(P<0.01またはP<0.05)、AsnとSerはeGFRと良好な相関を示した。また数種のD-アミノ酸について健常人群では殆ど認められない一方でCKD患者群では多くの検体で存在が確認され、CKD診断マーカー候補となる可能性が示された。

 本研究で開発した3D-HPLC法は3種の分離機構を組み合わせることで従来法よりも格段に高い選択性を有しており、100検体を超える臨床試料においてキラルアミノ酸12種の精密分析が可能であった。今後は分析対象を拡大し、種々の疾患におけるキラルアミノ酸含量変動を網羅的に解析することで、新規バイオマーカーの探索や有用性評価、臨床診断等への応用が期待される。

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