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大学・研究所にある論文を検索できる 「肛門管切開を伴う内視鏡的粘膜下層剥離術は術後狭窄のリスク因子である」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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肛門管切開を伴う内視鏡的粘膜下層剥離術は術後狭窄のリスク因子である

Sako, Tomoya 神戸大学

2020.03.25

概要

【背景】
内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)は、消化管の上皮性腫瘍(前癌病変およびリンパ節転移の可能性が極めて低い早期癌)に対する内視鏡的切除術である。ESD の術後合併症として、ESD 後狭窄がある。特に、食道、噴門、幽門輪などの管腔の狭い領域で問題となり、75%以上の周在切開(広範囲切除)が術後狭窄のリスク因子とされている。一方、直腸 ESD においては、術後狭窄は比較的まれであり、90%以上の周在切開が唯一のリスク因子と報告されている。また、狭窄症例においても無症状の患者が存在する。この違いは、直腸は管腔が広いため狭窄に至りにくいこと、また排便のための強い蠕動により日常的に圧がかかる生理的拡張作用によると考えられている。

しかし、直腸腫瘍の一部では ESD 時に肛門管切開を要するものがある。肛門管は肛門括約筋が存在し、管腔が極めて狭い領域であり、その上皮は扁平上皮である点で直腸とは異なる。そのため、肛門管切開を伴う直腸 ESD を施行した場合、肛門管切開を伴わない場合と比較して、異なった潰瘍の治癒過程や臨床経過をたどる可能性がある。

【目的】
肛門管切開を伴う直腸 ESD が術後狭窄および治療後の臨床経過に与える影響を明らかにする。

【方法】
2005 年 4 月〜2017 年 10 月に、神戸大学医学部附属病院と関連施設で 2320 名に大腸 ESD が施行され、そのうち直腸 ESD は 669 名、707 病変であった。そのうち切除範囲が 75%未満であった 591 例は術後狭窄が発生しなかったため除外した。切除範囲が 75%以上であったのは 116 例あり、当院および関連施設で治療後に経過観察ができた102 例を対象とした。

【結果】
75%以上の周在切開を行った直腸 ESD 症例 102 例のうち 18 例(17.6%)で ESD 後狭窄をきたした。直腸ESD 後狭窄のリスク因子の検討では、狭窄群(18 例)と非狭窄群(84 例)に分けてリスク因子を調べたところ、単変量解析では、肛門管切開を伴う直腸ESD (Rectal ESD involving the anal canal:ESD-IAC)、切除標本長径、切除範囲(周在)、処置時間、およびステロイド投与において有意差を認め、多変量解析では、90%以上の周在切開(OR:71.394、95%CI:12.08-1408.35、P <0.0001)およびESD-IAC(OR:5.528、95%CI:1.45-24.92、;P = 0.0115)が独立したリスク因子であった。

狭窄部位の検討では、狭窄症例 17 例(狭窄症例 18 例のうち 1 例は狭窄解除前に追加手術が施行されたため除外した)で直腸狭窄が 11 例、肛門管狭窄が 6 例であった。肛門管切開を伴わない直腸ESD (Rectal ESD not involving the anal canal:ESD-NIAC)後に狭窄が発生した場合、全例で直腸狭窄を呈していた。一方、ESD-IAC 後に狭窄が発生した場合、直腸狭窄、肛門管狭窄のいずれかが生じており、広範囲の肛門管切開を施行した症例では肛門管狭窄が発生する頻度が増加していた。

狭窄患者における自覚症状の検討では、狭窄による閉塞症状は、17 例中 9 例(6 例は軽度の排便困難と便の狭小化、3 例は重度の排便困難と腹部膨満)で認め、8 例は無症状であった。閉塞症状出現のリスク因子の検討では、狭窄部位(肛門管狭窄)のみが有意な因子であった(P= 0.0041)。さらに、重度の閉塞症状を呈した 3 例はすべて肛門管狭窄症例であった。

狭窄解除に要した拡張術の回数の検討では、直腸狭窄症例で 2.7(1-5)回、肛門管狭窄症例で 6.5(4-13)回であり、肛門管狭窄症例において有意に多い結果であった(P = 0.0263)。

【考察】
これまでに直腸 ESD 後狭窄のリスク因子を検討した報告は 3 報あるが、報告により 狭窄率が大きく異なることが問題点として挙げられていた(90%以上の周在切開での 狭窄率:16.7%〜52.1%)。本研究では過去最大の直腸 ESD 症例数で検討を行い、これ まで唯一のリスク因子とされた 90%以上の周在切開以外に ESD-IAC(ESD 時の肛門 管切開)が新たな術後狭窄のリスク因子であることを明らかにした。また、従来は直 腸 ESD 後狭窄としてひとまとめに取り扱われてきたが、狭窄は直腸狭窄と肛門管狭 窄に分けられ、狭窄部位により患者は異なる臨床経過を辿ることも明らかにした。肛 門管狭窄症例では直腸狭窄症例と比較して、閉塞症状の出現率が有意に高く、狭窄解 除に要する拡張術の回数も有意に多い結果であった。肛門管は非常に狭い管腔であり、伸展性の乏しい扁平上皮で覆われており、この領域への切開が異なる臨床経過を辿る 原因ではないかと推察された。また、これまで直腸 ESD 後に狭窄を呈しても無症状で ある患者が存在することが知られていたが、その多くは直腸狭窄症例であった可能性 があり、広範囲に ESD-IAC を行うと直腸狭窄とは性質が異なる肛門管狭窄のリスク が上がるため注意を要すると考える。

本研究のlimitation は、第一に 2 施設での後ろ向き研究であること、第二に一部の患者は狭窄対策にステロイド治療が行われたが、これは ESD 施行医の判断に任されていたことである。

【結論】
90%以上の周在切開だけでなく、ESD-IAC も直腸ESD 後狭窄のリスク因子であった。さらに、ESD 後の肛門管狭窄は、閉塞症状出現率が高く、狭窄解除により多くの拡張回数を要していた。このようなリスク因子を有する症例には術後狭窄についての注意が必要である。

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