リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「幽門内視鏡的粘膜下層剥離術後の幽門狭窄タイミングと内視鏡的バルーン拡張術の効果」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

幽門内視鏡的粘膜下層剥離術後の幽門狭窄タイミングと内視鏡的バルーン拡張術の効果

高山, 弘志 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Timing of pyloric stenosis and effectiveness of
endoscopic balloon dilation after pyloric
endoscopic submucosal dissection

高山, 弘志
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8494号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482242
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Timing of pyloric stenosis and effectiveness of endoscopic
balloon dilation after pyloric endoscopic submucosal dissection

幽門内視鏡的粘膜下層剥離術後の幽門狭窄タイミングと
内視鏡的バルーン拡張術の効果

神戸大学大学院医学研究科内科学講座
消化器内科学分野
(指導教員:児玉裕三教授)
高山

弘志

【背景】
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)はリンパ節転移のない早期癌に対する内
視鏡治療である. ESD には出血や穿孔などの早期合併症があるが, 遅発合併
症としては狭窄が知られている. 狭窄は食道で周在性の大きな ESD を行った
際に発症しやすいが, 胃では幽門における ESD を行った際に発症しやすいこ
とが知られている. 幽門狭窄のリスク因子として幽門の周在性 3/4 周以上の
粘膜下層剥離が報告されており, 狭窄に対しては内視鏡的バルーン拡張術
(EBD)が行われている.
しかし, これらのリスク症例に対しての適切な管理方法は確立されていな
い. 現状では ESD 後狭窄が発症するタイミングがわかっていないため, 術後
の内視鏡フォローのタイミングは術者の判断や患者の自覚症状に委ねられて
いる. そのため早い段階での狭窄を発見することができずに, 患者の状態が
悪化した段階で発見されることがある. また, 幽門 ESD 後の EBD の治療効果
や安全性についても不明瞭である.
今回の研究の目的は幽門 ESD 後狭窄のタイミングと EBD の治療効果を評価
することで, リスク症例に対しての適切な管理方法を検討することである.
【方法】
2003 年から 2020 年までの間に胃 ESD を施行した 3833 症例を後ろ向きに調
査した. その中で 193 症例の幽門 ESD 症例を選択した. 幽門 ESD 症例の定義
は, 幽門輪に粘膜切開ラインがかかった症例とした. 非治癒切除で外科手術
となった症例と自院で術後の経過を確認できなかった症例を除外し, 最終的
に 159 症例の幽門 ESD 症例を対象症例とした. 幽門 ESD 後の狭窄の定義は通
常の内視鏡スコープが通過しない状態とした.
まずこれらの症例の ESD 後狭窄リスク因子を多変量解析で再評価した. リ
スク因子が連続変数であった場合は, ROC 曲線で求めたカットオフ値以上の
症例をリスク群とした. 主要評価項目はリスク群における幽門 ESD 後の狭窄
タイミングとした. 狭窄タイミングを判断するためにカプランマイヤー曲線
にて ESD 後の累積非狭窄率を評価した. 副次評価項目は狭窄症例に対しての
EBD による狭窄解除率, 合併症率, 狭窄解除に要した EBD 回数, EBD 期間,
最大 EBD 拡張径とした. さらに, リスク因子を持つ症例のなかで幽門全周切
除症例と幽門非全周切除症例における狭窄率と EBD 成功率, EBD 回数, EBD
期間, 最大 EBD 拡張径を比較評価した.
【結果】
幽門 ESD 後の 159 症例のうち 25 症例(16%)に ESD 後狭窄を認めた. 狭
窄のリスク因子は幽門切除の周在性のみであり(オッズ比=1.10; 95%信頼区
間=1.06–1.15; p<0.001), リスク群は 76%以上の幽門周在性切除症例となっ

た(感度=0.93, 特異度=0.84, 曲線下面積=0.91). カプランマイヤー曲線で
の追跡期間中央値は 731 日(四分位範囲 98-1877 日)であり, リスク群は
有意に非リスク群よりも累積非狭窄率が小さかった(p<0.001). リスク群に
おける ESD 後の累積非狭窄率は ESD1 週間後で 97% (95%信頼区間: 79–100%),
2 週間後で 94% (95%信頼区間: 76–98%), 3 週間後で 85% ((95%信頼区間:
66–93%)であった. その後非狭窄率は 1 週間毎に小さくなり, 8 週以降から明
らかな変化を認めなかった.
保存的治療で改善した症例を除いた 23 症例の狭窄症例に対して EBD が行
われ, 全症例で狭窄が解除された. EBD に伴う穿孔や出血などの合併症は認
めなかった. 狭窄解除に要した EBD 回数(回)は中央値 4(四分位範囲 2-
6), EBD 期間(日)は中央値 21(四分位範囲 14-44), 最大 EBD 拡張径
(mm)は中央値 18(四分位範囲 15-18)であった. 幽門全周切除群(周在
性=100%)と幽門非全周切除群(76%≦周在性統<100%)の狭窄率に有意
差は認めなかった [86%(6/7 症例)vs 63%(15/24 症例),p=0.37]. 両群
の EBD 回数(回) [中央値 6(四分位範囲 5-6)vs 3(2-5),p=0.15],
EBD 期間(日)[中央値 40(四分位範囲 37-43)vs 16(14-50),p=0.69],
最大 EBD 拡張径(mm)[中央値 17 (四分位範囲 16-18) vs 17(15-18),
p=0.86]に有意差は認めなかった.
【考察・結論】
幽門 ESD 後狭窄のリスク因子は 76%以上の周在性切除症例であり, これら
における狭窄の多くは 3-8 週目に発症した. したがって, 狭窄リスクのある
症例に対しての内視鏡フォローのタイミングは 3-8 週目の間が重要であるこ
とがわかった. また幽門狭窄に対しての EBD は全ての狭窄症例に対して穿孔
や出血の合併症なく効果的であった. 胃全体における狭窄に対する EBD の穿
孔率は 7.8-8.3%という報告もあるが, 今回の研究で幽門狭窄に対しては安全
に EBD を行うことができることがわかった. この理由としては, 幽門では他
の部位よりも強靭な幽門括約筋が存在するからだと考える. さらに, 幽門全
周切除後の狭窄症例は幽門非全周切除後の狭窄症例と同様の拡張方法で狭窄
解除できることもわかった. 今回の研究の結論は以下の通りである. 幽門
ESD 後狭窄の多くは術後 3-8 週間目に発症した.幽門全周切除症例も含めた
全ての幽門 ESD 後狭窄症例は EBD により合併症なく解除できた.

神 戸 大 学 大 学院 医 学(
系)
研究科 (

専 じ課 程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

諭 文 起

I

T
i
t
l
eo
f
Dis
s
er
t
a
t
i
on

m第

3238 号

高山弘志

Timingofpyl
o
r
i
cs
t
eno
s
i
sandef
f
e
c
t
i
vene
s
so
fendos
co
p
i
cbal
l
o
on
d
i
lat
i
onaf
t
erpyl
o
r
i
cendos
c
o
p
i
cs
ubmucos
a
ld
is
s
e
c
t
i
o
n
幽 門 州 視銃 的 粘 膜 下 胴 剥 離 術 後 の 幽 門 狭 窄 タ イ ミングと
内視鏡的バルーン拡張術 の効果

下 査

審 査委日
Exa
min
er





受 付 番号

Ch
i
e
fExamine
r
I
'り

l


v
1
c
e・
exa
m1
ner
間I



Vi
c
e・
e
x
ammer

轟芥巧

澤渕和可
叫沙¥我---

(要旨は 1, 0 00字 ∼ 2, 0 00字程度)



【日的】

I
莫F
l
¥
'
儲j
l
離術 (
ESD) の遅発合併症としては狭窄が知られている .胃の幽門における ESD
内視鋭的粘I
を行った際に狭窄が発症しやすく,そのリスク l
大I
fとして幽門の周在 '
I
t3
/
4)
点l
以上の粘l
l
災ド)v
i浪l
l
離が報

EBD) が行われている .しかし,これらのリス
告されており,これに対して内視鏡的バルーン拡張術 (
ク症例に対しての適切な行狸方法は確立されていないまた,幽,➔1 JESD 後の EBD の治療効果や安全性に

ついても不明瞭である .今 1
川の研究の 1

1
的は幽 1
I

│ESD後狭窄のタイミングと EBDの治旅効果を評価す
ることで,リスク症例に対しての適切な管則方法を検討することである .


方法・成糾i

2003年か ら 202
0年までの間に胃 ESDを施行 した 3833症例を後ろ向きに調介した.その中で 1
9
3症
1
1
1ESD症 例 を 選 択 し た 非 治 癒 切 除 で 外 科 手 術 と な っ た 症 例 と 自 院 で 術 後 の 経 過 を 確 認 で き な か
例 の 幽1
5
9症例の i
:
l
i
:
I

"
lESD症 例 を 対 象 症 例 と し た ま ず こ れ ら の 症 例 の ESD後
った症例を除外し,飯終的に 1
人1
f
を多変閤解析で1
'
}評 価 し た リ ス ク 囚
狭窄リスク 1

fが連続変数であった場合は, ROC│I
I
線で求めた


'
1
1
[以卜の症例をリスク群とした. l


、i評 価 項 日 は リ ス ク 群 に お け る 幽 l
1
I
LESD後の狭窄タイ
カットオフ /
j

I線にて ESD後の累柏非狭窄率を
ミングとした狭窄タイミングを判断するためにカプランマイヤー l
1
¥
l
j次 評 価 項 1
1は狭窄症例に対しての EBDによる狭窄解除率,合併症率,狭窄解除に要した
評価した ./
EBD同数
, EBD)

I
l
'
t
l,h
丸KEBD拡 張 径 と し た さ ら に , リ ス ク 1
大I
f
を持つ症例のなかで幽門令周切除症
1
1
I
J
I
"
令周切除症例における狭窄率と EBD成功率, EBDI

1
1

, EB
D 期間,最大 EBD拡 張 径 を 比 較
例と幽l
評価 した .

D後 の 1
5
9症例のうち 2
5症 例 (16%)に ESD 後狭窄を認めた .狭 窄 の リ ス ク 因
幽門 ES

fは幽 l
"j
切除

.
1
0
;9
5
%
{
,:頼区間= 1
.
0
6
1
.
1
5
;p<0
.
0
0
1
),リスク群は 7
6%以 l
この幽 1
"
l
の周在性のみであり(オッズ比= 1
周在性切除症例とな った(感炭= 0

93,特異度 =0.
8
4
,1
l
1線下而柏= 0
.
9
1
).カプランマイヤー I
l
l
I線 で の 追

3
11
1 (四分位範 !
J
r
I98-1
8
7
71
1)であり,リスク群は有意に非リスク群よりも累柏非
跡期間中央値は 7
p
<
0
.
0
0
1
).リスク群における ESD後 の 累 柏 非 狭 窄 率 は ESDl週 間 後 で 97%(95%
狭窄率が小さかった (
信 頼 区 間 :7
9-100%),2週間後で 94%(
9
5%い粕区間 :76-98%),3週 間 後 で 85%(
(
9
5%信頓 1
刈I
l:6
6
-

93%)で あ っ た そ の 後 非 狭 窄 率 は 1辿 間 紺 に小さくなり, 8週以陥から 明らかな変化を認め なかった.
3症例の狭窄症例に対して EBDが行われ,全症例で狭窄が解除
保存的治療で改並した)出例を除いた 2
I
n│
)は中央
された. EBDに伴う穿孔や出血などの介併症は認めなかった.狭窄解除に要した EBD回 数 (
:
I2-6),EBD期 間 (
II
)は中央値 21(四 分 位 範 1
m14-44),最大 EBD拡 張 径 (mm)
値 4 (四分位卿J
は中央伯 1
8(四分位範 1
J
t
ll
5-1
8
)であった .幽 l
1
1
l全周切除群(周在性= 1
0
0%)と幽門非全周切除群 (76%
三周 在 性 統 く 1
00%)の狭窄率にイ了忍差は認めなかった [86%(
6
/
7症例) v
s63%(
1
5
/
2
4症例), p=0.
3
7
]
.
両群の EBD1
1
1
1数 (
1
1
1
1
) [中央値 6 (四分位範 [
/
l
=
I5-6) VS 3 (
2-5
).p=0
.1
5
]
,EBD期間(日) [中央

0 (四分位範訓 3
7-4
3
) VS 1
6(
1
4-50), p=0
.
6
9
],最)く EBD拡 張 径 (mm) [中央値 1
7(四分位範
値4
sl
7(
1
5-1
8). p
=
0
.
8
6
]に 行 意 差 は 認 め な か っ た
間 16-18)v


統括】
幽 111-JESD 後狭窄のリスク 1大If• は 76%以上の周在性切除症例であり,これらにおける狭窄の多くは 3-8

週「I
に 発 症 し た し た が っ て , 狭 窄 リ ス ク の ある症 例 に 対 し て の 内 視 鏡 フ ォ ロ ー の タ イ ミ ン グ は 3
8週

Hの 関 が 屯 要 で あ る こ と が わ か っ た . ま た 幽 1
"
l狭 窄 に 対 し て の EBDは 全 て の 狭 窄 症 例 に 対 し て 穿 孔 や
出I
[
l
lの 合 併 j
正 な く 効 果 的 で あ っ た 胃 令 休 に お け る 狭 窄 に 対 す る EBDの穿孔率は 7
.
8
8.
3%という報告-・
もあるが,今回の研究で幽門狭窄に対しては安全に

EBDを 行 う こ と が で き る こ と が わ か っ た .この理

l
りでは他の部位よりも佃靱な幽 1
"
l括約筋がイf在 す る か ら だ と 衿 え た .さらに,幽門全周
山としては,幽 I


切除後の狭窄症例は幽I

I
非令周切除後の狭窄症例と同様の拡張方法で狭窄解除できることもわかった.
幽1
"
l全周
今 阿 の 研 究 の 結 諭 は 以 ド の 追 り で あ る .幽門 ESD後 狭 窄 の 多 く は 術 後 3-8週 間 目 に 発 症 し た .

"
lESD後 狭 窄 症 例 は
切除症例も合めた令ての幽1

EBDにより合併症なく解除できた .

1
JESD後 狭 窄 の 行 理 法 を ・
I
J
i究 し た も の で あ る が , 従 来 行 わ れ て い な か っ た 幽 門
本研究は、幽l
の狭窄タイミングと

ESD後

EBDの効果を検討し,狭窄タイミングは 3-8週 目 で あ る こ と と 幽 1
"l
全周切除症例

も含めた令ての幽l
"lESD後 狭 窄 症 例 は EBDに よ り 合 併 症 な く 解 除 で き る こ と を 初 め て 明 ら か に し た 報
内である.

l
i
:
l
i
.
J
l
"
lESD後 の 狭 窄 は 適 切 な 内 視 鋭 フ ォ ロ ー と EBDに よ り 管 理 I
J
]能 で あ る こ と を ぶ し た 点 で

価 値 あ る 業 紹 と 認 め る .よって,本研究者は、博

1
:

(医学)の学位を得る狩格があると認める.

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る