イリザロフミニ創外固定器の特性について (第137回成医会総会一般演題)
概要
【目的】
イリザロフミニ創外固定器は非常に自由度が高く,特に手指の治療に有用な方法である.一方で,自由度が高く組み方を術者が能動的に選択しなければならない点が敷居を高くしている.今回,われわれの経験した症例を通して本創外固定器が有効な場面を例示し,その特徴を考察する.
【方法】
2013年4月から2019年10月に東京慈恵会医科大学附属病院でイリザロフミニ創外固定器を使用した症例を後ろ向きに調査し,利用目的で分類した.
【結果】
116例に使用し,利用目的は仮骨延長28例,粉砕骨折の固定21例,関節拘縮の授動21例,関節内骨折/ 脱臼の固定16例,開放性骨折の固定9例,切断指の固定6例,矯正骨切り/骨移植の固定6例,母指対立位の保持4例,骨腫瘍摘出後の固定3例,感染例の固定1例,指短軸方向牽引1例,であった.
【考察】
創部から離れて固定することができ軟部組織に低侵襲であることは創外固定器の一般的な長所である.イリザロフミニ創外固定器は加えて,固定しながら平行移動することで骨折部に圧迫や牽引を加えることができ配置やユニット組み合わせの自由度が高い.本創外固定器の最大の特徴は,ピンを自在に曲げられる点である.これにより,ピン刺入部と創外固定器本体の位置関係を自由に調整することができ,本体の位置を変えることで牽引や圧迫方向も調整できる.一方,ピンを曲げる構造は強度に制限を伴う.強度を補うために特殊加工ピンを用いるが,特に骨刺入点から創外固定器本体までの距離が開くほど荷重に耐えられないリスクが高まる.以上の特性からイリザロフミニ創外固定器は,荷重が少なく,軟部組織が薄く,創外固定器の設置スペースが限られる,手部に特化した創外固定器である.応用範囲の広いこの創外固定器は,手外科の治療において有用な選択肢である.