リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Multicenter Survey for carbapenemase-producing Enterobacterales in central Japan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Multicenter Survey for carbapenemase-producing Enterobacterales in central Japan

原, 祐樹 名古屋大学

2022.07.26

概要

【緒言】
カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)の急速な蔓延は、世界的な公衆衛生上の問題であり、臨床現場において深刻な脅威となっている。厚生労働省の院内感染サーベイランス(JANIS)の報告によると、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌の検出率は諸外国に比し低いが、CPE の検出率は十分に把握されていない。さらに、日本の特定の地域における CPE の分子疫学はまだ十分には明らかにされておらず、地域の協調的な感染対策の立案と実施を困難にしている。本研究では、愛知県内の医療施設における CPE の分子疫学的特徴を明らかにすることを目的とした。

【対象および方法】
愛知県内の感染対策防止加算 1 ネットワークに所属する医療施設 24 施設において、 2015~2019 年の各 1~3 月の間に検出された菌株のうち、収集基準に該当する菌株を解析対象とした(Table 1)。収集された菌株についてカルバペネマーゼをはじめとする β ラクタマーゼ遺伝子の検出を実施した。また、カルバペネマーゼ産生の Enterobacter cloacae complex および Klebsiella pneumoniae の 2 菌種については Multi Locus Sequence Typing(MLST)による Sequence Type(ST)を決定した。

【結果】
5 年間の研究期間において研究参加施設で 56,494 株の腸内細菌目細菌が検出され、そのうち基準に合致した 360 株が収集された。収集基準に合致しているかを再度確認したところ、19 株が除外され、最終的に 341 株が解析対象となった。菌種の内訳は E. cloacae complex(n = 134)、Escherichia coli(n = 96)、K. pneumoniae(n = 62)、Klebsiella aerogenes(n = 38)、Klebsiella oxytoca(n = 11)であった。これら 341 株のうち 65 株が CPE であると同定され、24 施設のうち 14 施設から CPE が検出された。CPE の内訳は、K. pneumoniae(n = 24)、E. cloacae complex(n = 23)、K. oxytoca(n = 10)、E. coli(n = 8)であり、K. aerogenes からは CPE は検出されなかった。5 年間における年別 CPE 検出率は 0.05~0.18%であった(Table 2)。カルバペネマーゼ遺伝子は、65 株中 62株で IMP 型カルバペネマーゼが検出され、その内訳は IMP-1 が 58 株、IMP-6 が 3 株であった。残り 1 株については IMP 型のタイプを決定できなかった。また、E. coli において NDM 型カルバペネマーゼが 3 株検出された。
カルバペネマーゼ産生 E. cloacae complex 23 株の MLST 解析の結果、7 つの ST が同定され、その内訳は ST78(n = 15、65.2%)、ST513(n = 2、8.7%)、ST113(n = 2、8.7%)、 ST25、ST29、ST59、ST133 がそれぞれ 1 株ずつであった(Table 3)。ST78 は 4 つの施設から検出されていた。カルバペネマーゼ産生 K. pneumoniae については、8 つの異なる ST が検出され、その内訳は、ST517(n = 6、26.1%)、ST37(n = 6、26.1%)、ST716(n = 4、17.4%)、ST3012(n = 2、8.7%)、ST592(n = 2、8.7%)、ST70、ST2158 およびST461 がそれぞれ 1 株ずつ検出された(Table 4)。

【考察】
本研究を通じ我々は 3 つのことを明らかにした。第 1 にこの地域における 5 年間の経時的な CPE 検出率を示した。第 2 に、この地域における CPE の分布とカルバペネマーゼの種類を明らかにした。第 3 に、MLST 解析によりカルバペネマーゼ産生 E. cloacae complex および K. pneumoniae の分子疫学的特徴を明らかにした。
CPE の菌種内訳は国立感染症研究所が発表しているデータと同様に、K. pneumoniaeで最も多く、次いで E. cloacae complex、K. oxytoca、E. coli の順に多かった。一方、 CPE 検出率については全国的なサーベイランスである JANIS では CPE とカルバペネマーゼ非産生型のカルバペネム耐性腸内細菌目細菌を含むデータを収集しており、日本における CPE の検査室ベースの正確な検出率を知ることは困難である。そうした点でも地域における CPE の経時的な検出率が、0.05~0.18%と全国の平均と差がないことを明らかにした本研究の価値があると考えられた。
カルバペネマーゼ遺伝子の内訳については IMP 型が 65 株中 62 株で検出され、その中でも IMP-1 が 58 株を占めていた。IMP 型カルバペネマーゼは主に日本、台湾および中国から報告されている。また、IMP-6 は西日本に多いとされており、今回の研究によってカルバペネマーゼ遺伝子型の地域による違いが示された。このように地域によって分子疫学が異なっていることから地域ごとのサーベイランスは必須であると考えられた。さらに、急性期病院、リハビリテーション病院、長期療養施設やナーシングホームを含むような地域全体のサーベイランスを行うことで地域における耐性菌の疫学がさらに詳細に解明できると思われた。
カルバペネマーゼ産生 E. cloacae complex の MLST では ST78 が最も主要な ST であり、4 つの医療施設から検出された。ST78 クローンの増加は、日本の他の地域で行われた研究においても確認されている。E. cloacae complex ST78 はハイリスククローンであると考えられており、今後も継続的な監視が不可欠である。カルバペネマーゼ産生 K. pneumoniae の MLST 解析では、ST258、ST147 および ST11 に代表されるようなハイリスククローンは検出されなかった。一方、世界的に拡散しており、カルバペネマーゼ産生と関連があるとされる ST37 が今回の研究においても 6 株検出された。ST37の検出は 1 施設のみとどまっており、この地域における病院間の拡散は確認されなかったが、今後動向を注視すべきクローンであると考えられた。

【結論】
我々は、中部地方における CPE の分子疫学と耐性遺伝子を明らかにした。当地域では、CPE の検出率は全国データと同程度であったものの、カルバペネマーゼ産生 E. cloacae complex の ST78 の病院間伝播は年 1 回の 3 ヶ月間という限られた調査期間でも検出された。今後も地域の分子疫学的サーベイランスを継続し、CPE の高リスククローンの検出状況を監視することは、CPE による感染を防止するための院内および地域の感染管理プログラムを強化する上で不可欠である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る