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大学・研究所にある論文を検索できる 「ヒト皮膚 resident memory T 細胞の加齢変化と皮膚疾患への影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ヒト皮膚 resident memory T 細胞の加齢変化と皮膚疾患への影響

吉岡, 華子 筑波大学

2020.07.27

概要

目 的:
 ヒト皮膚に一旦皮膚に移行した後、循環に戻らず定着するresident memory T細胞(TRM)の分画が存在し、皮膚T細胞が異なる動態・機能を有する複数の分画から成り立つことが分かってきた。皮膚以外に腸、肺、脳神経系、腎臓、関節滑膜など、多くの組織が固有のT細胞叢を有することが判明しており、組織特異的に起こる自己免疫疾患には組織特異的なT細胞、つまりその組織に留まり続けるTRMが関連する可能性がある。今回、皮膚に生じる自己免疫疾患として、強皮症、円形脱毛症におけるT細胞の変化を検討した。
 皮膚T細胞の構築に関しては、抗原曝露を繰り返す過程で循環から動員され構築されていくことが想定される。伝染性膿痂疹、伝染性軟属腫など皮膚固有の感染症の頻度が就学年齢以上で急速に減少することなどから、組織T細胞の構築が抗原応答の獲得と連動し、様々な抗原曝露を繰り返す成長過程で構築されてバリア組織の感染防御に機能するようになると推察される。一方で、一旦構築された後の加齢変化に関しては、皮膚T細胞を含む組織T細胞の観点からは全く検討されていないという問題がある。組織は血中とは異なる固有のT細胞叢を有することが示されており、皮膚T細胞の加齢変化を単純に血中T細胞の変化を当てはめて推測できないことは容易に推察され、皮膚T細胞の加齢変化を直接皮膚T細胞の観点から検討することを目的として、密度、多様性、表現型、抗原応答能について血中T細胞と比較して評価した。

対象と方法:
 対象として、筑波大学附属病院皮膚科を受診した症例から円形脱毛症患者生検皮膚17例、全身性強皮症患者生検皮膚8例、皮膚良性腫瘍切除術・植皮術を行った患者の余剰正常皮膚56例、血液41例を回収した。共同研究を行っているカロリンスカ研究所皮膚科より、健常人で皮膚良性腫瘍切除術を行った患者の植皮片25例、血液15例について解析した。方法として、T細胞の数について免疫組織学的に検討し、表面抗原、サイトカイン産生能についてT細胞を単離後にflow cytometryの手法で解析した。また、T細胞の多様性について検討する目的でT細胞受容体レパトア解析を行った。

結 果:
T細胞数 血中T細胞数に有意な差はみられなかったが、免疫組織学的検討で皮膚T細胞数は表皮において加齢により有意に増加した。

皮膚TRM 皮膚より単離したT細胞分画の加齢変化をflowcytometryで比較検討したところ、CD8T細胞において、表皮に留まり続けるTRM(CD49a+CD69+CD103+)の皮膚T細胞における割合が高齢になるほど多くなることが分かった。また、皮膚疾患においては、円形脱毛症病変部において健常皮膚と比較してTRMが増数し、それぞれ健常と異なるサイトカインプロファイルを有することが明らかとなったが、全身性強皮症では同分画が正常に構築されないことが判明した。

T細胞受容体レパトア T細胞受容体レパトア解析は、T細胞受容体相補性決定領域の遺伝子配列をすべて解読する手法であり、検体中のT細胞の数、多様性を網羅的に検討できる。様々な年齢層から採取した血液、皮膚よりレパトア解析を行ったところ、血中のT細胞受容体の多様性は加齢により有意に減少するものの、皮膚T細胞受容体の多様性は加齢の過程で維持されることが判明した。

T細胞の抗原応答機能 T細胞の抗原特異的応答を解析する目的で、血液単核球、短期培養した皮膚T細胞と加熱処理した黄色ブドウ球菌やカンジダと共培養した。1週後に増殖細胞の割合や炎症性サイトカインを産生する細胞の割合をflow cytometryにて検討したところ、血中・皮膚ともに抗原刺激によるT細胞増殖能の加齢による変化はみられなかったが、血中T細胞ではCD4T細胞中のIFNγ、IL-17A産生細胞の割合が有意に低下するのに対し、皮膚T細胞では同分画のサイトカイン産生能が維持された。

考 察:
 今回、皮膚T細胞が加齢により減少せず、むしろ表皮では増加し、表皮に留まり続けるTRM、特にCD49a陽性CD8TRMの分画の割合が増加することが明らかとなった。非特異的な反応では、皮膚でCD8T細胞がTc17からTc1へ機能的にシフトしていることが示唆された。CD49a陽性CD8TRMはIFNγ産生能が高いという既存の報告とも合致し、高齢者では長年の抗原応答により強いエフェクター機能を持つ抗原特異的なCD8TRMが蓄積されることが考えられる。
 本研究における、加齢に伴い、表皮T細胞数が増加すること、サイトカイン産生能や抗原応答能が保たれること、皮膚T細胞受容体レパトアの多様性が維持されること、皮膚における共通クローンが増えること、表皮に多く分布するCD8TRMの割合が増加すること、という結果を総合すると、T細胞が皮膚、特に表皮に移行した後、同部位で血中T細胞より長期に生存すると推測され、皮膚T細胞には血中T細胞とは大きく異なる機能保持機構があると推察される。

結 論:
 ヒト皮膚T細胞の加齢変化の動態は血中T細胞と異なり、機能や多様性が血中T細胞に比して高齢でも維持される。

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